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LIVE Review
アレックス・ヴェントリング・ウェーヴメイカーズ
3月5日 横浜ドルフィー
スイスとニュージーランドにルーツを持つピアニスト、アレックス・ヴェントリング率いる4人組グループが初来日公演を開催した。共演メンバーはトゥーヴァ・ハルセ(ヴァイオリン)、アーモンド・ステーヌイェン(ヴィブラフォン;以上ノルウェ―出身)、アウグスト・グレンネストランド(ドラムス、スウェーデン出身)。ベーシストはいない。2021年に名門ノルウェ―科学技術大学で出会い、結成された。アレックスはクラシック音楽の構築美とジャズの即興性を愛し(キース・ジャレットをフェイヴァリットにあげていた)、曲によっては小型キーボードも用いて厚みのあるサウンドを創出。アーモンドはヘッド(頭部)の異なるマレットを使い分け、文字通り硬軟に富むサウンドを生み出す。アウグストのアプローチは曲によってはアンプも使って音色を変えていくというものだったが、音量はどちらにしても極めて控えめで、“ソフト&サトルを厳守しつつ、どこまでニュアンスに富む響きをドラムスから出すか”を大きな課題としているようだ。ノルウェーの極寒の冬を描いたという「ジャニュアリー」を始め、アルバム『Wavemakers』からのナンバーを中心に繰り広げられたステージは抒情的、端正、幻想的だった。(原田和典)
MOVIE Review
映画『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』
監督;田口トモロヲ 3月27日よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開
わくわくしたまま約2時間、見入った。私は1985年頃に有頂天、ザ・ウィラード、ガスタンク等を通じて「東京のロック・シーンがとんでもなくエキサイティングだ」ということを知って、ひとり北海道で悶々としていた。そして雑誌「宝島」を読んで、この動きの前、70年代後半に、“東京ロッカーズ”と称されるムーヴメントがあり、それが後進に絶大な影響を与えていることも知った。この映画は、その“東京ロッカーズ”の台風の目の中にいた写真家・レーベル経営者・ライヴ主催者である地引雄一の著作をもとに、2026年の現役俳優が若き日の伝説的ロッカーたちを演じた一作。ミリオン・セラーを出したわけではない、芸能人ヅラしたわけでもない、代理店におもねたりも、セルアウトもしなかった、世間との折り合いがいまいちな、なんともぶきっちょな熱い若者たちの群像劇だ。各登場人物にはモデルがいるのだが、それに関してはパンフレットに本当に詳しく書かれているし、『ブライアン・エプスタイン 世界最高のバンドを育てた男』や『1975年のケルン・コンサート』でも出てきたような(現代の視聴者に向けての)状況説明的セリフもあり、今後スマホもサブスクもない時代の青春音楽映画を作る時はこの演出が一般的になるのかなとも思った。地引雄一をモデルにしたユーイチ役には峯田和伸が、LIZARDのモモヨをモデルにしたモモ役には若葉竜也が扮する。(原田和典)
タイトル:『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』
公開日: 3月27日(金) TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開
企画製作・配給:ハピネットファントム・スタジオ
クレジット:©2026映画『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』製作委員会
峯田和伸 若葉⻯也 吉岡里帆
監督:田口トモロヲ
原作:地引雄一「ストリート・キングダム」
脚本:宮藤官九郎
音楽:大友良英
公式サイト:https://happinet-phantom.com/streetkingdom
公式X/Instagram:@streetkingdomjp
MOVIE Review
映画『悲しくて美しい世界/THIS IS SPARKLEHORSE』
監督;アレックス・クロートン、ボビー・ダス 4月24日より東京・ヒューマントラストシネマ渋谷、K's cinema、アップリンク吉祥寺で公開
レディオヘッドやR.E.M.などのオープニング・アクトに抜擢され、パティ・スミスやデヴィッド・リンチに称賛され、トム・ウェイツやPJ ハーヴェイと共演し、メイヴィス・ステイプルズに楽曲をカヴァーされた音楽クリエイター。一度も来日することのなかったマーク・リンカス(Mark Linkous)と、彼がフロントを務める“スパークルホース”に迫るドキュメンタリー映画が待望の日本公開となった。スパークルホースは1995年に初アルバム『Vivadixiesubmarinetransmissionplot』を出し、その15年後にマークが自らを拳銃で撃ち抜くまで続いた。といっても私はすでにジャズの仕事に明け暮れていたので彼周辺の音楽シーンについては知る機会が来ず、あの偉大なるダニエル・ジョンストンの作品をプロデュースしたということでマークのことを認識した覚えがある。だからほぼ初体験状態で見たのだが、これは引き込まれる。本当に小声で表現される、ちょっと触れただけでブルボンルマンドのように粉々になってしまいそうな特徴的な音世界の源に、「深夜のデモテープ制作のときに、眠っている妻を起こさない」ための優しさがあったとは。そんな、あたたかみのある男が、どんどん世をはかなんでいくようになるのは哀しい。(原田和典)