ミュージック・ペンクラブ・ジャパン
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Popular Review

- 最新号 -

ALBUM Review

From Here to the Blues Sky
清水ひろみ The Sky Gate

Blue Jive BJHS002

  清水ひろみの最新アルバムは、2019年5月4日、彼女の経営する大阪のジャズ・クラブJAZZ ON TOPでのライヴ録音。彼女は、2007年にピアノの叙情派詩人と言われた名手、ドン・フリードマンとアルバム「Waltz Tenderly」を録音していて2010年に再び彼と「Live At Jazz On Top」を録音した、その時、前乗りで来阪したドン・フリーマンがベースの神田芳郎とギターの能勢英史で歌っていた彼女を聞いて大変気に入って、このユニットに「the Sky Gate」という名前を付けてくれた。以来、関西ではこのユニットで歌うことが多い。因みに東京では、ピアノの井上ゆかりとヴァイオリンの里見紀子との「Splash Diva」で活躍している。本アルバムは、この息の合った伴奏陣と自宅にお客を迎えて歌うといった和やかな寛いだムードでダイナ・ショアの「青いカナリア」、ブロッサム・ディアリーの歌が記憶にある面白い「Moonlight Saving Time」,ビートルズの「In My Life」等も含めヴァラェティに富んだスタンダード・ナンバーを歌う。ガレスピーの曲をジョー・キャロルが歌って有名な「Ooh Shoo Be Doo Bee」は意外な選曲だがメンバーも参加してユーモアのある歌の内容を見事に伝えてくれる。彼女は、それぞれの歌の内容を如何にストレートに聴き手に伝えるかに腐心しているといっていたが、ほんわかとしたムードにさせられると大変聞き心地良いアルバアムだ。ついでながら彼女は、ピアノのケニー・バロンとも「月光のいたずら」という傑作アルバムも作っている。(高田敬三)

ALBUM Review

山口葵
Swing in Strings Vol.2

Office Flora AY0006

  山口葵は、福岡を中心に活躍してきたベテラン・ジャズ・シンガー。何度も渡米してニューヨークのマンハッタン音楽院でナンシー・マラノに師事、現地のピアニスト、ビル・メイズとは2枚のアルバムを録音している。最近は、拠点を関東に移して新な飛躍を図っている。11月には、本アルバムの発売ライブを横浜のモーション・ブルーでこのアルバムにも参加しているフェビアン・レザ・パネ(p)と安カ川大樹(b)にストリングス・カルテットの加わる伴奏でほぼ満員のオーディエンスを集めて行った。香取良彦のストリングスのアレンジも素晴らしく、山口は、年季の入ったベテランらしい味わい深い歌の数々を披露した。さて、本アルバムは、前半7曲は、福岡のスカラエスパシオでのライブ録音で残り3曲は、池袋のスタジオで録音されている。香取は、ここでは、ストリングスのアレンジに加えヴァイブでも参加している。ストリングス・カルテットによる日本民謡の「さくら」の演奏から始まり、ロジャースとハマースタインの「My Favorite Things」、バカラックの「The Look Of Love」をベテランらしい落ち着きのある語り口で聞かせ、日本語の武満徹の「他人の顔」からの「Waltz」、一転、中村八大の「上を向いて歩こう」を英訳して歌う。日本の童謡、民謡からシャンソン、ラテンまでジャンルをまたぐレパートリーを持つ彼女らしい選曲のアルバムだ。日本語で歌うタンゴのアストル・ピアゾラの「Obliviona」やカタルニア民謡の「鳥の歌」も取り上げている。ラストのセロニアス・モンクの「Round Midnight」は、バーナード・ハ二イゲンとクーティ・ウイリアムスの通常歌われる歌詞と、カーメン・マクレエ等も歌っていたジョン・ヘンドリックスの歌詞と両方で歌っている。(ついでながらこの曲には、最近の映画「マザーレス・ブルックリン」で歌っているバブス・ゴンザレスの歌詞もある。)ヴァラェティに富んだアルバムの構成も大変魅力的だが、彼女の歌の心を聴き手に伝える力が、何といっても素晴らしい。(高田敬三)

ALBUM Review

ラヴ・アンド・リベレーション /ジャズメイア・ホーン

ユニバーサルミュージック UCCO-1214

  第62回グラミー賞「最優秀ジャズ・ヴォーカル・アルバム」ノミネート作品。1991年4月16日生まれ、28歳の注目のジャズ・シンガー、ジャズメイア・ホーンの本邦デビュー作(米国では通算2作目)。2017 年の米国デビュー・アルバム 『A Social Call』も、2018 年グラミーにノミネートされていた。作詞作曲にも才があり、全12曲中、8曲が自身のオリジナル。カバーはジョン・ヘンドリクス、エリカ・バドゥ、ラシェル・フェレル+スタンダード1曲で構成。 1曲目の「フリー・ユア・マインド」(オリジナル)は、彼女の勢いのあるカウントから始まり、一気にジャズメイアの歌声に魅了される。「レッグス・アンド・アームズ」(オリジナル)は、バラード。説得のあるエモーショナルな歌声に心を鷲掴みされる。ジャズメイアは、エラ・フィッツジェラルドと若き日のエリカ・バドゥを彷彿とさせるダイナミックな歌唱力で、聴きごたえがある。オリジナルも良い曲ばかりで、最良のヴォーカル・アルバムとして楽しめる。セシル・マクロリン・サルヴァント(1989年生まれ。3度のグラミー賞に輝く)に次ぐ注目の存在である。  さて、2019年12月5日、丸ノ内のコットン・クラブで行われたジャズメイア・ホーンの初来日公演を聴きに行ったが、彼女の声質の良さ、素晴らしい歌声、スイング感、奔放なスキャットには驚嘆した。名手、セシル・マクロリン・サルヴァントと比べても、勝るとも劣らない真のシンガーと深く感じた。ピアノは、ニューヨーク在住の海野雅威 が務めていたが、彼のピアノも大変良かった。ジャズメイアとは、8年前から時々一緒にやっているそうだが、海野も彼女の素晴らしい歌声と才能を高く評価していた。グラミー賞の発表が楽しみである。(高木信哉)