ミュージック・ペンクラブ・ジャパン
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Popular Review

- 最新号 -

ALBUM Review

Bruce Brown
DEATH OF EXPERTISE

2020 Triangle 7

 ブルース・ブラウンは、ロスアンジェルスのホテルなどでピアノの弾き語りをしていたが、1998年にニュージーランドへ渡り、当地の大学でジャズ・ヴォイスを教えながら活躍するシンガー、ソングライター。本アルバムは、2000年に発表した「I Believe It」以来、彼にとって4枚目の作品になる。ソングライターとして本アルバムは、自身で作詞作曲したものを歌っている。「Death Of Expertise(専門知識の死)」というちょっと変わった本アルバムのタイトル曲は、2016年に脳卒中を患い死ぬか生きるかの境を経験、そこからの回復過程で経験した自己の体調やら注意事項やらを今やほとんどのことがグーグルで調べられる世の中になったことについて歌っている。このように自分の身近なところで起こる出来ごとや身近な社会問題などをウイットに富んだ、しゃれた表現で、人間的温か味のある語り口で披露する、ディブ・フリッシュバーグの歌を思い出させるような彼の歌だ。伴奏は、アメリカとニュージーランドからジョン・ハーキンス(p)のトリオにスティーブ・ブリエン(g)スティーブ・クラム(tp)、グレン・バーガー(sax,alto fl)が絡むメンバーが参加している。(高田敬三)

ALBUM Review

Lauren White
Ever Since The World Ended

Café Pacific Records CPCD 5020

 ローレン・ホワイトは、映画TV女優としても活躍するロスアンジェルス在住のジャズ・シンガー。本アルバムは、「Meant To Be」、「Experiment」、「Out of the Past, Jazz & Noir」,[Life in the Modern World]に次ぐ彼女の5作目のアルバム。過去の4作で付き合っているクイン・ジョンソンのプロデュースで彼がピアノも担当している。ベースのトレイ・ヘンリー、ドラムスのレイ・ブリンカーも彼女とは何度も一緒に仕事をしてきた仲だ。コロナ禍で思うような生活ができない世の中で、昨年の夏、状況が少し落ち着いた時、万全のコロナ対策をした上で録音したのが本アルバムだという。サム・ジョーンズの「If You Never Fall In Love With Me」は、スインギーに明るく愛の願いを歌う。続く貴方と二人なら夢がかなえられるというビル・ウィザーズの「Just Two Of Us」と出だしから快調だ。タイトル曲のモーズ・アリソンの「Ever Since the World Ended」は、難しい今の世の中を歌うような歌だが、ここでは、彼女の友人の歌手,ドロレス・スコゼシがフィーチャーされて味のある歌を聞かせる。ビル・エヴァンスの「Remembering Rain」は、前作でレコ―ディングされたもので伴奏メンバーは、ピアノ以外は、変わっている。興味深い選曲で全8曲と短いアルバムだが、コロナ禍に苦しむ中、彼女からの「頑張ろう」というメッセージが伝わってくるような聞きごたえのある作品だ。(高田敬三)

ALBUM Review

森内寛樹デビューアルバム「Sing;est」を聴く。

 森進一、昌子夫妻の息子と言えば、ONE OK LOCKのボーカルTakaが有名だが森内寛樹は夫妻の三男。ロックバンドMY FIRST STORY のボーカルHiroである。
 その彼が今年1月にソロデビューをし、アルバム「Sing;est」を発売した。このアルバムはカバーアルバムになっており、10人の女性ボーカリストの曲をカバーしている。
 彼の歌声を既に周知されているワンオクのTakaの伸びやかで素直な歌声から想像すると、見事に予想を裏切られる。即ち、彼の歌声は、非常にハスキーでハイトーンな細い金属系の音質の歌声だからだ。
 これは父親の森進一の歌声を継承したものと考えられ、父である森進一の歌声が女性的であったことをあらためて感じさせるものでもある。

 親子、兄弟間で声質が似る事はよくあることだが、この二人の声質は全く違うものであり、兄は母森昌子の声質を受け継ぎ、弟は父森進一の声質を受け継いだということになる。
 「Sing;est」に収録されているどの曲も彼の歌声の特質を現している。
 「夜を駆ける」などのアップテンポの曲から「ハナミズキ」「やさしさが溢れるように」「アイノカタチ」などのバラード系まで、その特性である歌声を使って独特の世界観を現している。
 彼の歌声はハスキーでありながら、甘い響きを持っており、その尖った音質でありながら日本語のタンギングのエッジがなだらかで音楽が横に流れていくのに言葉は明瞭であるのも彼の特徴でもある。男性でありながら女性ボーカリストの曲をカバーしても違和感がなく、どちらかといえば女性的な歌声と言えるのかもしれない。
 今後、彼がソロ歌手としてのオリジナル性をどのように発揮していくのか、非常に興味深い存在である。(松島耒仁子)