ミュージック・ペンクラブ・ジャパン
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Popular Review

- 最新号 -

ALBUM Review

Mary Stallings
SONGS WERE MADE TO SING

Smoke SSR1903

 今年80歳のメアリー・ストーリングスは、実力と実績の割にアンダーレイテッドなジャズ・シンガーだ。10代の頃からベン・ウエブスターやアール・ハインズと共演して22歳でカル・ジェダーと初アルバムを録音している。ディジー・ガレスピーに認められ1965年から彼のバンドで歌って、1969年から3年間は、カウント・ベイシー楽団の歌手として活躍した。これらの活躍の割にレコーディングには恵まれなかった。1972年に子供が出来てからは半引退の状態だったが80年代後半に復帰して90年代に入って2枚目のアルバム「Fine And Mellow」を発表、後コンコードと契約して次々とアルバムを発表、マックスジャズ、ハイノート等からも作品を出して、サンフランシスコを中心に活躍してきている。最新作の本アルバムは、エディ・ヘンダーソン(tp)、ヴィンセント・ハーリング(as,ts)、デヴィッド・ヘイゼルタイン(p)デヴィッド・ウイリアムス(b)ジョー・ファ―ンスワース(ds)に2曲でパーカッションのダニエル・サドウニックが加わる伴奏陣で彼女の人生の出来事につながるという内容のナンバーを選んでブルージーな安定した語り口で聞かせる。オリヴァー・ネルソンの「Stolen Moments」,モンクの「Blue Monk」,「Round Midnight」,ホレス・シルヴァーの「Soul Mates」,タド・ダメロンの「Lady Bird」、スタンリー・タレンタインの「Sugar」など器楽曲が多く選曲されているが歌の内容を明快な語り口で伝えるところが素晴らしい。デヴィッド・ヘイゼルタインが編曲を担当していて。メンバーのソロも十分聞かせる。これぞジャズ・ヴォーカルといった貫禄十分な彼女の歌だ。(高田敬三)

ALBUM Review

Simone Kopmajer
SPOTLIGHT ON JAZZ

Licky Mojo Records LC28941

  2000年からニューヨークで活躍を始め、日本でも人気のオーストリア出身の歌姫、シモーネ・コップマイヤーの最新作。2003年のデビュー・アルバム「ムーンライト・セレナーデ」以来、13枚目のリーダー・アルバムだ。テリー・マイヤーズ(ts,cl)ポール・ウルバネック(p)マーティン・スパイザー(g)カール・セイヤー(b)ラインハルト・ウインクラー(ds )と地元のミュージッシャンと共演で「ペニーズ・フロム・ヘヴン」、「エクザクトリー・ライク・ユー」等のスタンダード・ナンバー6曲と彼女とピアノのポール・ウルバネックの作ったオリジナル7曲を歌う。40年代の歌と一緒でも違和感を感じさせない歌で、彼女の作りでも非凡な所をみせる。レスター・ヤング系のテナー、テリー・マイヤーが殆どの曲で活躍、彼女の落ち着きのある温か味のある声とマッチして絶妙なサポートをする。彼は、スキャットで歌われるルイ・アームストロングで知られる「ストラッティン・ウイズ・サム・バーベキュー」と「エクザクトリー・ライク・ユー」ではクラリネットに持ち替えている。彼女にとってはジャズ色の濃いアルバムだ。「ディッグ・ザット・リフ」は、セコンド・リミックスト・ヴァージョンがボーナスとして加えられている。(高田敬三)

CONCERT Review

カーラ・ボノフ

ビルボードライブ東京 9月2日

アーティスト写真
アーティスト写真

 ヴォーカリストとしてのカーラのキャリアは長い。1960年代後半から姉とデュオで歌い出し、70年代ミズ・アメリカと異名をとったリンダ・ロンシュタットのバック・コーラスから、曲が気に入られて、まずソングライターとして脚光をあびた。その後、初アルバム『カーラ・ボノフ』を77年に発売。飾り気のない清麗な歌声でウエスト・コースト派を代表するシンガーとなった。同年のニューヨーク・デビューをボトムラインで見たが、服装も東部風にして、シンプルで力のこもった歌唱はNYでも好評を得たのを懐かしく思い出す。80年に初来日以来、近年は相手を変えてのデュオ・ステージで度々来ているが、往時とほぼ変わらぬ歌声に、いつも感心させられる。9月のBBLでは、近年よく組んでいるギタリストのニナ・ガーバーとのよき4コンビネーションで、アクースティックなサウンドも心地よく、初アルバムからの「ホーム」に始まり、東京音楽祭で金賞を獲得した「トラブル・アゲイン」など、早くからお馴染みの曲を並べて快調な滑り出し。カントリー系の歌手たちからも好まれる「ルーズ・アゲイン」は素朴な中に失意を込めた表現が、円熟したカーラの魅力を打ち出していた。昔と変わらぬ歌唱に深みを増していたのが心地よく、アンコールの「ウォーター・イズ・ワイド」は彼女の魅力をのびやかに表現して大きな聞き物になっていた。又ほぼ真ん中、ニナのギター・ソロによる「イマジン」がスケールの大きな表現で、展開部分も素晴らしく、よきサポートともども好演だったことも付け加えたい。(鈴木道子)

写真:Yuma Sakata