ミュージック・ペンクラブ・ジャパン
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Popular Review

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BOOK Review

ピーター・バラカン著「MUSIC FILM MAGIC!ピーター・バラカンが選んだ音楽映画」

ISBN978-4-401-657261(シンコーミュージック)

 近年は映画を観る本数がうんと増えて5年前からは年間100本以上。昨年(2025年)は最高の182本を記録(内72本はYouTubeでの無料配信&amazonプライム)。今年も現在(9月下旬)までに110数本(うち配信は60本以上)。配信で鑑賞するのは1960年代を軸にした旧い邦画(青春歌謡映画や喜劇、ラヴ・コメ、特撮・怪獣ものなど)がほとんどだが、新作でも基本は同じく娯楽・教養、エンタメ指向(アニメも含む)。映画評論家や映研出身の映画オタクが薦めるような大作や名作、問題作、話題作の類は避けてます(私の趣味・趣向には合わないんで)。ただし、音楽ものとなれば話は別。得意?ジャンルではなくても(ジャズとか)観に出かけることも少なからず(ドキュメンタリーなら勉強にもなるんでなおさら)。
 そんな当方の心情にぴったり寄り添ってくれるのが今回のピーター・バラカンさんの本。5年前からバラカンさんのセレクトによる音楽映画(洋画)が毎年9月に2週間(20本前後の作品)、有楽町の「角川シネマ」で「Peter Barakan‘s Music Film Festival」と題して上映されているが(他地域のミニ・シアターでも一部上映)、それら過去すべての上映作品にバラカンさんが個人的に好きな作品も追加して紹介したというこの本には200の作品が収録されているのだが、チェックしてみたら当方はその3割近くを鑑賞していた。
 音楽的な趣味嗜好はバラカンさんと必ずしも一致するわけではないが、映画においては結構重なることも多いなぁと感じた次第。とはいえ、バラカンさん自身も「これは徹底的なガイド・ブックではありません。記憶から漏れているものもありそうです!」と「まえがき」で記されているようにあくまでもバラカンさん自身のパーソナル・セレクションだが、当方にとっては「こういう映画があったのか」という新たな気付きや記憶の呼び覚ましにもなるので(すでに中身を忘れている作品もあったりする)こうしてまとめられた1冊があれば個人的にはかなり重宝する。
 映画評論家のような上段に構えたものではなく ‘語り言葉’で個人的な経験や感情も交えて記されており読み易く親しみ易く、バラカンさんが来日(1974年4月)する前に過ごした母国イギリスでの映画の思い出話などのコラムも楽しく興味を引く。ちなみにバラカンさんが初めて映画館で観た作品は「荒野の七人」で9歳の時(1960年)だという。同学年の私の映画‘初体験’は保育園時代に観た東宝の特撮映画「地球防衛軍」(ロボット怪獣モゲラが不気味で怖かった!)で1957年(5歳)。3年早いから当方の‘勝ち’~♪ (上柴とおる)

BOOK Review

小松成美著「のんフィクション ヒーロー誕生」

ISBN978-4-16-391706-1(文藝春秋)

 こちらもまた個人的に「こういうのを待っていた♪」という本なので予約注文で購入。全360ページで5章に分けられており、子供時代の「能年怜奈」から今の‘俳優・アーティスト’「のん」に至るまでを本人や家族、学校の先生や関係者などへの綿密な取材を基に描いたものだが、ありがちなサクセス・ストーリーではない。
 映画(配信含む)、テレビ・ドラマ、朗読、ナレーション、アニメ声優、ラジオ、舞台、ミュージック・ビデオ、バンド活動(ライヴ)、個展、展覧会。。。と猛烈に動き回り、それぞれの分野で賞もとるなど各方面で評価を得ているが、この本のキモは「あまちゃん」や「この世界の片隅に」といった代表作でのエピソードや本名から新たな芸名「のん」(友達から呼ばれていた愛称)への改名に至る経緯をあれすることだけではなく、彼女と音楽との関わりをこそ改めて認識したいところだ。
 小学6年生で初めてギターを手にしてその後、ガールズ・バンドを組んだのが今の‘ロック・ミュージシャン’「のん」の原点だが、まだ33歳(1993年7月13日生まれ)という若さであるにもかかわらず、彼女が敬愛する音楽人はうんと年上の‘親世代’も多い。一番は忌野清志郎&RCサクセションで、矢野顕子はのんにとっての‘教科書’とか。
 2017年8月に自ら代表を務める音楽レーベル「KAIWA (RE) CORD」を立ち上げており、11月には4曲入りのミニ・アルバム「スーパーヒーローになりたい」をリリース。高野寛、沖山優司、仲井戸麗市、高橋幸宏、小原礼、佐橋佳幸といったベテランの名手が参加。「タイムマシンにおねがい」の‘のんヴァージョン’も♪ 翌2018年5月にはファースト・アルバム「スーパーヒーローズ」もリリースしている。この時期の「のん」についてはブログにも書いているのでご参考までに。
◎2017年11月25日付「♬のんスタイル♬」
https://merurido.jp/magazine.php?magid=00012&msgid=00012-1511546351
◎2018年1月25日付:のんスタイル?:「レディオヘッドにハマった高校時代♫」
https://merurido.jp/magazine.php?magid=00012&msgid=00012-1516874354
◎2020年2月14日:昭和歌謡がふんだんに香る映画「星屑の町」で魅力全開「のん」♬
https://merurido.jp/magazine.php?magid=00012&msgid=00012-1581619831
 渡辺えりが主宰する舞台に出ることになり、防護服を着て火星人の捕獲をするシーンの動きをイメージするために、オハイオ州アクロン出身のディーヴォのミュージック・ビデオを視て参考にしたとか、本の随所にちりばめられた‘小ネタ’も音楽ファンには楽しい。
 今年(2026年)は「のん& the tears of knight」名義でザ・コレクターズの古市コータローとその息子・古市健太、ウエノコウジ(元ミッシェル・ガン・エレファント)とバンドでステージに立ったりも。そんな等身大の「のん」を描き出した興味深い‘ノン・フィクション’作品である。(上柴とおる)

LIVE Review

ゆいゆいシスターズ 初の単独公演
「天まで届けシトゥリトゥテン」

8月11日 南青山MANDALA

 ゆいゆいシスターズは結成から約35年を迎える沖縄の4人組。山川まゆみ、上原ゆい、宮城マナミ、宮城汐花の現ラインナップによるアルバム『天まで届けシトゥリトゥテン』の発表を記念して、8月に東京発単独公演が行われた。場内は超満員、演者にも観客にも「この時を思いっきり楽しもう」という、気持ちのみなぎりが感じられる。アルバムは民謡とポップスの二部構成で綴られており(後者のアレンジとプロデュースは元ディアマンテスで現在は自身のジャズ・ビッグバンドを率いる真栄里英樹)、ライヴでもその二本柱を軸に、エンタテインメント性たっぷりのMCも含めて、新作の帯に記されている“ハッピースマイルを運ぶ、心躍る歌声!”というフレーズそのままのパフォーマンスを届けてくれた。ポップス系の曲はオケが使われていたが、民謡系のナンバーにはアルバムでもアレンジとプロデュースを務めていた大城貴幸が客演してサウンドにいっそうの厚みを加えていたことも特筆したい。演目はタイトル曲の「天まで届けシトゥリトゥテン」、「ちむむちむん」、極上のダンス・ナンバー「ハッピー・カチャーシー」、もはやスタンダードといっていい「かなさんどー」等。90年代からの代表曲「ユイユイ」はウチナーグチと標準語の2ヴァージョンで披露された。10月16日には沖縄、30日には大阪でも単独公演を開催。(原田和典)

写真:星 佳代子

MOVIE Review

映画『デス・バイ・メタル〜デス・メタルを作った男〜』

(監督・脚本:フェリペ・ベラルカサル 9月25日よりシネマート新宿、池袋シネマ・ロサ、シネマリスほか全国順次公開)

 それにしても“デス”と“メタル”という言葉の組み合わせは最強だ。“ヘヴィー”という言葉と“メタル”という言葉の組み合わせだって相当に重く暑苦しく激しいが、よりによって“DEATH”という言葉を選ぶとは。そしてこの映画には、1983年にフロリダで結成されたバンド“DEATH”のフロントマンであり、デス・メタルのオリジネイターと称されるチャック・シュルディナーの生涯が描かれている。彼がいかに“音楽の虫”であったか、緻密な設計図を組み立てながら音作りに臨んだか、友情よりも腕の良さを重視してメンバーを入れ替えていったか(バンド経験者ならわかると思うが、これは現実的には実に難しいことである)、などなどが、貴重なフッテージの数々、仲間たちの証言によって描かれる。“カセットテープのトレード”が音楽の伝達手段としてとても重要視されていたという描写は、まさに「時代」であろうし、ほぼ同じ世代である自分にも納得できた。私は「タラレバ」をあまりしないタイプだが、音楽性をどんどんメロディックにしていく途中で病に侵されてしまったチャックが生きていたら、どんな音を届けてくれていただろうとは考えてしまった。今年は彼の没後25年にあたる。(原田和典)

監督・脚本:フェリペ・ベラルカサル
出演:チャック・シュルディナー(アーカイブ映像)、スティーヴ・ディジョルジオ、ジーン・ホグラン、リック・ロズ、ジェーン・シュルディナー、ベサン・シュルディナー
2016年|カナダ|107分|カラー|フルHD|ステレオ|原題:DEATH BY METAL|字幕翻訳:堀上 香|配給:キングレコード
murder-death.com
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MOVIE Review

映画『セックス・ピストルズ 破壊の設計図』

(監督:アンドレ・レリス、ニック・ミード 10月2日より新宿武蔵野館ほかで公開)

 原題は「I Was a Teenage Sex Pistol」。つまり十代で、マルコム・マクラレンと関わってしまったがばっかりに、セックス・ピストルズの立ち上げにも混ざってしまうこととなったグレン・マトロックの回想録である。フェイセズ等の音楽を愛し、しっかり楽器が演奏でき、ソングライティングの能力があったことが、初期ピストルズにとって音楽的にどれだけありがたいことであったか、だが、“パンク・バンド”として悪名を轟かせていこうという場合、その“まともさ”がどれだけ邪魔だったか、そのあたりが貴重な映像と共にヴィヴィッドに描かれている。そして(ふざけた理由をつけられてグループを離れた)グレンの後任としてピストルズに入り込むのがあのシド・ヴィシャスなのだが、あるトイレでの出来事から始まるふたりの奇妙な、だが何とも美しい交友もまた、この映画の味わいどころだ。もちろんピストルズ以降の音楽活動についてもしっかり描かれているし、ときおりグレン自身がベースを実演しながら思い出話を語ってくれるのも嬉しい。あと“ベース”を“バイス”と発音するところも、個人的には、いかにもブリティッシュ・ロッカーという感じで心にしみた(確かジョー・ストラマーやミック・ジョーンズもそう発音していた)。(原田和典)

監督・製作・撮影 :アンドレ・レリス、ニック・ミード
出演:グレン・マトロック、ジョニー・ロットン、シド・ヴィシャス、スティーヴ・ジョーンズ 他
2025年|アメリカ|英語|96分|原題:I Was A Teenage Sex Pistol/提供:ニューセレクト/配給:スターキャット アルバトロス・フィルム
sexpistols-film.com 公式X:https://x.com/albatros_music
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