ミュージック・ペンクラブ・ジャパン
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Popular Review

- 最新号 -

ALBUM Review

「ザ・リアル・グループ・シングス・ウイズ・キックス&スティックス・ビッグバンド/ザ・リアル・グループ」

Spice of Life:SOL RG-0016

 スウェーデンを代表する5人組ボーカル・グループ、「ザ・リアル・グループ」の最新作。「ザ・リアル・グループ」が初めてビッグバンドと共演した。本作は、スウェーデンが世界に誇るボーカル・グループ、「ザ・リアル・グループ」の新たな魅力と楽しさを更に広げた画期的な作品である。「ザ・リアル・グループ」は、1984年に男性3名+女性2名の混成で結成されたグループ。皆、学生時代の友達だった。現在は、メンバーがかなり入れ替わった。
 2018年9月には、2年半ぶりの日本公演を行い、新たなメンバーを迎えた彼らの名唱が多くの日本のファンを魅了したばかりである。さて、今回は全7曲が、ビッグバンドとの共演である。キックス&スティックス・ビッグバンドは、ドイツのビッグバンドで、これまでにダイアン・リーブスやディー・ディー・ブリッジウォーターらと共演した実績を持つ。
 冒頭の「ファシネイティング・リズム」は、ジョージ・ガーシュウィンが書いた名曲。あのトニー・ベネットのデビュー・シングル曲でもある。昨年、ベネットは、ダイアナ・クラールとデュエットで、同曲を吹き込み話題となった。このザ・リアル・グループの歌は、ベネットとは、まったく趣きが異なる。そこがまたいい。ここでは、ビッグバンドの分厚いサウンドをバックに躍動感漲るコーラスを聴かせる。ガーシュウィンの曲は、もう1曲「エンブレイサブル・ユー」を収録。「キャント・バイ・ミー・ラブ」は、ビートルズの6枚目のシングル曲。4ビートに乗って、ダイナミックに歌っている。まったくビートルズとは異なるが良い感じだ。「バッド」は、スリリングで格好いい。なんとマイケル・ジャクソンの1987年の大ヒット曲。ビッグバンドと5声コーラスが抜群の味を醸し出す。実は、ザ・リアル・グループの主要レパートリーの一つである。なんと純度の高いコーラスだろう。(高木信哉)

ALBUM Review

「Walls/バーブラ・ストライサンド」

ソニー・ミュージック・インターナショナル SICP 31226

アーティスト写真

 バーブラ・ストライサンドほど自己を信じて自分の想いを貫いてきた人も少ない。歌の世界でも映画でもオピニオン・リーダーとしても。彼女は早くから筋金入りの民主党びいきとして知られているが、遂にたまりかねて、今の世の中に率直に物申す初のメッセージ・アルバムを発表した。自作(共作)3曲を含み、強烈でありながら凛々しく美しい作品ばかりだ。これは今年のハイライトと呼ぶに相応しい。トランプ大統領の中間選挙に向けての「嘘はつかないで!」はシングルとして先行発売され話題となったが、最も美しく高い理想を朗々と歌った「イマジン/この素晴らしき世界」は後世に残る名唱だ。「世界は愛を求めている」は、軽やかなバカラック調から、ぐっとテンポを落としてバラードにしたことで、歌詞の意味が前面に押し出され、説得力のあるメッセージを送ってくる。
 冒頭の自作はユダヤ調のハミングで始まる「ワッツ・オン・マイ・マインド」。今の世の中や世界がおかしくなって行くことに心乱れる思いを、諄々と歌っていく。バーグマン夫妻がすぐに書いてくれた「walls」に感銘し、更に心の壁も加えてほしいと頼んだと記されている。そして壁よりも橋を! 彼女は初アルバムから民主党のアンセムといっていい「幸せの日は再び」をもう何度も歌ってきたが、今回のように半ばむせび泣くように歌っているのは珍しい。それだけ現状に対しての切迫感が強く感じられる。リンカーン大統領の宣誓演説をヒントにしたC.B.セイガーの「ベター・エンジェル」や自由の女神像に託した佳曲なども。ウォルター・アファナシェフ、デヴィッド・フォスター初め気心の知れた最良の制作陣とともに、スケールの大きい名作が誕生した。当然バーブラ自身がライナーノーツと曲目解説を書いているが、彼女が若者により良き未来を期待していることが分かる。(鈴木道子)

ALBUM Review

「ア・ソウルフル・サンディ/エタ・ジョーンズ」

キング・インターナショナルKKJ1033

アーティスト写真

 エタ・ジョーンズは、ビリー・ホリデイやテルマ・カーペンターに影響を受けたシンガーだが実力のわりに過小評価されがちなところがあった。1960年にプレスティジと契約して一作目の「Don’t Go To Strangers」の中の、ここでも歌っているタイトル・ソングがヒットして次々7枚のアルバムを発表するが、再びヒットには恵まれなかった。71年から74年の間は、ゲスト出演はあるが、アルバム的には空白の時期だった。本アルバムは、1972年2月27日にボルティモアでのシダー・ウオルトン(p)、サム・ジョーンズ(b)ビリー・ヒギンス(ds)のトリオとの未発表のライヴでその空白を埋める一枚だ。但し、2曲は、以前のシダー・ウオルトンのアルバムで発表になっている。最初と最後のトラックの快調なピアノ・トリオの演奏に挟まれてエタは、スタンダード・ナンバーを中心に9曲、ブルージーな独特の節回しで好調な歌を披露する。明確なディクションで歌の意味をしっかりと伝えてくれるところが嬉しい。「Don’t Go To Strangers」ではビリー・ホリデイの真似をしたりもする。彼女は、1976年にヒューストン・パースンの勧めでミューズ・レーベルと契約してからは、次々とアルバムを発表活発に活動を続けていたが、2001年にガンの為他界した。(高田敬三)