ミュージック・ペンクラブ・ジャパン
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Popular Review

- 最新号 -

ALBUM Review

Roberta Sherwood
I Got A Right To Sing

Jasmine JASCD 873

  ロバータ・シャーウッドは、一般的に日本では、殆ど知られていないが、長い芸歴を持つアメリカのポピュラー・シンガーで女優でもあった。1999年7月に86歳で亡くなっているが、父親が旅芸人だった関係で幼い頃から舞台に立っていた。スターを夢見てあちこちのクラブで歌い続けていたが、彼女の人生の折り返し点の、43歳の時、幸運にめぐり逢い突如ブレークする。トミーとジミー・ドーシー楽団とのテレビ・ショウに出演するようになり、デッカ・レコードと契約する。デッカには、数多くのアルバムやシングルを録音して、ホーギー・カーマイケルの「Lazy River」と「This Train」がヒットした。彼女の歌は、レコードより、ジューク・ボックスで人気があったという。力強い声を張り上げて聞き手を引っ張り込むようなダイナミックなスタイルは、長年の舞台経験から得たものだろう。シンバルとブラッシを持ってリズムを取りながら歌う、という事をよくやったが、このアルバムの「Lazy River」等でも聞くことが出来る。本2枚組アルバムは、彼女のデッカ・アルバム「I Gotta Right To Sing」、「Live Performance」と自分のベスト・アルバムと言っていたラルフ・バーンズ指揮の「My Golden Favorites」の3枚のフル・アルバムと珍しいシングル盤からの29曲から成っている。彼女は、「Ed Sullivan Show」、「Steve Allen Show」をはじめルシル・ボールの「The Lucy Show」やドナ・リードの「The Donna Reed Show」等多くのテレビ番組でも活躍した。普段なかなか聞けないロバータ・シャーウッドを纏めて聞ける嬉しいアルバムだ。(高田敬三)

ALBUM Review

Shimpei Ogawa, Noa Levy
You, Me & Cole

Belle Records BELL 002

  イスラエル出身の歌手、ノア・レヴィ―と日本のベース奏者、小川普平のデュオによる異色のコール・ポーター作品集。クイーンのフレディ・マーキュリーを聞いて音楽に目覚め、ロンドンのミュージカル・シアター・オブ・ロンドンで学び、イスラエルでジャズを勉強、後サンフランシスコで活躍のノアと、岡崎の明石出身、13歳からベースを弾き。ジャズとクラシックのベースを勉強、岡崎ジュニア・ジャズ・オーケストラで活躍、後、ドラマーのアキラ・タナと出会い、2016年からサンフランシスコで活躍の小川は、カリフォルニア・ジャズ・コンサーヴァトリーで出会い意気投合してデュオを組んで活躍している。コール・ポーターの有名ナンバー10曲による本作品は、彼等のデヴュー・アルバム。アルゼンチンでタンゴも勉強したという小川のアルコも使ってのタンゴ・リズムの編曲とユダヤ風味のノアの歌による「My Heart Belongs To Daddy」や、バッハ的のフレーズの出てくる「So In Love」や独自の歌詞を付け加えたりする「Anything Goes」等々など遊び心のある工夫に富んだ、この二人ならではの異色のアルバム。一度生で聞いてみたい楽しいデュオだ。(高田敬三)

ALBUM Review

Susan Tobocman
TOUCH&GO

Soliterra Records

  作詞、作曲、編曲と幅広く活躍するヴォーカリスト、スーザン・トボックマンは、デトロイト出身、今は、デトロイトとニューヨークで活躍する。ジミ・ヘンドリックスが作って、スティヴィー・ワンダーや、デヴィッド・ボウィーなど多くのロック・アーティストが録音を行った有名なニューヨークのエレクトリック・レディ・スタジオのマネジャーを務め、ロック・バンドとツアーもしたという変わった経歴を持つ彼女だが、ロックよりジャズに興味を持ち、ニューヨークのジャズ・クラブ、「ジンク・バー」の最初の専属シンガーとなった。本アルバムは、「Love From Detroit」、「Live From Detroit」、「Watercolor Dream」に次ぐ彼女の4枚目のアルバム」。作曲もよくする彼女は、今回のアルバムでは、全12曲中5曲自作を取り上げている。その中2曲は、サックスのジョエル・フラーム、ピアノのヘンリー・ヘイ、ギターのピート・マッキャン、チェロのディブ・イーガー、ベースのマット・パヴォルカ、ドラムスのマイケル・サリンによるインスト・ナンバーでこれらは聞きものだ。アルバムは、スタンダードの「What’ll I Do」から始まるが、低めの柔らかい声でしっとりと歌う独自のフレージングの歌に、まず、引き込まれる。ガーシュインの「The Man I Love」では、意表を突くアップ・テンポのアカペラで入りジョエルのサックスへ渡り、ヘンリーのピアノ・ソロへと快調に引き継がれるといった躍動感のある魅力満点の歌と演奏を披露。ビートルズの「Help」は,工夫を凝らした二つのヴァージョンを歌ったり、一曲一曲が新鮮な感じで、全体の構成といい彼女のオールラウンドなタレント振りが十分に発揮された力作だ。
(高田敬三)