ミュージック・ペンクラブ・ジャパン
ミュージック・ペンクラブ・ジャパン

Popular Review

- 最新号 -

ALBUM Review

Prima Del Tramonto /山中千尋

ユニバーサル ジャズ:UCCJ-9218(限定盤)

 人気ピアニスト、山中千尋の最新作。山中は、2001年のデビュー作『リヴィング・ウィズアウト・フライデイ』以来、毎年コンスタントに新作をリリースしている。毎年これだけ高いクオリティを保ったまま新作を発表し続けるのは本当にすごいことだと高評価する。山中千尋は、際立った演奏能力と優れた作曲&編曲能力を持っている。
 今回は、ブルーノート・レーベル80周年を記念し、ブルーノートの名曲をカバー。また、没後20年のミシェル・ペトルチアーニにもフォーカスした。更に10曲中、5曲は山中の珠玉のオリジナルを収録している。リズム・セクションは、ニューヨーク・トリオのレギュラーである脇義典とジョン・デイビス。そして、ロバート・グラスパー・トリオのリズム・セクションであるヴィセンテ・アーチャーとダミオン・リードという2組のリズム・セクションが参加。2組とも優れていて、トリオが存在感を持って拮抗し合う音のやり取りが素晴らしい。さて、山中のオリジナル「シンキング・オブ・ユー」が、素晴らしい。山中の魅力は、粒立ちの美しい音色にある。彼女の華奢な体のどこから、これほど美しい響きが生まれるのだろうか?「チェロキー」は、高速テンポでスイングしまくる。
 完璧なテクニックと豊かな表現力だ。「スイート・ラヴ・オブ・マイン」は、アート・ブレイキーとジャズ・メッセンジャーズの曲。ここでの山中は、フェンダー・ローズで躍動する。ペトルチアーニの「ルッキング・アップ」が特に良い。山中は、明るく躍動的なフレーズを連射する。山中の詩情あふれるジャズ・ピアノに深く魅了される。「ブルー・マイナー」は、ソニー・クラークのオリジナルで、人気の『クール・ストラッティン』の収録曲。フェンダー・ローズでブルージーに決めてみせる。(高木信哉)

ALBUM Review

Elizabeth Tomboulian
LOVE'S IN NEED OF LOVE TODAY

www.karigaffney.com

 70年代に故郷のアーカンサスでブルース・フォーク・シンガー、ソングライターとして活躍を始めて、一時ニューオリンズでピアノ弾き語りでジャズを歌い、その後、スタジオ・ミュージッシャンとしてアレンジやバックアップ・ヴォーカルの仕事をし、ピアニストの旦那のリー・トンボウリアンとブラジルやウルガイの音楽のグループを作ったりと幅広い音楽活動をしてきたベテラン・アーティスト、エリザべス・トムボウリアンの初のリーダー・アルバム。広いアメリカには、こういう隠れた歌手が居るんだと感じさせる。スティビー・ワンダーの書いたタイトル・ナンバーは、プロデユ―サーも務めるロジアナ・ヴィトロも後半で参加して、ピアノ・トリオをバックに祈るように歌う。マッコイ・タイナーの「For Tomorrow」は、自身で歌詞を付けてイングリッド・ジェンセンのトランぺットと対話するように歌う。ビル・エヴァンスの「Re Person I Knew」をシンディ・ローパーの「Time After Time」で引用したりセロニアス・モンクの「Nutty」をスタンダードの「If I Love Again」に合体して旦那のリーとバップ・スキャットで聞かせたりモダン・ジャズへの傾倒を伺わせ、そうかと思うと、ベッシ―・スミスの「Good Old Wagon」ではギターを弾きながらブルージーな歌を聞かせ、「I Get Along Without You」は、ピアノの弾き語りでしっとりとしたバラードを聞かせる。全11曲、創意と工夫に富んだプログラムになっている。一度、生でライヴを聞きたくなるヴァーサタイルなアーティストだ。(高田敬三)

ALBUM Review

BeataPater
TET

B&B Records BB0422

 ベアタ・パテルは、ポーランド生まれ、4歳からヴァイオリンを習い、15歳の時、ジャズフュージョン・バンドに参加して活躍、英国でクラシックのヴァイオリンも続けて勉強していたという。その後、来日して10年程、ヤマハでヴァイオリンを教えたり、CBS Sony のスタジオ・シンガーとして、コマーシャルやバック・アップ・シンガーとして活躍、同時にジャズ・クラブなどにも青木弘武(p)等と出演している。今は、サンフランシスコ近郊に居を移しているが、定期的に日本でも活躍しているアーティストだ。今回の作品は、彼女の9枚目のアルバムで9曲を歌っている。TETというのは、ヘブライ語で9を表し、創造性のシンボルであるところからタイトルがつけられたという。ストリングスとブラスのダブル・カルテットにピアノとベースが加わる18人編成のビッグバンドで彼女と青木弘武の創意あふれるアレンジで「Lazy Afternoon,」、「Old Devil Moon」等のスタンダードにフレディー・ハバードの「Little Sunflower」、チック・コリアの「Crystal Silence」等のコンテンポラリーな作者の歌を交えて細く頭に抜けるような少しモーガナ・キングを思い出させる独特な声で歌う。彼女は、ヴァイオリニストの為か、彼女の歌は、ヴァイオリン的なものを感じさせる。大変ユニークで印象的な歌だ。随所で聞かせる青木の色鮮やかなピアノ・ソロも注目。(高田敬三)

ALBUM Review

Judy Wexler
Crowded Heart

Jewel City Jazz JCJ1213

 ジュディ・ウエクスラ―は、ロスアンジェルス在住のジャズ・シンガー。2004年の初アルバム「Easy On The Heart」以来、4枚のCDを発表してきた、6年振りの新作は、現在ジャズ・シーンで活躍する歌手達が作曲したモダン・ジャズの楽曲を集めて歌うという野心作。日本でもお馴染みのデンマークのシーネ・エイが彼女の「Face The Music」の中で歌っている彼女が書いた「Crowded Heart」をタイトルに、ルシアナ・スーザ、カート・エリング、グレゴリー・ポーター,ルネ・マリー、ノーマ・ウインストン、ロレイン・フェザー等々の作品を彼女の盟友アラン・パスクヮ(p)の編曲でラリー・クーンス(g)、ジョッシュ・ジョンソン(as)ボブ・シェパード(fl) ステファニー・ファイフ(cello)を含むバックで透明感のある知的で魅力的な声でしっとりと聴き手に訴える。パスクヮは、ピアノの他、メロディカや口笛まで使って色彩を付ける。ジュデイの選曲眼の素晴らしさは、以前から感じていたが、コンテンポラリーな歌にもこんな良い曲が沢山あると教えられる。歌詞カードがあればより日本のファンには喜ばれるのではと思った。(高田敬三)