- 最新号 -
ALBUM Review
Johnny Hartman
The last Balladeer-The Complete Singles plus
Rarities And Live Recordings 1947~1961
Fresh Sounds FSRCD 1168 (3枚組)
ジョニー・ハートマンは、1963年1月にアートブレーキ―のジャズ・メッセンジャーズと初来日した。その年にインパルスに吹込んだアルバム「ジョン・コルトレーン&ジョニー・ハートマン」は、彼の名をジャズ・ヴォーカルの中で不動のものとした名作だ。続編の話もあったが、結局実現しなかった。彼のアルバムとしては 1956年57年のベスレヘムの2枚「Songs From The Heart」と「All Of Me/The Debonair」が最初だった。1957年にアルバム「Just You, Just Me」がリージェントから出たが、これは、シングル盤録音を集めたものだった。そんな彼は、1947年に初レコ―ディングのシングル盤をサンビーム・レーベルに行っている。その後もマーキュリー、アポロ、サンライズ、リージェント、MGM, ジュビリー、ヘラルド、RCA等レーベルを変えて数々のシングル盤を吹き込んできた。本3枚組のアルバムは、彼の初期のそうした珍しいシングル盤録音を未発表録音や、当時のライヴ録音も含め集大成したジョニー・ハートマン・ファンには必携CDで、彼の伝記を書いたグレグ・アカーマンによる26ページの解説も読み応えがある。ロマンテイックなバリトン・シンガーの歌うバラードの数々の73トラックを楽しむことが出来る。彼は、1972年に単独で、来日、日野皓正、菊地雅洋と共演で、それぞれ録音をし、1977年には、キャロル・スローンと共にローランド・ハナ、フランク・ウエスなどのニューヨーク・ジャズ・カルテットと来日してローランド・ハナ、ジョージ・ムラ―ツとの日本吹込みも残している。(高田敬三)
ALBUM Review
Sacha Boutros
Paris After Dark
Hear Me Roar Records
サーシャ・ブートロスは、ジャズ・シンガー、作曲家、女性には珍しいレコード・プロデュ―サーとして活躍すると同時に7か国語をしゃべり14か国語の歌を歌えるという才能を生かして国際親善にも力を入れて2014年には南カリフォルニアでジャズを聞かせるクラブも経営していているという大変多才な人だ。2009年にベニー・グッドマン・トリビュート楽団と日本ツアーも行って、日本語の「さくら」等も歌っていた。さて彼女の最新作の本アルバムは、日本盤も発売され話題になった前々作の「サンディエゴの恋人」そしてジョン・ディ・マルチーノ(p)、ピーター・ワシントン(b)ルイス・ナッシュ(ds)等とでヒットした前作「ニューヨーク・アフター・ダーク」、に続く5作目のアルバムで、フランスのStephne Belmondo(tp)、Hugo Lippi(g)を含む現地のクィンテットをバックにアメリカのスタンダード曲「I’m Fook To Want You」,[April In Paris], 「Smile」にフランスの小唄を交えて10曲を囁くような魅惑的な歌で聞かせる。最後のトニー・ベネットで有名なサッシャ・ディステルの「Good Life」は元のフランス語で歌っている。トランぺットとギターの活躍と相まっておしゃれなパリの雰囲気を残す作品だ。彼女は、パリとサンディエゴを行き来する生活で、この後の新作「America, the Beautiful」を録音したばかりだという。(高田敬三)
LIVE Review
まちだガールズ・クワイア
10th Anniversary Live 時間の扉〜Time trip〜
12月13日 町田市民ホール
三声のハーモニーを生かしながら歌い踊るガールズコーラスグループ、まちだガールズ・クワイアが結成10周年東名阪ツアーを行い、拠点の町田市で千秋楽を迎えた。脚本・演出に“サントラ系アヴァンポップユニット”電影と少年CQの演出を手掛ける長田左右吉を迎えたステージ構成は、いわゆるコンサートとはかなり趣を異にするシアトリカルなもの。メンバー6人はコメディエンヌとしても出色であることを示し、場内から何度も笑い声を引き出していた。セットリストには「はるかぜリップ」や「セブンスターズ」などグループの古典ともいえるナンバーに加え、絶賛を博したアルバム『オリオン座流星群』からの「宇宙のしがらみ」や「オリオンのベルト」、最新シングル「キンキラキン」、さらに12月24日発売のニューアルバム『TIME SLIDER』からの楽曲もいち早く披露され、なかでも「時間の電話 Hello,Mr.Lennon?」はメンバーの卓越したヴォーカルと共に、プロデュースを務める石田ショーキチの“ジョン・レノン愛”もひしひしと伝わる重厚な一作だった。クワイアのホームグラウンドである「まほろ座 MACHIDA」のバンドスタンドに比べると、町田市民ホールのそれは少なくとも5倍の広さを持つはずだ。が、6人はアイコンタクトをとりながら、呼吸をあわせ、変わらぬ美しいハーモニーを響かせていた。(原田和典)
MOVIE Review
映画『Tokyo Melody Ryuichi Sakamoto』 4Kレストア版
2026年1月16日より全国順次公開
“フランスのテレビ番組のために作られたドキュメンタリー作品で、1984年5月の1週間、東京で撮影されたという。坂本龍一は83年12月にYMOを散開、この映像収録当時はアルバム『音楽図鑑』の制作に取り組んでいた。レイ・アンダーソンや近藤等則も加わっていた一作だが、映像に収められているのは音響ハウスに赴き、単独でアコースティック・ピアノを(おそらく)オーヴァーダブする姿。この時代の最新機器であったろうFairlight CMIデジタルシンセサイザーを用いた作業にも触れることができるし、後半では当時の妻であった矢野顕子とのピアノ連弾も見ることができる。新宿の今はなき「スタジオアルタ」のスクリーンにYMO時代の姿が映し出され、その前に現在(収録時)の坂本が立っている場面も粋な構図だと思った。「僕が考えるに、東京/日本はいま世界一高度な資本主義の国になってしまって・・・」。画面に映る当時32歳の坂本の、颯爽とした発言をきいて、84年当時の東京の活気ある風景を見て、こうした時代はもう来ないのか、とシュンともさせられた。(原田和典)
配給:エイベックス・フィルムレーベルズ ©Elizabeth Lennard
MOVIE Review
映画『チャック・ベリー ブラウン・アイド・ハンサム・マン』
2026年1月16日より角川シネマ有楽町、UPLINK吉祥寺、新宿K's cinema(1月17日から)、他にて全国順次公開予定
偉大なるチャック・ベリーの生誕100年を記念して、PBS(アメリカの公共放送)が制作したドキュメンタリーが劇場上映されることになった。私にとって彼は「およそ30歳という、当時のポップス界では遅めの年齢でデビューし、約3年の間に革命的な楽曲を矢継ぎ早に自作自演して後進のミュージシャンに影響を与えまくり、以降の50年以上は往年のナンバーを世界中で繰り返し演唱した」、実に興味深い音楽家である。このドキュメンタリーでも生い立ちや若き日のことはつまびらかではないが、チャック本人のパフォーマンスは白黒だろうとカラーだろうと老人になってからのものであろうと冴えわたっていて実にエンターテイニング。キース・リチャーズやブルース・スプリングスティーンがビビる気持ちと嬉しい気持ちを混在させたような感じで共演しているシーンも見どころだし、エレクトリック・ライト・オーケストラが「ロール・オーヴァー・べートーヴェン」にベートーヴェン風のストリングス・リフを入れて大林宣彦似のジェフ・リンが熱唱するヴァージョンも視聴できる。「リーサル・ウェポン」等で知られる俳優ダニー・グローヴァーがナレーションを務めているのも話題となろう。(原田和典)
配給:オンリー・ハーツ