ミュージック・ペンクラブ・ジャパン
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Popular Review

- 最新号 -

ALBUM Review

Roberta Donnay
BLOSSOM-ing!

Village Jazz Café VJC2502

 30年からの芸歴を持つベテラン・ジャズ・シンガー、ギタリスト、作曲家のロバータ・ドネイの通算10枚目のアルバム。彼女は、16歳からプロとなり、「フォーク・ジャズ」と呼ばれた、スイング・ジャズ、フォーク、カントリーを混ぜたバンド、ダン・ヒックスの「ザ・ホット・リックス」で長く活躍した。作曲の方でも彼女が書いた曲は、映画、TVでも多く使われ、「One World」は、国連の50周年の時のテーマ音楽にも使われている。彼女は、リヴァーサイドのオリン・キープニュースに認められボブ・ドロウの曲2曲を含むアルバムも作っている。そんなことでボブ・ドロウとも仲良くなり、ブロッサム・ディアリーと仲の良かったボブ・ドロウがらみで作られたと思われるのが、本アルバムだ。ブロッサム・ディアリーに因んだ曲16曲を歌手ウエスラ・ウィットフィールドのミュージカル・ディレクターを永年勤めていたマイク・グリーンシルのピアノとジヨセ・ネトのギター、ルース・デヴィスのベース、マーク・リーのドラムスにハモニカのデヴィッド・スターデヴァンと,パーカッションのMB・ゴービーが一曲づつ参加する伴奏陣で歌う。彼女の少女のような可愛らしい声は、ブロッサム・ディアリーを彷彿させるもので、彼女がブロッサムの好んで録音していたナンバーを歌うという企画は、ぴったり決まっていて、一聴ブロッサムのアルバムかと錯覚するほどだが、その中にロバータの個性と工夫が見えて大変面白い。マイク・グリーンシルのピアノの好サポートも特筆ものだ。(高田敬三)

ALBUM Review

Richard Williams
HOLLYWOOD CHRISTMAS

Richardmusic.com

 新進の作曲家、多楽器奏者、指揮者のリチャード・ウイリアムスによる現代的クリスマス・アルバム。ウイリアムスは、マイケル・ブーブレやカーペンターズの作ったクリスマス・アルバムに興味を持ち、ポップ、クラシック、ジャズの要素を持つより大きな規模のクリスマス・アルバムを作ろうとして出来たものが、彼の初アルバムになる本作だ。ビッグ・バンドの録音は、ハリウッドのキャピタル・スタジオで、弦と木管楽器のオーケストラの録音は、ハンガリーでブタペスト・スコアリング・オーケストラによって行われ、アレックス・スタイルス、ネート・ブライアント、レベッカ・ロペスなど11人のシンガーが入れ替わり立ち代わりで有名なクリスマス・ソング、「イッツ・ザ・モスト・ワンダフル・タイム・オブ・ザ・イヤー」、「クリスマス・ソング」、「ホワイト・クリスマス」、「ジングル・ベル」等などクリスマス関連の歌はこれがすべてといった感じで歌う。後半は、彼のアレンジによるオーケストラによるインストルメンタルが中心になっている全40トラックというスケールの大きなアルバムだ。短編映画、ヴィデオ、ゲームなどのバック・グラウンド・ミュージックを多く書いている人らしく、耳あたりの優しいアレンジで華やかな、気持ちが高揚するようなクリスマス・アルバムになっている。(高田敬三)

ALBUM Review

ジャニス・ジョプリン&ヨーマ・コウコネン
「ザ・レジェンダリー・タイプライター・テープ」

BSMF-7677(BSMF RECORDS)

 いわゆるブートレッグ盤なるものが以前から出回っていたとのことだが、耳にするのは今回の公式盤が初めて。録音は1964年6月25日。場所は何とヨーマの自宅である。二人はその2年前の秋にカリフォルニアのクラブで出会い、その後、行動を共にするようになるのだが(恋人関係ではなく。ヨーマは妻帯者)当時は誰にも知られていない名も無きフォーク系ミュージシャンだった。
 彼らが脚光を浴びるのは3年後の1967年のこと。ヨーマはジェファーソン・エアプレインのギタリストとして「あなただけを」(米5位)の大ヒットでシーンに躍り出た。ジャニスは同年6月の「モンタレー・ポップ・フェスティバル」に出演してセンセーションを巻き起こし、レコード・デビューへと繋がった。
 そんな二人がサンフランシスコでのアコースティック・ライヴに備えてリハーサルを行う際に、オープン・リールで録音していたのが今回の音源。タイトルに‘タイプライター’とあるのは彼らの傍らでヨーマの妻、マルガレータがたまたまタイプライターを打っており、その音が背景に入っているところから付けられた。何の気負いもなくリラックス?しながらの‘宅録’であることがわかる。
 ヨーマがギターをつま弾き、ジャニスが歌う。1曲目の「Are We Taping Now?」はタイトル通り、気軽にやりとりをする二人のトーク。これも‘曲目’にカウントしてしまうとは(苦笑)。しかもわずか40秒。全8曲となっているが、実質的には7曲だろう。
 が、しかし、いったん歌が始まると、もう後年のジャニスそのもの。アコースティックながら周囲を圧倒させてしまう説得力。レッドベリーやベッシー・スミス、オデッタ等に影響を受けたジャニスはブルースのスタンダードを中心に歌う。
 録音当時、ジャニスは21歳(ヨーマは23歳)。後にロック・シーンを揺るがせることになる二人。正味23分弱だが、たっぷり2時間ほど聴いたような気がしてしまう。(上柴とおる)

BOOK Review

「伝説の音楽雑誌ティーンビート ビートルズ特集保存版」

ISBN:978-4-401-65275-4(シンコー・ミュージック)

 バイブルとしていた音楽雑誌は断然「ティーンビート」(発行:映画と音楽社)であった。1965年9月号~1968年2月号までのわずか2年半で姿を消してしまったが、1966年5月号から購入していた当方は毎号、丸暗記するほど読みふけった(当然ながら教科書よりも頭にスイスイ入って行く♪)。
 しかし、いつまで経っても1968年3月号が出ない。忠犬ハチ公のように近くの書店の店頭で来る日も来る日もずっと待ち続けたのだが、ポップス仲間の同級生から「会社が倒産したらしい」と聞いて目の前が真っ暗になったのを覚えている。「これで自分のポップス人生も終わりか」と。高1の3学期のことである。毎週分のビルボード・チャートや各ラジオ番組でのベスト・ランキング、各ジャンル別の情報ページなどなどデータや資料がいっぱいで興味、好奇心を掻き立ててくれていたのに。この雑誌を‘熱読’していたからこそ、今の自分がある、と(そんな大したものではないけれど)。
 1966年12月号からは、なけなしの小遣いをやりくりして「ミュージック・ライフ」(新興楽譜出版社:現シンコー・ミュージック)も定期購読していたが、言うまでもなくビジュアルに重きを置き、アーティストのゴシップやお手盛りのミーハーなインタビュー記事などが中心で‘勉強’になるまでには至らなかった(今ではそういった取材記事も貴重な資料にはなっている)。それはそれで気軽に楽しめてはいたのだが。
 両誌はアーティストに対するスタンスも異なっていた。あくまでアーティスト側に立って(レコード会社等とタッグを組んで!?)持ち上げるミュージック・ライフに対してジャーナリスティックな視点を持つティーンビート。今にして思えば媒体力の差で広告があまり集まらなかったことも影響していたのか?とも勘ぐるが(老舗なのに‘新興’楽譜とはこれいかに)そのかつての‘ライバル’であるミュージック・ライフの発行元、シンコー・ミュージックがティーンビートを‘復刻’させたのには超~驚いた! かつてティーンビート誌が特集記事を組んでいた「ビートルズ」のパートを抜き出してまとめたものだが、表紙のこの懐かしいロゴを見るだけでも胸キュンである。
 メニューの一部『「ティーンビート」読者が選んだビートルズ・ナンバー・ベスト30。』は当方がすでに2017年2月4日付のブログ「ファンが選んだベスト30♪:1967年のビートルズ」で取り上げていたもので、同誌の記事は折に触れブログのネタにさせてもらっている。https://merurido.jp/magazine.php?magid=00012&msgid=00012-1486190438
 この本の中身は熱心なビートルズ・ファンなら必ず読んでおきたい項目がズラリとならんでいるが、これを機にティーンビート誌そのものも完全復刻してもらいたいと切に願っている。(上柴とおる)

LIVE Review

横須賀トモダチジャズ2022
EM Club レガシー “Big Band Day”

11月6日 横須賀・ヨコスカベイサイドポケット

 海街をジャズに染める名物イベント、横須賀トモダチジャズが3年ぶりにリアル開催された。今年のテーマは「EM クラブ・レガシー」。戦後ジャズの原点といえる「EM クラブ」(米海軍下士官兵集会所)の記憶をしのぶとともに、横須賀から意気込みも新たにジャズ文化を発信していこうという意気込みがまぶしい。4会場で行われた「トモダチジャズ」だが、今回は「EM クラブ」の跡地である横須賀芸術劇場内「ヨコスカベイサイドポケット」で11月6日に開催された「EM Club レガシー “Big Band Day”」について触れたい。“みなとみらいSuper Big Band”は2013年に熱帯JAZZ楽団のサポートを受けて結成された中高生によるビッグバンド。サックス・セクションは最大12名、トランペット・セクションは最大6名。グレン・ミラーのアレンジを用いた「スターダスト」からアース・ウィンド&ファイアー「セプテンバー」、ゴードン・グッドウィン・ビッグ・ファット・バンドの「バック・ロウ・ポリティクス」まで幅広いレパートリーを歯切れよく聴かせ、トランペットの西村大地も豊かな将来性を感じさせた。続いて登場した1994年結成のJug Four Winds Orchestraは、さすが熟練というべきだろう、エンタテインメント性にコク、落ち着きを絶妙にブレンドしたステージングで酔わせる。サミー・ネスティコがカウント・ベイシー楽団に書いた「ファン・タイム」をはじめとする選曲も、ビッグバンド・ジャズのおいしさを遺憾なく伝えるものだった。ここに、さらなる華やかさを付け加えたのが94年設立のM’S TAP FACTORY。豪快なビッグバンド・サウンドとタップの歯切れよさ、ツボを得た照明が一体となって、ひときわ目と耳を快くさせた。(原田和典)

カメラマン:m-kamezaki

MOVIE Review

映画『ジョン・レノン 音楽で世界を変えた男の真実』

ロジャー・アプルトン監督 12月8日より全国公開

 まさしく“ジョン・レノンは一日にしてならず”である。ビートルズの歴史研究家デヴィッド・ベッドフォードと詩人・作家のポール・ファーリーが語り手を務め、ジョンの両親や叔母の軌跡や社会での出来事(ジャガイモ飢饉など)も盛り込みつつ、ひとりの少年が孤独に耐え、カントリーやスキッフルを経て不良音楽(ロックンロール)に目覚めてバンドに興じ、やがてポール・マッカートニーやジョージ・ハリスンやスチュアート・サトクリフに出会い、皮ジャンとリーゼント姿でライヴに明け暮れるまでをテンポよく描く。学生時代のジョンを思い出し語りする者は当然ながら皆、老人になっているが、口調も表情も明瞭、ジョンを回想するときは自分自身も十代に戻っているような気持なのだろう。「尖っていた」「近寄りがたいところもあった」「ウィニー(ミドルネームが“ウィンストン”だから)と呼ばれるとブチ切れた」など、忌憚のない発言もいい。生前のジョンの映像もいくつか挿入されていて、個人的には自作の「John Lennon in His Own Write」を朗読する場面に感じ入った。1956年に結成されたバンド、ザ・クオリーメン時代の仲間であるビル・スミスやコリン・ハントンらによるセッション場面も実にエモーショナルだ。(原田和典)

原題:『Looking for Lennon』 配給:NEGA
監修:ピーター・バラカン / 藤本国彦
2018 年 / イギリス / 93分 / カラー / 1.85:1 / 英語 ©SEIS Productions Limited
写真:©SEIS Productions Limited