ミュージック・ペンクラブ・ジャパン
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Popular Review

- 最新号 -

ALBUM Review

Clairdee
A Love Letter to Lena

Declaire Music DM3427

  サンフランシスコをベースに活躍するジャズ・シンガー、クレアディーの3作目は、彼女の私淑するリナ・ホーンに捧げるアルバム。彼女の両親は、歌手、俳優としての才能もさることながら人種差別の問題と戦って、公民権運動にも深くかかわったリナの人間性を深く感じていてクレアディーは、4歳の頃からリナ・ホーンのような人間になるように、と躾けられていたという。本アルバムは、10年以上の長きにわたってクレアディーが温めていたプロジェクトで女優のマーゴ・ホールのナレーションを挟みながら、ジョン・ハーブスト(p)のアレンジで「Old Devil Moon」から始まり、ビリー・ストレイホーンがリナ・ホーンの為に書いた「Maybe」等をジョン・ハーブストを中心とする時にはコーラスも入るバックで歌う。ピアノだけの伴奏で歌う「Sometimes I Feel Like Motherless Child」やケニー・ワシントン等のコーラスも入るメッセージ性のある「Stand Up」が特に印象的だ。「Stormy Weather」、「Love Me Or Leave Me」等のリナのヒット・ナンバーが歌われていないが、単なるヒット曲を並べたトリビュート・アルバムではなく、リナの生きざまに焦点をあて、同時にクレアディ―を導いてくれた両親への感謝の念を込めて選曲したという。心のこもった聞きごたえのあるアルバムだ。(高田敬三)

ALBUM Review

私をつくる歌~ザ・ウィメン・フー・レイズド・ミー/
キャンディス・スプリングス

ユニバーサルミュージック:UCCQ-1118

  シンガー・ソングライター&ピアニスト、キャンディス・スプリングスの最新作。生前、プリンスが、「雪さえも溶かすほどの暖かい声」と絶賛したエピソードを持つキャンディスの歌声は、最高に素晴らしい。本作は3作目だが、遂に傑作をものにしたと高評価したい。キャンディス・スプリングスの歌声には、心が癒され、心が励まされる。アルバムを聴き終えると、魂が解放された(心が解き放れた)ような気がする。こんな感覚めったに感じない。
 アルバムのテーマは、タイトル通り、キャンディスが影響を受けた女性シンガーたち(ビリー・ホリデイ、エラ・フィッツジェラルド、サラ・ヴォーン、カーメン・マクレエ、ニーナ・シモン、ロバータ・フラック、ダイアナ・クラール、ノラ・ジョーンズなど)の名曲カヴァー集である。しかしながら、単なるカヴァーに終わらず、キャンディスが自分なりの色に染めて自己表現した見事な作品となっている。また、楽曲の多くに、優れたフィーチャー・ゲストを迎えており、彼ら彼女らの演奏や歌にも聴き惚れてしまうほど魅力的である。
 さて、エラ・フィッツジェラルドに捧げた「エンジェル・アイズ」は、なんとノラ・ジョーンズとのデュオ。ノラ・ジョーンズは、ピアノも弾いてくれている。ノラとキャンディスが交互に歌い、二人のハモリも心地良い。シャーデーの「パールズ」は、キャンディスの切ない声とアヴィシャイ・コーエンの哀愁溢れるトランペットがたまらなく心に響いてくる。ニーナ・シモンの「アイ・プット・ア・スペル・オン・ユー」は、キャンディスの力強いヴォーカルに、デビッド・サンボーンのエモーショナルなアルト・サックスが絡んでくる。「やさしく歌って」は、ご存じ、ロバータ・フラックのヒット曲。キャンディスは、まるで若き日のロバータのようだ。自ら弾くフェンダー・ローズをバックに、ソウルフルに歌い上げる。最後のキャロル・キングの名曲「ユーヴ・ガット・ア・フレンド」は、山崎まさよしとキャンディス・スプリングスの素晴らしいデュオ。男らしい山崎の歌声が素敵だ。そして、慈愛に満ちたキャンディスの歌声を聴くと、安らぎを感じ心が癒されてくる。(高木信哉)

CONCERT Review

New York Voices
Cotton Club

March 26, 2020 ファースト・ステージ

  コットン・クラブ初登場のニューヨーク・ヴォイセスを久しぶりに聴く。ダーモン・ミーダー、ピーター・エルドリッジ、キム・ナザリアン、ローレン・キーナン、男女二人づつの素晴らしいコーラス・グループ。マンハッタン・トランスファーほどステージングの派手さは無いが、ハーモニーの美しさでは負けない。今回は、結成30周年を記念した最近アルバム「Reminiscing in Tempo」からのナンバーを中心にしたステージで、最初は「It’s Alright With Me」をダーモンのスキャットとショーン・フィッツパトリックの軽快なピアノのソロも挟んで快調にスイングする。続く、イヴァン・リンスの「Answered Prayers」は、マーセロ・ペリッテリのドラム・ソロから中間でキムがソロをとりダーモンがテナー・サックスで盛り立てる。ここでダーモンが挨拶、メンバー紹介の後 The WDR Big Bandと歌ったものと紹介して「Love Me Or Leave Me」をローレンをフィーチャーしたコーラスで聞かせる。続く「Invitacion」は、女性二人がワードレスで奇麗なハーモニーで無伴奏で歌う。続いてもイヴァン・リンスのボサノヴァで「Madelena」。ここではピーター中心で会場の聴衆とのコール・アンド・レスポンスも交えて盛り上げる。ディブ・ブルーベックの「トルコ風ブルー・ロンド」に歌詞を付けた「Round Round Round」は、この変拍子の曲をピアノとベースのソロも挟んで見事なハーモニーで聞かせた。続く、ビートルズの「In My Life」も無伴奏でハモリ、このグループならではのコーラスを聞かせる。スティビー・ワンダーの「Don’t You Worry About a Thing」もピアノのソロをはさん見事なハーモニーでテンポの良く歌った。オリバー・ネルソンの「Stolen Moments」は、ピーターとローレンがフィチャ―されてポール・ナウインスキーもベース・ソロも聞かせる。「The World Will Keep You Waiting」では、女性二人が前面に出て後半ではダーモンのテナー・サックスと柔らかく掛け合う。ダーモンのメンバー紹介のあと「レイ・チャールス・シンガーズのレイ・チャールスのアレンジでカテリーナ・ヴァレンテ、エラ・フィッツジェラルド、ペリー・コモも録音した「Avalon」を歌いますとスイング・ナンバーを快適なテンポで歌う。一度終わって、再び最後の所をリピートして終わった。アンコールは、ピーターがピアノに座ってコーラスに参加するポール・サイモンの「Cecilia」だった。難しいことをいとも簡単にやってしまう各人の力量、その見事なハーモニーに酔いしれた夕べだった。(高田敬三)