ミュージック・ペンクラブ・ジャパン
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Popular Review

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ALBUM Review

トップ・シェルフ
ローラ・エインズワース

ラッツパック・レコード SCP 6001-1J

 最近、あちこちの媒体で紹介されているテキサス州ダラスを中心に活躍するジャズ・シンガー、ローラ・エインズワースの初の国内版CD. 彼女は、2011年のデビュー・アルバム「Keep It To Yourself」を始め2013年の「Necessary Evil」、2017年の「New Vintage」と3枚のアルバムを発表している。そして、その3枚からの180グラム重量コンピレーションLPアルバムを2017年に出しているが、本CDは、そのLPをベースにLPに収録されていない曲を6曲追加して作られている。その中でアービング・バーリンの「You’d Be Surprised」は、未発表録音だ。彼女の父親は、トミー・ドーシー楽団、フレディ・マーチン楽団などでサックス・クラリネット奏者として活躍した人で、その影響もあり彼女は、幼い頃からジャズに親しんできた、特にグレート・アメリカン・ソングブックからのあまり陽の当たらない曲を探してきて新に生命を吹き込むのが得意な「レトロ趣味のジャズ・シンガー」と言われる。本アルバムでも半分以上の曲は、あまり知られていない古いジャズ・ナンバーで、それらをビッグ・バンドあるいは、コンボをバックにスインギーに歌っている。日本盤なので歌詞カードが付いているのも嬉しい。(高田敬三)

ALBUM Review

Tanya Dennis
White Sails Blue Skies

Paloma Records 0321

 ターニャ・デニスは、テネシー州ナッシュビルを拠点に各地で活躍するヴァイオリン、ギター奏者でもあるシンガー・ソングライター。これまで1999年に「Waterdance」、2003年に「Apartment 9」といったアルバムを発表している。今回のアルバムは、タイトルの示す通り、セイリングが大好きな彼女が、15メートルのセイルボートを手に入れてカリブ海のバハマを航海した時に作った歌を中心に歌っている。ジャズ、サンバ、タンゴからジプシー音楽までいろいろな要素の混じったフュージョン音楽で彼女の人生経験から生まれた歌を心地よい声で聴かせる。彼女は、ハーモニカのトウーツ・シールマンスの大ファンで彼と共演したかったが彼が体調不良でかなわず,代わりにヘンドリック・マーケンズが参加、4曲で素晴らしいハーモニカを披露している。彼女は、ギタリストだが、ここではギターを、デヴィッド・マーチン、ビリー・パンダ、マット・ベリー、ジョン・リチャーズなどにまかせ、ボーカルに専念して、「Slow Reckless Tango」と「Desolation Sound」では同時にヴァイオリンも披露する。自ら「シネマティック・ミュージック」といっているが、映画のバックグラウンドに流れるような色彩感覚のあるゆったりと聞けるアルバムだ。(高田敬三)

ALBUM Review

氷川きよし『You are you』

 氷川きよしのポップスアルバム第二弾が発売された。今回のアルバムでは彼自身の作詞によるものや他のミュージシャン、クリエイターとのコラボ曲など、新しい試みの中でポップス歌手としての進化を感じさせる。
 大黒魔季に彼自らが依頼して作って貰ったという『Glamorous Butterfly』では、エネルギッシュな曲調と共に彼の歌声からの強いメッセージが女性のしなやかな強さを現しており、彼自身がファンに向けて書いたという『9月に逢いたい』では、長年彼を支えてくれているファンに対する彼の優しい気持ちが伝わる明るいポップな曲に仕上がっている。
 タイトルロールの『You are you』も彼自身の作詞によるものだが、この曲では彼が伝え続ける不変のメッセージ、「ありのままの自分でいい」「自分は自分のままでいい」という自分を素直に表現することへの躊躇ない決断を促す内容になっており、これが今回のアルバムに通奏低音のように流れる「あなたはあなた」というメッセージに繋がっている。
 演歌歌手としてトップに君臨し続けた彼が、自身の中に、音楽もリズムも世界観もまるで正反対のロック、ポップスという、もう一つの柱を作り上げていくことで、ありのままの自分を表現している一枚である。
 全体的な印象としては前回の「Papillon」よりも力みがとれ、彼の中ですっかりポップスやロックが馴染んだものになったのを感じさせるアルバムだ。(松島耒仁子)