ミュージック・ペンクラブ・ジャパン
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Popular Review

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ALBUM Review

HELLO, CITYY/Cityy

airgroove YZAG-1128

 「THE JAZZ AVENGERS(以下「ジャズアベ」と称す)」から、新たに誕生した4人組クロスオーバージャズユニット、「Cityy」のファースト・アルバムである。ジャズアベ(昨年6月~活動休止中)は、「4サックス×4リズム」という世界でも珍しい編成だったが、Cityyは、「2サックス×2リズム」という編成になった。人数が減った分、各人の自由度が大きく増して、即興演奏の時間も長くなった。
 メンバーは、寺地美穂(as,fl,vo)、中園亜美(ss,ts,vo)、竹田麻里絵(p,key,vo)、Juna Serita(e.b,vo)。寺地は、ジャズアベでは、アルト・サックス担当だったが、Cityyではフルートも吹く。中園は、ソプラノ・サックス担当だったが、テナー・サックスも吹く。二人とも驚くほど、演奏が上手い。フルートとテナーの響きの重なりがとても良い。また、全員が歌も歌う。ドラムの固定メンバーは置かないが、毎回、則竹裕之や荒山諒など凄腕ドラマーが参加するのも魅力だ。本作には、3名の名ドラマーが参加している。
 さて、本作には、全10曲を収録。作曲は、寺地のオリジナルが1曲、中園が1曲、竹田が1曲、寺地と竹田の共作が1曲、Junaが3曲、全員が2曲、YUKI KANESAKAが1曲となっている。編曲は、外部に頼らずに、自分たちでやっているのも大したものだ。
 全編、都会的で、スタイリッシュな音楽。思わず口ずさみたくなるようなキャッチ―で美しいメロディ、タイトでスピード感あふれるサウンドと4人の圧倒的な演奏は、明らかに新時代を切り開くもの。全員が絶妙に絡み合い、高いクオリティの作品になっている。
 冒頭の「HELLO, CITYY」は、全員で作曲したバンドのテーマ曲。昨年8月にリリースされたファースト・マキシ・シングルにも収録されていた。爽快な曲で、全員の歌声が聴こえてくる。電話の着信音も聴こえてくる。ここには、新しい風が吹いている。「 Memory」は、Juna Seritaが書いた曲。ちょっとノスタルジックな曲。中園のテナー・サックスと寺地のフルートのハーモニーが綺麗だ。思わずライブで、聴きたくなってくる。「To the Leeds」は、竹田麻里絵の曲。元々は、竹田、安部潤、松本圭司の3人のキーボード共演用に書いた曲だったが、Cityyに向いてる判断し編曲した。竹田の少しディレイがかかったエレクトリック・ピアノがカッコ良い。ロバート・グラスパーが聴いたら、喜びそうな曲だ。「City Days」は、中園亜美の曲。高速スイングで始まる。荒山諒のドラムとJunaのベースによるリズム隊の疾走感が心地好い。中園がテナー・サックスでエモーショナルに歌い上げる。「Neon Sugar Night」は、寺地美穂が作曲。作詞・編曲・Beatmakingとして、Yasutaka Mizunaga(e°murasaki)が参加している。寺地のフルートに歌とテナーが加わる。この曲を、おしゃれなクラブで流したら、さぞ盛り上がることだろう。寺地の美しいフルート・ソロは、華やかにメロディを彩る。Cityyは、4人がそれぞれに魅力を振りまいている。また彼女たちの演奏の熱量も並みのものではない。Cityyは、日本のフュージョン史に名を残すバンドに、成長していくことだろう。(高木信哉)

BOOK Review

大村 亨著『「ビートルズと日本」 新聞が見た来日狂騒曲』

ISBN 978-4-401-65744-5(シンコーミュージック)

 『「ビートルズと日本」熱狂の記録』(2016年3月31日刊)、『「ビートルズと日本」ブラウン管の記録』(2017年4月22日刊)、『「ビートルズと日本」週刊誌の記録 来日編』(2020年6月30日刊)、『「ビートルズ・ファンクラブ大全」大全』(2022年6月30日刊)と10年前から相次いで力作を世に送り込んでいる大村亨氏がビートルズ来日(1966年)60周年を期して新たな‘新作’をリリース。ビートルズのレコードにまつわる本はそれこそ世界中に数え切れないほど出回っているだろうが、大村氏はそういった音楽面ではなく外面から彼らをとりまく状況(新聞・雑誌、テレビ、ラジオ、ファン・クラブ)に焦点を当て、その存在は20世紀を象徴する大きな社会現象の一つでもあったと改めて実感させてくれる。
 新刊は「来日」という事象を軸に「来日決定まで」「決定後~来日前」「来日・滞在」「離日後」「通期」の5章に分けて全国紙のみならずスポーツ紙、夕刊紙、地方紙などから関連する記事をくまなく掘り起こしているが、Welcomeなお祭り気分ばかりではない。ビートルズが全米上陸を果たしたのは1964年2月でまだ2年ほどしか経っていない。その魅力や意義など日本でもまだまだ理解されているとはとても思えず、ばかりか大人からは不良扱いもされていたほど(リアルタイム世代なのでよくわかる)。学校からは「ビートルズ公演に行ったら退学処分」など今では考えられないような暴言も発せられていた時代である。熱狂する若者vs新しい時代のヒーローを理解出来ず冷ややかに眺めるしかない大人(マスコミ側)というある意味で‘対立’の構図が新聞記事からも浮かび上がる(今では笑い話かも)。
 とにかく凄い情報量である。B5判440ページ(!)でずっしり。重さを計ってみたら1㎏もある。それに分厚い!(計ってみたら2.5㎝も)。それにしてもこの時代にまだ‘街頭テレビ’があったのか、など(1950年代末~1960年代始め頃に視ていた記憶はある。「とんま天狗」や「力道山」)。当時を知る世代にはいろいろな‘再発見’(記憶の呼び覚まし)も少なくないだろう。ちなみに著者の大村氏はビートルズの来日から3年後の1969年に生を受けている。‘後追い世代’ほど熱くなるというが、まさにもう。圧倒される。
 来日時、当方は中学3年生で(ポップスを聴き始めたのがまさに60年前の1966年1月から)、日記にも詳細に綴ってある。修学旅行(東京方面)が1966年の6月11日~14日。ビートルズ一行が羽田空港へ降り立ったのはその2週間後の6月29日午前3時39分(JALの412便)。公演の模様はもちろんテレビ番組で鑑賞している。‘詳細’は10年前、来日50周年の際に書いていたブログにて♪ (上柴とおる)
https://merurido.jp/magazine.php?magid=00012&msgid=00012-1464197876

MOVIE Review

映画『ビトゥーカ 〜 ミルトン・ナシメント・フェアウェルツアー』

(監督:フラヴィア・モラエス、7月3日より恵比寿ガーデンシネマ、アップリンク吉祥寺、ミッドランドシネマ名古屋空港、テアトル梅田 他にて全国順次公開)     

 2022年に行われたミルトン・ナシメント最後のワールド・ツアーを追い、ほか、彼を敬愛するミュージシャンたちのコメントをたっぷり織り込み、さらにミルトン自身の半生や音楽観・芸術観を盛り込んだ一作と言えばいいか。エスペランサ・スポルディングとの合作『ミルトン+エスペランサ』がリリースされたのは24年のことだから、それに先立つ記録でもあろう。完奏トラックはないものの、80歳のミルトンの歌声や姿には触れることができるし、観客の熱狂的な反応もしっかり捉えられている。「ミルトンはジャズなのか?」的なテーマでしばらく複数のインタビュイーの談話が紹介されているあたりも興味深く、その後、本人の口からクラシックやジャズからの影響が語られる流れもスリリングだ。インタビューを受ける人物は皆「ミルトンのためなら」と二つ返事で取材依頼に応え、愛をぶちまけている感じ。この映画に出ている者、見る者(我々も)、皆ミルトン・ナシメント・ファンクラブの一員という感じになって、私の中にはさわやかな連帯感が生まれたし、とにかく映画の最初から最後まで愛が濃いのがいい。クインシー・ジョーンズ、セルジオ・メンデス、ウェイン・ショーター、ロー・ボルジェスらが出ていることにも胸が熱くなる。(原田和典)

【作品概要】
監督・脚本: フラヴィア・モラエス、共同脚本: マルセロ・フェルラ、撮影: ペドロ・ホーシャ 編集: ラウラ・ブルン / フラヴィア・モラエス 音響: ヴィクトル・ポザス
出演: ミルトン・ナシメント/カエターノ・ヴェローゾ / シモーネ / ジルベルト・ジル / シコ・ブアルキ / スパイク・リー / クインシー・ジョーンズ / パット・メセニー / ポール・サイモン / エスペランサ・スポルディングand more…
©️ GULLANE ENTRETENIMENTO S.A / ReallyLikeFilms + Palmyra Moon
[ MILTON BITUCA NASCIMENTO | 2025年度 | ブラジル映画|ポルトガル語|115分|5.1ch | 2.39スコープ | DCP・Blu-ray | 映倫区分G]
日本語字幕翻訳: 宮下ケレコンえりか / DCP制作: s.e.a. / 予告編制作: 武部由子・宮澤誠一
宣伝デザイン: 千葉健太郎 / 総合監修: 中原仁 / 宣伝協力: s.e.a.
配給: リアリーライクフィルムズ / パルミラムーン 後援: 駐日ブラジル大使館 /ギマランイス・ホーザ文化院

MOVIE Review

映画『ビートルズがいた夏』

(監督:アンドレイ・ウジカ  7月4日より全国順次公開)

 「こういう着眼点があるのか」と驚かされた。原題は『Things We said Today』、第81回ヴェネチア国際映画祭正式出品&2026年ヨーロッパ映画賞ショートリスト選出作品だ。1965年8月に行われたザ・ビートルズの歴史的なNYシェイ・スタジアム公演の頃、主語を思いっきり大きくして言えば「アメリカの世相」がどうなっていたか、を記した一作である。素材は100時間以上のニュース番組と100時間の個人の8ミリフィルムだそうで、だからなのか「私小説的」な部分も感じられた。ザ・ビートルズについては彼らの姿や声が収められている。が、私にとっては「アフリカ系アメリカ人への差別」(Nワードもガンガン出てくる)、「ニューヨーク世界博覧会」(シェイ・スタジアムの隣で開催)を取り上げたシーンこそ印象的であった。そうなのだ、これは1965年の夏のキリトリなのだ。ジョン・コルトレーンが『アセンション』を録音し、ロサンゼルスで暴動がおこり、ボブ・ディランがエレクトリック・ギターをかき鳴らした季節である。ラストにキング・カーティスの演奏が挿入されるのも、「わかっているなあ」と思わせてくれた。なぜなら彼はシェイ・スタジアムでザ・ビートルズのオープニング・アクトを務め、さらにその5年ほど後にジョン・レノンのアルバム『イマジン』に客演しているからだ。そしてニューヨークの路上で殺された。(原田和典)

【作品概要】
監督:アンドレイ・ウジカ
編集・サウンドデザイン:ダナ・ブネスク
録音・ミキシング:ダナ・ブネスク、ギヨーム・ソリニャ
VFXスーパーバイザー:オルガ・アヴラモ
ドローイングアーティスト:ヤン・ケビ
リサーチ責任者:アンナ・クーリヒ
プロデューサー:ロナルド・シャマー、アナマリア・アントチ、アンドレイ・ウジカ
エグゼクティブ・プロデューサー:ヌレディン・エッサディ、アンダ・イオネスク、エルヴェ・シャンデス、ケント・ジョーンズ、アンナ・クーリヒ
出演(声):トミー・マッケイブ:ジェフリー、テレーズ・アザラ:ジュディス、シェア・グラント:シェリー、サラ・マクラスキー:キャロル
2023年/フランス・ルーマニア/英語・フランス語・ドイツ語/85分/1.78:1
原題:TWST: Things We Said Today
日本語字幕:福永詩乃
配給:オンリー・ハーツ
公式サイト:http://twst.onlyhearts.co.jp
©LES FILMS CAMÉLIA, MODERN ELECTRIC PICTURES, TANGAJ PRODUCTION, ARTE FRANCE
CINÉMA, L’INSTITUT NATIONAL DE L’AUDIOVISUEL, 2024

MOVIE Review

映画『残響のメロディ 魂の放浪者ニコ、最後の旅路』

(監督:スザンナ・ニッキャレッリ  7月17日より全国公開)

 パンクやゴスの観点からもリスペクトが滞ることのない独創的な存在、ニコ。伝記映画『ニコ・イコン』から約30年を経て、今度は劇映画が日本で公開されることとなった。焦点となるのは、亡くなるまでの2年間。ドラッグと喫煙とアルコールにどっぷり漬かり、どよーんとした表情で日々を過ごし、時おり電流が激しく流れているかのような生き生きしたパフォーマンスをして、「私をニコと呼ぶな」とか「私自身の音楽が始まったのはヴェルヴェット・アンダーグラウンドから離れて以降」とインタビューで語り、ハーモニウムを弾きながらかすれ気味の低音で歌い、わがままを言ってはスタッフを振り回し、時には舞台上でバンド・メンバーを罵倒する。この、破滅を実践するような存在が、それでも40代の終わりまで生きて、いろんな場所をツアーして、ムチャクチャ多いわけではないかもしれないが確実に観客に支持されていたのは、なんというか、素敵なことだと思う。ニコ役を演じたのはシンガーソングライターでもあるトリーヌ・ディルホム。なかでも「ネイチャー・ボーイ」の歌唱には鬼気迫るものがあった。ジョン・ゴードン・シンクレア、アナマリア・マリンカらが共演。(原田和典)

【作品概要】
監督・脚本:スザンナ・ニッキャレッリ
出演:トリーヌ・ディルホム、ジョン・ゴードン・シンクレア、アナマリア・マリンカ、
サンドル・フュンテク、トマス・トラバッキ、カリーナ・フェルナンデス、カルヴィン・デンバ
2017年 / イタリア・ベルギー / 93分 / カラー / 英語・ドイツ語・フランス語・チェコ語 / 原題"NICO, 1988" / 字幕監修:五十嵐正 / 配給:NEGA
©2017 VIVO FILM / TARANTULA
7月17日(金)よりキノシネマ新宿、池袋シネマ・ロサ、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開

Foto: Emanuela Scarpa