ミュージック・ペンクラブ・ジャパン
ミュージック・ペンクラブ・ジャパン

Popular Review

- 最新号 -

ALBUM Review

アコースティック・ウェザー・リポート2
クリヤ・マコト/納浩一/則竹裕之

ソニー・ミュージック:SICJ-10011

 「アコースティック・ウェザー・リポート(AWR)」の新作(通算2作目)。ピアノ・トリオの新しい可能性を示した画期的な作品である!AWRとは、クリヤ・マコト(p)、納浩一(b)、則竹裕之(ds)という名手3人が集まり、1970年代フュージョンの最高峰「ウェザー・リポート」のナンバーを、あえてアコースティックだけで演奏するプロジェクト。ウェザーの曲は難しくて、セッションで取り上げられることもめったにない。AWRは、当時のカラフルな装飾を大胆に削ぎ落し、「ピアノ・トリオのジャズ」というミニマムなスタイルで楽曲のエッセンスを抽出し再構築する。クリヤ・マコトら3人は、ウェザー・リポートに敬意を払い、真摯な姿勢で取り組んだ。この思いがけない解釈と演奏は、極めて充実した内容である。ウェザー・リポートの楽曲は、9曲収録されている。『テイル・スピニン』からは4曲。『ブラック・マーケット』からは2曲。ミスター・ゴーン』からは、1曲。『ナイト・パッセージ』からは1曲。『ジャコ・パストリアスの肖像』からは1曲収録されている。
 本作には、手練れのプロが本気で挑んだ凄さと楽しさがある。音質の良さを活かすため、無編集で修正皆無の「DSDレコーディング」を行った。現代は、「パンチイン+編集」が常識になっているが、あえて、「全曲一発録り」するということは、メンバー全員の常日頃の技術面の鍛錬と録音時の集中力と相当な度胸が必要である。録音の素晴らしさも特筆される。
 冒頭の「リヴァー・ピープル」は、ジャコの曲。出だしのドラムスのパターンは、ジャコのあの「ティーン・タウン」と同じだ。クリヤは、漂う雲のようにゆったりメロディを奏でる。そしてソロ・ピアノのルバート部を挟んで、次の部分は、高速4ビートとなる、バンドが一体となって、強力にスイングする。「ドナ・リー」は、『ジャコ・パストリアスの肖像』の収録曲。チャーリー・パーカーの曲をジャコが超人的な速弾きでカバーした。ここでは、トリオ演奏にして、エレガントな雰囲気を出している。特にイントロのAbMaj7-EMaj7という動きはジャコが大好きな進行で、その進行が全体を支配するモチーフとなっている。納のベース・ソロとクリヤのソロが素晴らしい。「ブラック・マーケット」は、則竹と納が奏でるファンクビートが、「闇市」のワイワイがやがやした雰囲気を絶妙に醸し出す。クリヤの目の覚めるような鮮やかなソロが良い。後半部の則竹のドラム・ソロも格好いい。「ルシタノス」は、ウェイン・ショーターが書いた曲。ポルトガルの丘の名前だ。南国情緒が感じられるセクシーな曲だ。静かなピアノから始まる。リズムは、Floatingなフィールで、ECMサウンドに共通するもの。やがてクリヤのピアノが高らかにドラマチックに鳴り響く。「マン・イン・ザ・グリーン・シャツ」は、ジョー・ザビヌルの曲。ザビヌルが、ヴァージン諸島のセント・ジョン島で、スティール・ドラムに合わせて踊る緑のシャツを着た老人を見て作ったという。アルバムの中で、最も美しい演奏が聴ける。クリヤのピアノは、涙が出るほど美しい。なんて素敵なのだろう。続く納のベース・ソロも見事である。(高木信哉)

ALBUM Review

Gingei-銀鯨- /相原雅美

T-TOC RECORDS CADE-0036

  新進気鋭のマルチ・リードプレイヤー、相原雅美(1991年生まれ)の優れたデビュー作。生命力にあふれた見事な作品である。全曲が進取に富む意欲的なオリジナル。「知識の先にあるファンタジー」がテーマである。様々なモチーフをテナーサックス、クラリネット、バスクラリネット、フルート、EWIで吹きわける。全編でシンセサイザーも担当する。相原雅美の各楽器の腕前も本格的で、楽曲は絵画的で大変魅力的である。相原雅美を支える共演陣は、阿部篤志(p)、 内田義範(e.b)、髭白健(ds)、秋元沙代(perc) の4人。
 さて、タイトル曲「Gingei-銀鯨-」は、ザトウクジラのヒートランという求愛行動をもとに、学術的に解明されていない、つがいの鯨の行く末を想像し、2頭の鯨のメロディをモチーフに他の鯨が激しく戦う様や銀の泡に消えていく経過をクラリネットとフルートを用いて表現している。美しくも切ない音が素敵だ。「遠雷」では、幻想的なバスクラリネットから始まる。靄で隠れたアフリカの大地、遠くで雷が鳴る。空気は どこまでも澄んでいて、少し胸に刺さるくらいだ。自然と体が溶け合っていく不思議な感覚は、頭を通って、指の一本一本を駆け巡り、内臓を包んで、つま先まで走っていく。雷に打たれたにも関わらず、甘く大気を漂うようにバスクラリネットが響く。一転して「Talon Hauts」は、アップ・テンポの曲。ここでは、テナーサックスとEWIを披露する。ある靴職人のハイヒールの美しさ、女性を演出する靴の重要性を語るさまが印象的で作曲した。女性が日々の仕事で人知れず痛みと戦いながらハイヒールを履く、素敵な男性を探し求め美しいハイヒールを履く、女性たちの色々なハイヒールの物語が込められた曲だ。(高木信哉)

ALBUM Review

Accent
Christmas All The Way

infor@benjminescholz.com

  アクセントは、6人編成の男性アカペラ・コーラス・グループ。このグループのユニークな所は、メンバーがスエーデン、フランス、カナダから二人、イギリス、アメリカと国籍が違うという所だ。コーラス好きがオンラインでつながりインターネットでコラボレートするといういかにも現代的なグループだ。ザ・ハイローズの影響を受け、彼らをより現代的にしたという感じだ。YouTubeの彼らの動画は、二百万回以上再生され世界各地でコンサートも行っている。本アルバムは、彼らの2015年のデビュー作「Here We Are」以来早くも第4作目になる。今回は、アカペラだけでなく、ビッグバンド、ストリングス・カルテットや英国のザ・スイングルズ等他のグループからのゲストを加えたりそれぞれの曲にヴァラエティに富んだアレンジを施している。「The Christmas Song」ではザ・ハイローズの元メンバーのドン・シェルトンがクラリネット・ソロを聞かせたりもする。フランスの「Petit Papa Noel」やスエーデンの「Jul,Jul, Stralande Jul」等も取り上げていて多国籍のグループの彼ららしいクリスマス・アルバムだ。(高田敬三)

ALBUM Review

Jackie Allen
A ROMANTIC EVENING LIVE AT THE ROCOCO

Avant Bass

  シカゴ出身、今は、ネブラスカ州のリンカーンを中心に活躍するジャズ・シンガー、ジャッキー・アレンの新譜は、タイトル通り、スタンダードを中心にロマンテイックなテーマの歌を取り上げた、リンカーンのロココ劇場でのライヴ・レコーディング。このショウは、ビデオでも録画されPBSで放映された。今回は、それを収めたブルーレイ ディスク2枚が付いたCDだ。アレンジを担当した旦那のベーシスト、ハンス・スタームの他、ロスから参加のサックス、フルートのボブ・シェパード、そして、ギターのジョン・モウルター、ドラムスとパーカッションのデーン・リッチソン、ピアノのベン・ルイスというサポート陣でビリー・ホリデイで有名な「What A Little Moonlight Can Do」から始まり、「Day Dream」,「Lazy Afternoon」,「My Funny Valentine」等のスタンダード曲に加えて、ジョー・コッカ―で有名な「You Are So Beautiful」,スモーキー・ロビンソンの「The Way You Do The Things You Do」ポール・サイモンの「Still Crazy After All These Years」等々彼女お得意の新解釈で歌う新しい歌も交えて10曲、緩急取り混ぜて所々、アニタ・オデイを感じさせるところもあるベテランらしい味わいのある歌で聞かせる。彼女の13枚目のCDになるがこれは、彼女の代表作の一枚に数えたい好アルバムだ。(高田敬三)