ミュージック・ペンクラブ・ジャパン
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Popular Review

- 最新号 -

ALBUM Review

「サヴォイでストンプ:トリビュート・トゥ・エラ&ルイ/ニッキ・パロット~フィーチャリング・バイロン・ストリップリング」

ヴィーナスレコード:VHCD-1238

 人気シンガー&ベーシストのニッキ・パロットの最新作。今作のテーマは、名盤『エラ&ルイ』を現代版にリメイクすること。エラ・フィッツジェラルドとルイ・アームストロングが共演したものは、『エラ&ルイ』(1956年録音)、『エラ&ルイ・アゲイン』と『ポーギー・アンド・ベス』の3枚あり全て名盤だ。ニッキ・パロットの共演相手は、バイロン・ストリップリング(1961年生まれの56才)。バイロンは、カウント・ベイシー楽団でリード・トランぺッターを務めたベテランで歌も上手いので、最適の組合せだ。二人は終始リラックスしたムードで丁寧に演奏する。全14曲、素敵な曲ばかりだ。ニッキの新たな魅力が発見できる。「イット・エイント・ネセサリリー・ソー」は、ジョージ・ガーシュウィンの曲。バイロンの濃厚なトランペットに導かれ、ニッキがエラを彷彿とさせる見事な歌唱を聴かせる。バイロンの歌も味わい深い。「ジー・ベイビー・エイント・アイ・グッド・トゥ・ユー」は、ブルース。ニッキは、情感込めて歌った後に、ベース・ソロでも魅了する。(高木信哉)

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「オールモスト・パスウェイディッド/スウィング・アウト・シスター」

ソニーミュージック:SICX-100

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 UKポップサウンドの旗手として絶大なる人気を誇る“スウィング・アウト・シスター”の10年ぶりの最新作(通算10作目)。スウィング・アウト・シスター”は、1984年にデビュー。翌年「ブレイクアウト」がヒットし、その曲を収録した1STアルバム『ベター・トゥ・トラベル』は、全英アルバム・チャートの1位に輝いた。日本では、1996年のドラマ『真昼の月』(織田裕二主演)の主題歌「あなたにいてほしい」が大ヒットした。本作の制作には、3年もかけて届けられた。待たされただけのことはある。素晴らしい出来で、ジャジーでポップな魅力を放っている。コリーン・ドリューリーの一度聴いたら忘れられない綺麗な歌声に、都会的で洗練されたサウンドが、とても格好いい。まるで極上の映画のよう。冒頭の「ドント・ギブ・ザ・アウェイ」は、ダンディズム溢れる1曲。コリーンの美声と研ぎ澄まされた音世界にワクワクする。「ハッピアー・ザン・サンシャイン」は、軽やかで喜びに満ちた曲。タイトル曲は、心に届く曲だ。静かに燃え上がっていく。(高木信哉)

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「TSUBASA/今村つばさ」

SPACE SHOWER MUSIC:EDCE-1029

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 “ブラジルで最も有名な日本人”と称されるシンガーソングライター、今村つばさの最新作。今村は、石川県金沢を拠点に活動しているが、2009年より毎年ブラジルで音楽活動を活発に展開している。ブラジルの全国ネットTVに度々出演し、南米最大の“日本祭り”にも出演した。2017年には、権威ある“BRAZIL INTERNATIONAL PRESS AWARD(MPB)”を受賞。 全8曲収録されているが、本人のオリジナル曲に加え、ブラジルと日本の歌のカバーを歌っている。「空がまた暗くなる」は、忌野清志郎のオリジナル。子供の頃に持っていた“勇気”を忘れた大人に、次の一歩を踏み出すように背中を押してくれる歌だ。今村は、ポルトガル語と日本語で、切なく優しく歌う。自我を出しすぎず爽やかだが、歌に深みがある。「メウ・ムンド」は、今村がブラジルの歌手、アドリアナ・ペイショットのために書いた曲。「プラ・セル・スインセロ」は、アウグスト・リキスが所属していたバンドの曲。この曲を歌って、今村はブラジルで大人気となったのだ。今村は、清涼感のあるまろやかなギターを弾きながら歌う。優しい歌声が心を癒してくれる。「アカラント・ジ・フア」は、アウグスト・リキスが、今村のために書き下ろしてくれた新曲である。「少年の詩」は、ブルーハーツの初期を象徴する曲。少年時代の反抗期の「青い心」を、今村が代弁して歌う。(高木信哉)

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「アンナ・コルチナ/野生の息吹 (Wild Is The Wind)」

Venus VHCD 1228

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 アンナ・コルチナは、ロシア出身のシンガー。イタリアのピアニスト、マッシモ・ファラオとの出会いから、2014年にデヴュー・アルバム「ストリート・オブ・ドリーム」をマッシモのトリオをバックに日本のヴィーナス・レコードから発表した。マッシモは、ヴィーナスから何枚ものアルバムを発表しているイタリアを代表するアーティストだ。2016年には、同トリオにアルトとバリトンのサックスを加えたバックで「黒い瞳」を発表。矢継ぎ早という感じの2017年録音の本アルバムは、3作目になる。今回は、ジャズの本場、ニューヨークに飛んでこれもヴィーナス・レーベルとは、関係の深い、ジョン・ディ・マルティ―ノ(p)ピーター・ワシントン(b)ウィリー・ジョーンズ(ds)の強力なトリオとの共演。彼らのツボを得た伴奏も聞きもの。アンナは、少女っぽい独特の雰囲気を持った歌手だが、今回のアルバムでは、その歌に深味が増してきたようで、今後を大いに期待したいシンガーだ。最近は、ベースをニューヨークに移して活躍している。(高田敬三)

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「Daryl Sherman/LOST IN A CROWDED PLACE」

Audiophile ACD 357

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 ダリル・シャーマンは、ブロッサム・ディアリー系のピアノ弾き語りの名手で、2015年まで毎年来日して代官山のクラブに出演して素晴らしい歌とピアノを楽しませてくれていたが、クラブの方針が変わってしばらくご無沙汰だ。本アルバムは、彼女がニューオリンズで録音した最新作。彼女は、サッチモの音楽にも造詣が深く、毎年、ニューオリンズの「サッチモ・サマーフェスト」に参加している。東京でも日本のサッチモこと外山喜雄さんとサッチモの公演をやってくれた。ここでもサッチモの書いた「If We Never Meet Again」を歌っている。彼女のレパートリーは、膨大で埋もれた名曲に光を当てることも得意だ。「Star Fell On Alabama」は、誰も歌わないヴァースから歌っている。ガーシュイン兄弟の「The Lorelei」も滅多に聞けない歌だ。幕開けの「The Land Of Just We Two」と「Turkquoise」は、彼女自身の歌だ。「You Go To My Head」では、ギターのドン・ヴァッピーと味わいのあるデユエットも聞かせる。ピアノ、ギター、ベースのドラムレス・トリオにジョン・エリック・ケルソ(tp)が加わり素晴らしい色付けをしている。ビリー・ヴァ―プランク作の「Rainbow Hill」は、つい最近亡くなったマーレーン・ヴァ―・プランクへのトリビュートだがしみじみと心に訴えるものがある。聞くほど味わいの出てくる作品だ。(高田敬三)