ミュージック・ペンクラブ・ジャパン
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Audio Review

- 最新号 -

AUDIO REVIEW

エソテリック
K-01XD SE

¥2,310,000(税込)
問い合わせ先=エソテリック(ティアック)
http://www.esoteric.jp/jp/product/k-01xd_se/top

 ストリーミング&ファイル再生とアナログリヴァイヴァルにはさまれて、CD/SACD再生は今いささか旗色が悪い。そんな現況に一矢をはなつようにエソテリックから自社の技術を集約した一体型CD/SACDプレーヤーが登場した。Kシリーズの最新作K-01XD SEである。
 心臓部トランスポートにVRDS-ATLASを搭載する。ターンテーブル駆動用モーターをブリッジ最上部からターンテーブル下側に移動し、振動がアースされるまでの経路を短縮し機械的ノイズを低減した。グランディオーソP1XE、K1XEから継承のVRDSの最新バージョン。同時発売の弟機K-03XD SEもこのメカを搭載するが、ブリッジ厚が20mm→18mmと、細部が異なる。
 電源部の充実もグランディオーソ譲り。DAコンバーター部L/R、ドライブメカ、デジタル回路専用に合計4つの大容量トロイダルトランスを搭載する。レギュレーターは、集積回路を使わずディスクリート構成のローフィードバックDCレギュレーターとし、合計71本のスーパーキャパシター(大容量コンデンサー)を搭載。
 エソテリックの功績の一つが、従来汎用モジュールにパッケージされていたクリスタル発振回路に着目しクロックモジュールを自社開発したことにある。そうして誕生したコンポーネントがマスタークロック・ジェネレーター、グランディオーソG1Xだった。本機は贅沢にもこのディスクリートクロック回路”Master Sound Discrete Clock”を一体型ディスクプレーヤーの内蔵クロックに適用したのである。
 VRDSと並ぶエソテリックの技術アイコンがDAコンバーターである。本機に搭載されたMaster Sound Discrete DACはグランディオーソD1X同様のオリジナルのディスクリート回路で、1ch当り32の処理部で構成、クロックドライバー、ロジック回路、コンデンサー、抵抗で構成される。64bit/512Fs対応のΔΣモジュレーターを搭載しDSD22.5MHz、PCM384kHz/32bitまで対応。PCMの2/4/8/16倍アップコンバートやPCM→DSD変換機能も持つ。

 恐ろしく静粛なデジタルプレーヤーである。ディスクセット時のVRDS-ATLASの粛々として寡黙、優美な動作に心奪われる。この静けさがエソテリックの30余年の歴史である。ティーレマン指揮ウィーンフィルのブルックナー交響曲第七番(SACD)は、弦楽合奏の歪みが極微、CDで再現が無理かと思われたウィーンフィルのなめらかでシルキー、質朴な艶の乗った弦楽の質感が現れる。
 音場が深く広い。ディスクリート構成のDAコンバーター回路の卓越性が発揮され、フォーマットの限界を乗り越えて原音まで触手を伸ばすかのようだ。試聴室と録音会場のザルツブルク祝祭大劇場が重なり合う。無音部分の静粛性は圧巻で針どころか埃一粒が床に落下しても気付くだろう。パッケージを愛するすべての音楽、オーディオファン待望のプレーヤーである。
(大橋伸太郎)