ミュージック・ペンクラブ・ジャパン
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Audio Review

- 最新号 -

AUDIO REVIEW

「アンプはこうあらねばならない、という思い込みを捨てて生まれた」

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 マランツMODEL M1

  MODEL M1 ¥154,000(税込)

 本機の外形寸法の横幅は一般のステレオプリメインアンプの44cmに対し22cm、容積で実に1/4に抑えられている。しかし、かつてのミニコンポやライフスタイルオーディオと異なり、音質に特化したれっきとした硬派のピュアオーディオアンプなのだ。既成概念にとらわれず、音のいい斬新なオーディオアンプを作ろうという挑戦がMODEL M1を生んだ。
 マランツはこの10年、パワーと効率に優れるクラスDデジタルアンプについての経験をオーディオとAVの両面で積み上げてきた。M1で同社技術陣が初採用したのがアクサインのクラスDデジタルパワー素子である。アクサインにはデジタル信号を直接入力し一気通貫処理ができる利点があり、シンプルな回路構成はアンプの小型化に役立つ。マランツはアクサインの特長と機能に注目し回路を新設計し4基のパワー素子をBTL接続、大型スピーカーを余裕でハンドリングする100W/8Ωの大きなパワーを引き出した。
 ほとんどのオーディオアンプが歪みを消すためにスピーカーからのフィードバック(帰還)を利用するが、M1はアンプ最終段のスピーカー出力直前の電流センサーからパワー素子前段のDSPにフィードバックをかける。新素子との出会いで実用化された着想だ。
 ラウンド形状に包み込まれたM1のボディはツマミ類がいっさいない。外装に樹脂を採用したのは、ビス孔が露出することをデザイナーが嫌ったためだ。樹脂素材には加水分解が起きない最新の素材を使用した。筐体と内部の基板類の外周に15mm前後の〈空気の循環路〉が設けられ、ファンを使用しない完全な自然空冷を実現し、動作時の静粛性に貢献している。
 もはやマニュアル操作を考慮せず、ボリュームつまみやインプットセレクター等はない。D&MのプレーヤーソフトHEOSのアプリをダウンロードして各種操作を行う。専用リモコンは付属しないが、テレビのリモコンにIR(赤外線)コードを覚えさせて操作することができる。
 期待の音質は、いい意味で肩透かしをくわせるほど素直で自然だ。22cm四方の小さな箱から湧き出るようなパワーが生まれる。しかし、かつてのクラスDの馬力はあるが粗さを感じさせる音質と訣別し、雑味を感じさせずデリカシーに富んでいる。SN(静粛性)が際立ち弱音の美しい音楽に忠実なアンプである。M1は単に小さくなったアンプ、ではない。新しい酒(クラスDデジタル)を盛るために生まれた新しい革袋(アンプパッケージ)なのだ。
(大橋伸太郎)