AUDIO REVIEW
「CM1の再来を思わせる、小さくて美しい高音質機」
B&W 707 Prestige Edition

¥330,000(ペア)
取り扱い=D&Mホールディングス
https://www.bowerswilkins.com/ja-jp/category/loudspeakers/700-series/
707S3のバリエーションモデルの本機だが、ディー・アンド・ホールディングスの提案を受けて英B&Wが開発した日本企画の製品である。13cmウーファー、25cmドームトゥイーターの2ウェイ、高さ300mmリアバスレフ方式の小型エンクロージャーという構成が日本の家庭に入っていきやすいことは21世紀最初のベストセラーCM1で証明済みである。
タイムリーな製品を作れば、市場(エンドユーザー)は動く。CM1からの学びである。今日の追い風がQobuzのハイレゾストリーミングでありアナログリバイバルの広がりであることはいうまでもない。
707S3からの最大の差異は木目の突き板を採用するエンクロージャーにある。日本の家庭のインテリアになじみやすいサントスレッドのグロス仕上げ。ピアノブラックの9回塗りに対しPrestige Editionは塗って研磨を繰り返し鏡面が出るまで大体12工程かかるという。
トゥイーターのグリルの金網が805や801シグネチャーと同様に網目のパターンが変わり開口率が2%程度高くなり、従来の横パターンから縦長パターンに変わった。
見た目ではわからないが、真鍮製ターミナルに702,705Signature同様の不純物(鉛)の少ない真鍮が使われている。鉛を含んだほうが硬くなり加工がしやすい。真鍮だけだと粘性が出て柔らかくなってちぎれるようになり、ベテランが旋盤をゆっくり回さないとうまく加工できない。しかし、加工のしやすさより素直な音質を狙っての今回の選択である。
Prestige Editionへのグレードアップは上記の3カ所で、Signatureのようなドライバーやネットワークのチューンナップはいっさい行っていない。しかし、ベースとなった707S3とは音場表現に歴然とした差がある。Prestige Edition最大の魅力は定位の明瞭さにある。両機の最大の違いはエンクロージャーにある。塗装が違えば硬度の差が生まれ、表面を伝播する振動と回析効果の変化が音質に影響する。さらにトゥイーターのグリルメッシュの変更が加わり2機種の音場表現の違いが生まれたのだ。(大橋伸太郎)