ミュージック・ペンクラブ・ジャパン
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Audio Review

- 最新号 -

ALBUM Review

「全曲一発録り、演出なし。一期一会の熱唱がここにある」
情家みえ「ボヌール」

Ultra Art Record UA-1008


フォーマット:MQACD+UHQCD
価格:4,400円(税込)
Qobuzにてハイレゾダウンロード音源(192kHz/24bit)も販売

 ジャズボーカリスト、情家みえの新作アルバム「ボヌール」が9月10日に発売される。情家みえは、南青山BODY&SOUL、代々木NARU、六本木ALFIEを中心に、全国のジャズクラブで活躍するいまいちばん脂の乗った女性ヴォーカリストで「ボヌール」は通算四枚目のアルバムになる。
 このCDは、ミュージック・ペンクラブ・ジャパン前会長潮晴男と同会員麻倉怜士という、ふたりのオーディオ評論家が主宰する高音質レーベル、ウルトラアートレコードが制作、発売した。
 仕事上のリファレンス(基準)になる音源が少ない切実な事情から、やむなく自主制作に乗り出したのである。ひたすら生々しい音質を追求、一般のCDのように、簡便な再生装置で、聞き「映え」、するような演出をしていない。
 まず、うまく歌えた所を「きった、はった」でつないでいく編集をしていない。すべての曲が一曲単位で収録する「一発取り」、全10曲すべて5テイク以内で録音完了したそうだ。だからワントラックごとに生命が宿っている。
 人工的なエコー成分、残響(ディレイ、リヴァーブ)を付けていない。メリハリをつけるために帯域を圧縮することをやめ、声の帯域に厚みを出すために中音域を「盛った」りせず、スタジオで生演奏を聴く自然なバランスを再現した。
 こだわりの高音質を多くの音楽ファン、オーディオファイルに届けるため、今回MQA-CD+UHQCDフォーマットを採用。MQAをデコードできるCDプレーヤーなら、176.4kHzハイレゾサウンドを再現することができる。
 前作「エトレーヌ」同様は、ジャズスタンダードばかりでなく、バート・バカラックのTR3/8、アントニオ・カルロス・ジョビンのTR2、ホリー・コールのヴァージョンで知られるTR10等、ポップスの名曲も交えた全10曲。パースネルは、後藤浩二(pf)、古木佳祐(bass)、ジーン・ジャクソン(ds)、田辺充邦(g)、山口真文(sax)。2025年1月、ポニーキャニオン代々木スタジオでの録音。声の地肌が伝わるフラットバランスに最初は違和感を覚えるかもしれないが、情家みえ渾身の歌声がここにある。オーディオファンならずともすべての音楽ファンはマイクに向う情家みえを思い浮かべて聴いてほしい。(大橋伸太郎)

AUDIO REVIEW

「英アーカムから待望のネットワークストリーマー一体型アンプ登場」
アーカムSA45(ストリーミングアンプ)

¥698,650前後
問い合わせ先=ハーマンインターナショナル・ジャパン
https://www.harman.com/japan/contact-us

 多くのハイファイメーカーが競い合うイギリス。近年もっとも旺盛に活動し一頭光る存在がアーカムARCAMである。日本で地味な存在に甘んじていたが2017年に世界最大のオーディオコングロマリット、ハーマンインターナショナル傘下に入り、2021年日本市場に捲土重来を果たした。
 幅広い同社ラインアップ中の主役の座をうかがう存在が、オールインワン・ストリーミング・アンプ(アーカムの呼称)。看板RadiaシリーズではSA35とSA45の2機種を用意、同社単体ネットワークストリーマーにインテグレーテッドアンプがフュージョンした複合型製品と思いがちだが、最上位のSA45を仔細にみていくとアーカム最強のアンプであることがわかる。
 アンプ部をみると、単体インテグレーテッドアンプ同様にアナログクラスG増幅だが、本機はフルバランス構成である。出力も180W/chと強力。最大384kHz/32bitのハイレゾ再生に対応、DACはESS Hyperstream iV DAC(ESS ES9027 PRO)をバランスで使用。フォノ入力はMCに対応、テレビと接続するためのHDMI ARC入力まで備える完全主義者ぶり。
 ストリーミングサービスは、AppleAirPlay,Googlecast,Spotify Connect,Qobuz ConnectさらにRoon Readyに対応。前面パネルの8.8インチ液晶ディスプレイがジャケットアートほか各種再生情報を表示する。
 肝心の再生音は、強力な電源部の存在が奏功して密度感があってワイドレンジ、雄大な音場である。ネットワークストリーミングアンプという新ジャンル、時代の寵児にして、アーカムの積み上げてきたアナログ/デジタルのノウハウと変わらぬポリシー“Music First”が聴こえてくるはずだ。(大橋伸太郎)