ミュージック・ペンクラブ・ジャパン
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Classic Review

- 最新号 -

CONCERT Review

MUSIC LIBERAL ARTSセミナー
小池彩夏(Vn.)&物井彩(Pf.)
バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第1番
モーツァルト:歌劇「魔笛」から「夜の女王のアリア」
ベートーヴェン:交響曲第5番「運命」第1楽章
ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第1番「雨の歌」他

3月30日 新宿文化センター第2会議室

アーティスト写真

 ちょっと珍しい音楽セミナーを聞いてきた。小池は休憩を取らず2時間近く、しゃべり続け、演奏もかなりの量と難曲が多いにもかかわらず、とにかく熱演だった。小池の熱意に打たれたというのが素直な印象である。前半は講義、後半が演奏という二部構成。前半は音楽をリベラル・アーツの観点から捕らえ、『クラシック音楽を学ぶ先には、何が見えてくるのか』というテーマで話が進められた。中世のリベラル・アーツの解説から音響理論の話まで出て来たのには驚いたが、やがて聴衆を意識したクラシック入門的な話になると小池の人柄が身近なものに感じられてよかった。知っておくべきオーケストラ用語やコンサートに行くときの注意点など、クラシックのコンサートに通い慣れていない方々には大いに参考になったことだろう。
 後半の演奏でまず意識に昇ったのは、音の一粒一粒がはっきり聞こえたことである。会場が一般的な教室程度の広さで、残響が少なかったせいかもしれない。大ホールで聴くヴァイオリンとは違う贅沢を感じた。選曲は初心者を意識したものだった。一般の方々は時間を忘れたことだと思う。一方、筆者のような立場の者が聴くとさまざまな面で面白かった。というのも、多彩なジャンルの作品が聴けたからである。無伴奏作品ではヴァイオリンだけの表現力と響きの美しさを味わわせてもらった。「夜の女王のアリア」は本来の女性歌手の怒りに狂い必死の形相で歌う姿と重ねると、ヴァイオリンはやはり上品だなと思わせられた。「運命」の編曲はどういった版を用いられたのか分からないが、それほど違和感なく楽しめた。ピアノがアップライトだったので、物井はおそらくかなり弾きにくかっただろうが、それでも聴きごたえのあるアンサンブルを聴かせてくれた。一番良かったのはブラームスの「雨の歌」だった。やはりオリジナルがヴァイオリンとピアノだからか、二人の二重奏をたっぷり楽しませてもらった。深く、太く音楽を作っていこうという二人の表現の方向性に共感できた。二人が対等であると同時に、主役と脇役の入れ替わりもよく伝わり、「その瞬間が、潤いのあるひと時」(配布パンフレットから)となった。(石多正男)