ミュージック・ペンクラブ・ジャパン
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エッセイ

最新号

東宝ミュージカル「シークレット・ガーデン」に魅せられて

本田浩子

想い出
想い出
 1991年のブロードウェイ・ミュージカル”The Secret Garden”が、ようやくこの6月に、日本人キャストによって、シアター・クリエで上演され、6月14日に劇場に足を運ぶ。音楽/ルーシー・サイモン、脚本・歌詞/マーシャ・ノーマン、演出/スタフォード・アリマ。「秘密の花園」の日本題名でお馴染みの作家フランシス・バーネットは、他に「小公子」「小公女」等の作品でも知られている。
 インドで召使たちに甘やかされて育った少女メアリー (池田葵) は、コレラで突然両親を奪われて、唯一の肉親のアーチボルド (石丸幹二) の住む英国、ヨークシャー地方の屋敷に引き取られる。(♪プロローグ~インド~ヨークシャー駅~お屋敷~メアリーの部屋) 幼いメアリーの環境の変化が出演者たちの歌で紡がれていくのが、メアリーの孤独を浮き彫りにする。女中のマーサ (昆夏美) に部屋に案内されたメアリーは、「着替えさせて」と当然のようにいうが、「10歳にもなって自分で着替えなさい」とマーサは取り合わない。アーチボルドの弟で医師のネヴィル (石井一孝) は、兄にメアリーに会うように勧めるが、気乗りのしない様子。アーチボルドは美しい妻のリリー (花總まり) が亡くなってしまっていることを受け入れられず、幻想の中で妻と生きている。(♪A Girl in the Valley 思い出のダンス) 彼はくる病で自分を醜いと思っていたが、リリーはそんなアーチボルドを心から愛して結婚し、息子のコリンを産むと同時に亡くなってしまう。父親であるアーチボルドは、母親そっくりの瞳のコリンとは滅多に会わず、悲しみの殻に閉じこもっていた。
リリーの瞳
リリーの瞳
 することもないまま、一人で迷路のような庭に出たメアリーは、マーサの弟のディコン (松田凌) に出会い、コマドリの歌声のおしゃべり?を通訳してもらう。庭にはもう一つ閉ざされた庭があって、リリーが亡くなってからは、アーチボルドがカギをかけてしまい、誰も入れないという。 (♪迷路~コマドリの歌声~カギを見つけて) それからというもの、メアリーは毎日庭に出て、ディコンとカギを探す。ある日、邸内で子供の泣き声を耳にしたメアリーは車いす姿の従弟のコリン (大東リッキー) に出会う。二人は反発し合うが、やがて打ち解けて、メアリーはコリンを庭に誘い出す。大きくなったら、父親と同じくる病になると思い込んでいたコリンだが、メアリーたちに励まされ、歩く練習を始める。
 息子コリンの瞳は母親似で辛くなるし、メアリーの瞳もリリーを思い出させるので、アーチボルドはやり切れない。実はネヴィルも義姉を密かに慕っていた。そんな二人がリリーに寄せる想いを歌う (♪リリーの瞳) は圧巻。やがて、この屋敷は暗すぎて気が滅入ると、ネヴィルに全てを任せてアーチボルドは、旅に出る。
コリンとメアリー
コリンとメアリー
 ある日、メアリーがコリンと話しているのを見たネヴィルは、コリンに悪影響を与えると言って、メアリーを寄宿制の学校に入れることにする。屋敷を離れたくないメアリーは、アーチボルドに「伯父様、すぐに帰ってきて下さい」と、手紙を書く。(♪Letter Song) 手紙を読んだアーチボルドは、突然帰宅する。思いもかけず、庭からは子供たちの笑い声が響き、驚くアーチボルドの胸に、元気一杯のコリンが駆け寄ってくる。花が美しく咲き乱れる庭には、子供たちだけでなく、ディコン、マーサはじめ老庭師のベン (石鍋多加史) の笑顔に満ちていた。
Secret Garden
Secret Garden
 石丸幹二の演ずるアーチボルドは、いつもふさぎ込んでいるが、幻想の中でリリーといる時の幸せ感が、観客の胸を打つ。メアリーとコリンの池田葵と大東リッキーの熱演、マーサ役の昆夏美とディコン役の松田凌の生き生きとした歌声が舞台に活気を与えていて心地よい。
 装置らしいものは殆どなく、木の蔦が覆い茂るような大きな三面体が自在に動き、照明と共に舞台にしっかりとアクセントをつけているのが、印象的だった。20近いどのシーンも、繊細で美しい佳曲で満ち溢れ、終演後の拍手が鳴りやまなかった。
 7 月11日までのシアター・クリエでの上演に続き、神奈川、福岡、兵庫と地方公演が待っている。

舞台写真提供: 東宝演劇部