ミュージック・ペンクラブ・ジャパン
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エッセイ

最新号

ロバータ・ガンバリ―ニ
六本木 サテン・ドール 5月22日(水)

高田敬三

写真  エラ・サラ・カーメンに捧げる新アルバム「Dedications」の発表記念の日本ツアーの最終日、六本木「サテン・ドール」は、歌手やヴォーカル・ファンで満席だった。オール・アート主催のツアーの東京での定席だった神田TUCが昨年末閉店したので、「サテン・ドール」初めての公演だったのでTUCの顔なじみも散見された。前日の横浜「ファーラウト」の公演では、若い頃、日本のソプラノ歌手、平山美智子から教育を受けたという発声による迫力のある歌でパワー全開といった舞台を務めたが、この日は、ウイルスに感染したのか喉がおかしく声が出ないので舞台に上がれないと言い出してオール・アートの石塚社長を慌てさせたという。彼の強力な説得でやっと舞台に上がり、喉の調子がおかしいのでやれるところまで「ガンバリマス」と言って「When Lights Are Low」を咳をしながら歌う。続いてのアカペラのヴァースから入る「Easy Living」は、昨日は、後半スキャットからソプラノで舞い上がるような調子で歌ったが今回は抑えた調子で歌う。ジェブ・パットンのピアノ・ソロから始まる「Blue Monk」では、お得意のスキャットも交え調子が出てきた感じだった。ここでジェブのピアノ・ソロに任せてステージを降りた。ジェブは、ジョー・ブシュキン作のシナトラの歌で有名な「Oh Look At Me Now」そしてクラシックのショパンの「Nocturne #13」をジャズ風味を付けて演奏、彼の呼び上げで再び舞台に上がったガンバリ―ニは、エリントンの「It Don’t Mean A Thing」を軽くスイングする。調子が戻ってきた感じだ。続くミッシェル・ルグランのバラード「Once Upon A Summertime」は、しっとり過ぎ去った日を思い出すように歌う。エラの名唱もあるドロシー・フィールズの「I Can’t Give You Anything But Love」は、スキャットからピアノ・ソロ、後半のスキャットでは、聴衆に参加を呼びかけコール・アンド・リスポンスでスキャットを教えるように歌い、歌手が多い聴衆の反応も良く盛り上がった。一転、ビリー・ホリデイで有名な「Good Morning Heartache」は、奇麗なピアノ・ソロを挟んで気持ちの入った歌で聴衆を魅了した。一部の最後は、彼女がガレスピー・トリビュート・バンドで歌ったタッド・ダメロンの「Cool Breeze」をスキャットで歌い締めた。
写真  第二部は、ハリー・エディソンの曲にジョン・ヘンドリックスが歌詞を付けた「Centerpiece」から、ピアノとの掛け合い、後半では「Everyday I Have The Blues」とのメドレイになる。カーメンの名唱のある「As Time Goes By」は、ヴァースから言葉一つ一つが生きているような表現力豊な歌で聞かせた。エリントンとホワン・ティゾールの「Caravan」は、全編スキャットでピアノ・ソロからピアノとの掛け合いなどで盛り上げる。ここで一度ガンバリ―ニはステージを降り、ジェブ・パットンのピアノ・ソロでエリントン・メドレー「Reflection In D」と「In A Mellow Tone」を水の流れるような流麗なタッチで聞かせる。再びステージに上がったガンバリ―ニは、恋のバラード「You Go To My Head」をピアノを挟んで素晴らしい表現で歌った。続いては、テンポをぐっと変えて「Lover Come Back To Me」をヴァースから歌う、ピアノと会話しながらぐいぐいと盛り上げて行く。ガンバリ―ニならではの歌唱。ビリー・ホリデイの歌で有名な「Loverman」は、ムードを変えてしっとりと歌った。続いて「You’re Getting To Be A Habbit With Me」を軽くスイングし、オードリー・ヘップバーンの映画からと言って「Two For The Road」を映画の情景を思い出させるように歌った。「Sometimes I’m Happy」は、手拍子で聴衆の参加を求め、ピアノ・ソロの後にスキャットで聴衆とやり取りしてで再び会場を盛り上げる。「Just Squeeze Me」もスキャットによるイントロから自在に歌い。アンコールは、CDの最初を飾るエラに捧げる「Oh, Lady Be Good」をアカペラで入りしっとりと歌った。喉が不調で歌えないと言っていたのが嘘のような、セカンド・ステージだった。音楽には、ヒーリング・パワーがあるといわれるが、その通りという感じで終わってみれば今回聞いた中で一番印象的な舞台だった。前回来日の時も喉の不調で最初に2回のコンサートをキャンセル、ロジャー・ケラウエーのピアノ・ソロだったが、最初に歌った神田TUCでのコンサートが大変良かった記憶がある、この人は、パワー-全開でこれでもかこれでもか技巧的に歌う時より、今回のように多少体調的に問題がある時の方が、聴衆に感銘を与えるのではないか、と思ったりした。東京近郊は、初日の武蔵野スイング・ホールと横浜「ファーラウト」で聞いたが,この二回は、殆ど同じセット・リストだったが、今回は、セット・リストが殆ど変わっていたのも嬉しかった。

写真:星向紀