ミュージック・ペンクラブ・ジャパン
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第32回MPC音楽賞受賞挨拶

受賞の言葉

■クラシック部門

●独奏・独唱部門
河村尚子様

写真  この度は「ミュージックペンクラブ音楽賞」クラシック独奏・独唱部門賞を頂けたことを大変光栄に思います。
 大勢の音楽ファンの皆様、音楽・仕事仲間の方々、師事した先生方、そして家族のこれまでの応援と協力がなければ、このように評価されていなかったと思います。
 「ピアノを弾く」という好きなことを仕事にできる幸せ、苦手だったベートーヴェンの音楽を自分なりに理解・解釈して演奏する喜びを見い出せたことや、現代曲と積極的に向き合い、新たに発見する音楽の深さ。音楽家は毎日のように世界の芸術傑作と触れ合い、そういう時間が心を潤わせてくれます。改めて、音楽とは不思議だなあ、と思わざるを得ません。
 新型コロナウィルスのために授賞式が中止となってしまい、他の受賞者の皆さんとお会いすることが出来ず、大変残念なこととなりました。世界中の人々が大変な苦労している中、一刻も早くCovid-19が終息し、以前のように安心して普通に毎日を過ごせるようになることを祈ります。

●室内楽・合唱部門
東響コーラス
●オペラ・オーケストラ部門
ジョナサン・ノット指揮/東京交響楽団

公益財団法人東京交響楽団
専務理事 楽団長 大野順二様

写真  この新型コロナウイルス感染拡大の影響で先が見えない中、この賞をいただき、この上ない励みになります。2008年、2009年および2018年の受賞に続き、音楽監督ジョナサン・ノットとのコンビで7年目のシーズンを迎えている当楽団の活動を評価していただき、大変光栄に感じております。
 おかげさまで「ジョナサン・ノット&TSO」のプログラミングと演奏は、今、大変注目いただいております。また今回の受賞はアマチュア混声合唱団として初めて受賞した「東響コーラス」と当楽団のダブル受賞という画期的なものでもありました。これは1987年創立以来これまで「質の高い合唱付きオーケストラ曲を提供する」ことを目的に日々努力してきた成果であります。
 現在「不要不急の外出を避けるように」という苦しい状況下にありますが、私たち東京交響楽団は、「アーティストは必要不可欠であるだけでなく、生命維持に必要だ」とのグリュッタース・ドイツ文化相の言葉を胸に精進してまいります。このたびの受賞に改めて感謝いたします。

●現代音楽部門
名古屋フィルハーモニー交響楽団
公益財団法人 名古屋フィルハーモニー交響楽団 事務局演奏事業部課長(企画制作)
小出篤様

写真  このたびは、ミュージック・ペンクラブ音楽賞に名フィルをお選びいただき、厚くお礼申し上げます。全国的な組織から評価されたこと、またコンポーザー・イン・レジデンスが評価の対象だったことは、私どもにとって大きな喜びです。
 ほとんどのアートの分野で“新作”が注目を集めているにもかかわらず、クラシック音楽だけが“旧作”ばかり求められています。2013年に名フィルの常任指揮者に就任したマーティン・ブランビンズ氏はこれに異を唱え、コンポーザー・イン・レジデンス制度を2014年から導入しました。「3年任期で3作委嘱」「定期演奏会で初演」「日本人作曲家を起用」は、いずれも氏のアイデアです。
 当初は、「なぜわざわざお金をかけて新作を委嘱するのか?」「現代音楽はやめてほしい!」というご意見を、本当に多くのお客様(と楽員)からいただきました。しかし幸いなことに、委嘱作品のクオリティが高かったこと(と聴衆が現代音楽に慣れてきたこと)から、次第にそのような意見は減りました(無くなったわけではありませんが…)。
 21世紀の日本においても才能あふれる作曲家は存在し、今後数百年残る傑作が生まれてくる可能性もゼロではないでしょう。オーケストラが委嘱・演奏することで、その可能性をほんの少しだけ高められるかもしれません。名フィルはこの受賞を励みに、今後も制度を維持してまいる所存です。
 最後に、優れた作品を生み出してくれた初代コンポーザー・イン・レジデンス藤倉大氏と第2代酒井健治氏、これから素晴らしい作品を生んでくれるであろう第3代坂田直樹氏、そして現代音楽を楽しみ、委嘱を応援してくださった好奇心旺盛な聴衆の皆様に、この場をお借りして、心からの感謝を申し上げます。本当にありがとうございました。

●研究・評論部門
松平敬様

写真  この度は、ミュージック・ペンクラブ音楽賞という大変名誉ある賞を頂き、誠にありがとうございます。拙著を選出してくださった会員の皆さまに篤く感謝申し上げます。
 とりわけ音楽評論家、音楽ライターなどの皆さんによる貴会の「研究・評論部門」において、私にとって初めての本格的な著書が受賞したということは、身に余る光栄です。
 本書の出発点は、約20年前、インターネット上でシュトックハウゼンの様々な情報を紹介したウェブサイトの小さな記事に遡ります。その当時、シュトックハウゼンの音楽の単なる一ファンにすぎなかった私が、シュトックハウゼン本人と出会い、様々な教えを受け、その体験から得たことを一つの著書にまとめ、それが栄誉ある賞を頂くという時の流れを考えると、感慨深いものがあります。
 今回の受賞をきっかけに、拙著がさらに多くの方に知られ、シュトックハウゼンの音楽に興味を持ってくださる方が増えることを願ってやみません。

●功労賞
「佐伯茂樹」(古楽器演奏家、音楽評論家)
佐伯徹様(故人の父上)
佐伯元子様(母上)

写真  この度は、いまは亡き子息佐伯茂樹に、ミュージック・ペンクラブ音楽賞クラシック部門功労賞という素晴しい賞を頂戴しまして、甚だ恐縮いたしております。泉下の茂樹もさぞかし喜んでいると思います。厚く御礼申し上げます。
ありがとうございます。
 茂樹は、音楽一筋に生きてきました。皆様方のご厚情に支えられて、音楽評論の場では、多くの作品を残しました。今になって、我が子の残した作品を読んで感心しているところです。
 我が子ながら、これほどの文才に恵まれていたとは、信じられないほどです。せめて後十年ほど生きていてほしかったと思わずにいられません。
 ミュージック・ペンクラブ・ジャパンのますますのご発展と皆様方のご健勝を心からお祈り申し上げて、子息に代わり、御礼申し上げます。





■ポピュラー部門

●最優秀作品部門
氷川きよし様

写真  このたびは、歴史あるミュージック・ペンクラブ・ジャパンの第32回ミュージック・ペンクラブ音楽賞を受賞し、大変光栄に思っております。
 昨年はデビュー20周年を迎えた年で、氷川きよしにとっても、とても大切な年でした。そんな年に、この「限界突破×サバイバー」を皆さんに大きく話題にしていただき、年末には大きなステージで披露させていただく機会にも恵まれました。
 今回は、私が目指す“アーティスト”としての可能性を見ていただいて、本当にうれしい限りです。
 今年はデビュー満20年。さらに羽ばたけるように頑張ってまいります。
ミュージック・ペンクラブ・ジャパンの皆さまに心より感謝申し上げます。
本当にありがとうございました。

●イベント企画部門
公益財団法人大田区文化振興協会 下丸子JAZZ倶楽部様

写真  当協会の事業「下丸子JAZZ倶楽部」が、このたび栄えある賞に選ばれたことに心より感謝申し上げます。これもひとえに26年間、300回もの熱演を頂いたプレーヤー、お客様、そして関係者の皆様のお力添えの賜物と存じます。その軌跡は、記念誌「下丸子JAZZ倶楽部300回スウィンギング・ストーリー」として発刊しております。本日は、我がJAZZ倶楽部の制作者である伊波秀進氏から、そのエッセンスを以下、お礼のご挨拶としてご紹介をさせていただきます。
 第32回ミュージック・ペンクラブ音楽賞イベント企画部門に、「大田区文化振興協会主催 下丸子JAZZ倶楽部」が選ばれたことに心より御礼申し上げます。26年間300回(2019年10月)を達成いたしました。主催者・出演者そして何よりも毎回のステージを支えて愛して下さってきたファンの皆様に、深く感謝いたします。
 思い起こせば、この企画は、ビッグバンド・ジャズ・オーケストラ「東京ユニオン」4代目リーダー高橋達也さん(故人)の闘病からのカムバックが原点でした。“高橋さんが再びテナーサックスを吹き、それまでのジャズ生活の中で培った仲間と再びステージを楽しんで貰えたら!”という私の思いは、高橋さんはもとより、ジャズ評論家の瀬川昌久さん、そして主催者である大田区民プラザ(大田区文化振興協会)にも理解され、晴れて1993年9月に(ジョージ川口とNEWBIGFOURプラスワン)でスタートいたしました。
 タイトルには、あえてローカルな地名を用い「下丸子JAZZ倶楽部」“高橋達也とディアフレンズ”としました。当時、高橋さんは私に「いばちゃん、こういう地方行政の主催だから、良いところ2~3年続けば御の字!」それがなんと26年間で300回継続!何故かくもの長寿ライブが?と今でも不思議な想いですが、やはり音楽、特にジャズやラテンミュージックの包容力、地元住民を主とした一期一会の繋がり、決して気取らないアットホームな雰囲気、最高レベルの出演者、そしてスタッフの奉仕精神などが心地よくミックスしている結果と言えるでしょう。
 この大田区下丸子という地に、月に一度発生する“小さなコミュニティ”が、さらに回を重ね、文化芸術の新たなコミュニティの創造につながっていくものと期待しております。今回、授与頂いた意義を、多くの人々に伝えて参りたいと考えております。

●功労賞
秋吉敏子&ルー・タバキン様

写真 It is a special honor to receive this prestigious award from Music Pen Club, Japan. Thank you for your support through the years and please continue your fine work. This honor will inspire us to continue on our path.
 Yoroshiku onegaishimasu.

 今回、ミュージック・ペンクラブより特別な賞を頂けたことはとても光栄に思ってい ます。私たちのこれまでの歩みを評価して下さったことに感謝すると同時に、皆様の 素晴らしい活動が末永く続くよう願っています。この受賞はこれからの私達の更なる 活動の良い励みとなることでしょう。
 “よろしくお願いします。”





■オーディオ部門

●技術開発「サエクWE-4700(トーンアーム)」
株式会社サエクコマース
代表取締役社長 北澤慶太様

写真  この度の第32回「ミュージック・ペンクラブ音楽賞」オーディオ部門、技術開発賞を頂いたことをたいへん光栄に思います。弊社は1974年の創業当初から高S/Nと忠実度再生を基本理念に製品開発を続けてきました。受賞したトーンアームWE-4700は先代の方々の英知と執念で作られた世界で唯一のダブルナイフエッジ構造のトーンアームWE-407/23を一から学び直し、現代の加工技術を踏まえた上で新たに設計された新世代のトーンアームで、まさに弊社の基本理念に忠実に作られた製品だと自負していますので受賞出来たことはほんとうにうれしく思います。またこの賞をいただけたのも先代の方々の発想力の素晴らしさが有ってこそで先代の方々もとても喜んでくれていると思います。
 新しいアームは現代の設計と加工技術を用いて先代の理想としていた製品の完成形に近づけたとものと考えています。レコードの溝に刻まれた作り手の思いを余すことなく伝達しステージの巾や奥行、高さを再現可能にするトラッキング能力と伝送能力を持ち、最先端のオーディオシステムの能力をより引き出せるように作られていますので今まで以上に音楽を愉しめる機材になっています。是非WE-4700トーンアームで再現される音楽をお楽しみ頂けると幸せに思います。これからもより豊かな生活が出来るよう心掛けて製品作りを進めて行きますのでどうぞ宜しくお願い致します。ありがとうございました。

●優秀録音作品「アンドレア・バッティストーニ指揮 / 東京フィルハーモニー交響楽団上野耕平、山中淳史、石若駿
『ベートーヴェン:交響曲第5番「運命」/ 吉松隆:サイバーバード協奏曲』」
日本コロムビア株式会社 A&C本部スタジオ技術部
レコーディングエンジニア 塩澤利安様

写真  この度は栄えある賞を頂きありがとうございます。受賞の作品は、「BEYOND THE STANDARD」シリーズとして制作を続けている第3弾の作品です。新時代を築く指揮者のアンドレア・バッティストーニと東京フィルハーモニー交響楽団によるセッション録音を響きの良い東京オペラシティコンサートホールで行い、聴き慣れたクラシックの名曲と、日本人作曲家による傑作をカップリング。今再びクラシックファンに新鮮さを与えるとともに、クラシックに深く興味を持っていない音楽ファンまでも魅了させる、新しいスタンダードを生み出す企画となっております。
 昨今日本において、オーケストラによるクラシックのセッション録音はとても少なくなっているのが現状です。そんな中でも、日本コロムビア「DENONレーベル」は積極的にセッション録音を行い、音楽、録音に妥協のない魅力のある芸術音楽作品創りに取り組んでいます。シリーズ作品は引き続き第4,5弾を制作中です。今後も期待に副える価値のある作品を製作していく所存です。
 素晴らしい賞の受賞を糧に、これからも音楽の魅力を伝えられる作品創りが出来るよう努力してまいりたいと思います。最後になりますが、受賞にあたり全ての関係者様に心から感謝を申し上げます。ありがとうございました。

●優秀著作出版物「永瀬宗重著『暗い低音は好きじゃない!~ダブルウーファーズ会長のオーディオ探求~』(2019年12月11日、CDジャーナル社)」
永瀬宗重様

写真  この度はミュージックペンクラブ音楽賞受賞という素晴らしい栄誉にあずかり誠にありがとうございます。
 そもそも小生は、このような団体があることも、このような賞があることも何も知りませんでした。そんな素人である小生がそのような賞をいただけるとは、思いもよらぬ光栄です。
 学生時代にオーディオに取りつかれ、以来45年余り、留まるところのない道でした。この本はそのオーディオの趣味を綴ったブログをまとめたものです。趣味というには軽すぎて、業のようなものかもしれません。ただたた“いい音”の追求を続けてきました。
 小生は電気技術者でもオーディオ評論家でもありません。ただ度重なるオーディオの実践を通し、いい音を探す道をひたすら突っ走ってきた人生です。
 66歳にもなってしまいました。これからも、リスニングルームでオーディオ機器に囲まれてこの世にオサラバするまで、この道を走り続ける覚悟です。
 この度は本当にありがとうございました。

●功労賞「前園俊彦(株式会社前園サウンドラボ名誉会長)」
株式会社前園サウンドラボ
代表取締役社長 前園力様

写真  この度栄えある賞をいただいた父・前園俊彦は生前、「仕事は遊び心で、趣味は命がけで」という言葉をよく口にしておりました。まさにそのとおりに本当に趣味人でした。インド人に師事し本場のインド・カレー作りを学び、ゴルフやカメラはプロに習うなど、自分の好きなことにはとことんこだわりを持って、常に突き詰めておりました。また一番の趣味であり生業であるオーディオへもその姿勢を貫いていました。
 今回、アナログリバイバルへの貢献ということで功労賞を受賞させていただきましたが、父がたくさんの方々にアナログの世界を楽しんでいただこうと、自分も楽しみながらもこだわりを持って行って参りました地道な活動がこのようにご評価いただけたことは、父も大変誇り高く、天国でも喜んでいるのではないかと思います。素晴らしい賞を受賞させていただきましたことを、心より感謝申し上げます。誠にありがとうございました。