2017年11月 

  

Audio Review

 ワイヤレスヘッドホンをさらに、インナー型にするという画期的で意欲的な新製品。現在のスマートフォン状況との絡みを感じさせる、2017年、最もスリリングなコンセプトである。「ヘッドホンジャック消失」というi-phone7でのカジ切りは、音楽ファンにとって衝撃的な事件であった。スティーブ・ジョブスと共にApple共同創業者のである、スティーブ・ウォズニアックも、「もし3.5mmのイヤホンジャックがなければ、多くの人の怒りをかうことになる」と発言している。当たり前だ。i-phoneはそもそも、オーディオ機器であるiPodから派生した電話機器である。その原点であることを忘れ、ジャックを無くすとは言語道断である。案の定ライトニング変換ケーブル経由では、出力レベルは下がり、明かに音質が下がっている。
 しかしそんな状況の中、ユーザーには新しい意識が芽ばえた。iPodからi-phoneへの転換は、ポータブル機器による音楽ユーザー数を天文学的に増やした。また写真のエアードロップ交換など、ブルートゥース使用の機会も爆発的に増やした。そんな中でi-phone7からのジャック無くしで、ワイヤレスヘッドホンに対する視線も大きく変化を見せたのだ。ヘッドホンジャックがなくなったのだから、もうコードレスでいいではないか?と。当たり前だ。
 さらに、どうせコードレスにするなら「装着負担を極限までそぎ落とせたなら?」という命題に挑戦したのが「Bose SoundSport」だ。耳に入れる、2個の小さな装着型ヘッドホン。スポーツ選手が、運動中にリスニングできるように、という大胆な提案。Bose考案の羽根型アダプタ(Sportチップ)は、かなりの装着安定性をもたらした。最大の工夫は実はケース。なぜなら、この小さな左右2個のヘッドホンは簡単に無くしてしまいそうだからだ。小メガネケースの半分程度の大きさである専用ケースにヘッドホンを安置すると、そこがUSBによる充電装置になる。部屋に戻り、電源につないだケースに戻せば充電の開始。このケースへの充電により、1回5時間分の充電が2回分できる。これは良く考えた。サウンドは、BOSEノイズキャンセリングヘッドホンの低音重視型よりも、ナチュラルに近い。BOSE独特の、アメリカのラジオを聴いているようなパワフルなサウンドは健在だが、より透明感が高い。これは耳介内への単体装着がより深い挿入をなされる場合のために対策されたサウンド感ではないか?と思われる。この自然さは、好感が持てる。ヒップホップも圧迫感無く聴ける。Bose SoundSportは、恐らく2020年のオリンピックへの対処も含めた、BOSEの冒険心あるトライと受けとめる。音楽ファンの裾野を拡げるだろう。(サエキけんぞう)