2015年6月 

  

Popular ALBUM Review


「恋する鉄道/V.A.」(ユニバーサルミュージック:UICZ-4328)
 前回の'猫CD'に続いて今度は'鉄っちゃん'がテーマ。この企画に賛同した鉄道好きのミュージシャンたちが新たに書き下ろしたりまた既存作を提供しての全12曲。これは楽しい♪踏み切りの警報音に続いて歌が始まる5曲目「狐ヶ崎の改札で/玉城ちはる」は清廉な歌声と共に光景が目に浮かぶようでほのぼのとした邦画のエンド・テーマに使いたいと思えて来るほど。この題名のおかげで'狐ヶ崎'というのが静岡鉄道静岡清水線の駅名であると知ることが出来たし、さらに演者になじみがなくとも同じ鉄道好きということで親しみを感じたり。それにしてもハルメンズの「電車でGO」がもう35年も前の楽曲だったとは!(上柴とおる)


Popular ALBUM Review


「HARMONIES〜The Best Of The Climax Years〜/竹迫倫太郎」
(K&T Records/販売クリンク:CRCD-5114)
 琉球大学医学部出身で現在は岡山で小児科医として勤務中の'歌う医師'竹迫倫太郎が自身のキャリアを改めて世に問うということで沖縄のインディーズClimax時代(2002年〜2005年)の作品群からセレクトされた11曲。古いという感じなどまるでなく、ビーチ・ボーイズ、エリック・カルメン、山下達郎、大瀧詠一、ポール・マッカートニーといった竹迫が敬愛する先人達の音楽が時代を超えて長く愛されているように、このベスト盤に収録された楽曲の数々もすでにスタンダード・ナンバーのように思えてしまうほどにクォリティーの高さを感じさせる。アレンジもプロデュースも手掛けた自作集。CDに聴診器を当ててみたら健康そのものの音楽が聴こえて来たといったところ♪(上柴とおる)


Popular CONCERT Review


「ロイ・ヘインズ」5月18日 南青山・ブルーノート東京
 今年3月に90歳の節目を迎え、“ブルーノート・ニューヨーク”で記念公演を行ったジャズ界の現役最年長ドラマーが、自身のカルテット“ファウンテン・オブ・ユース”を率いて来日した。さてメンバーがステージでスタンバイするものの、御大は楽器の状態の確認作業を続けていて、なかなか演奏が始まらない。不安な空気が徐々に広がる中、ようやく1曲目がスタートして、ほっと胸を撫で下ろした。シンバルレガートとスネアを中心に組み立てるドラム・プレイは、以前に比べると軽くなった印象。しかし曲が進むにつれてエンジンがかかってゆき、マレット使用のドラム・ソロ曲では、巧みなハイハット・プレイを盛り込んで、観客の耳目を一身に浴びる。メドレーでパット・メセニー作曲の「ジェームス」に繋げた場面は、得意の展開だとわかりつつも嬉しくなってしまう。バスドラのキックが強力なラストのチャーリー・パーカー曲「セグメント」まで、「ボケた振り」の新しいネタを含めて、健在ぶりを体感する一夜だった。(杉田宏樹)
撮影 : 古賀 恒雄


Popular CONCERT Review


「トニー・レヴィン スティック・メン」 4月10日 六本木・ビルボードライブ東京
 タッピングして音を出す弦楽器“スティック”の可能性を極め続けるトニー・レヴィンが率いる“スティック・メン”が来日した。メンバーはレヴィンとマーカス・ロイターのダブル・スティックに、パット・マステロットを加えた3人。ロイターはキーボードも操る。マステロットのパーカッションが様々な響きを出す中、ふたりの男がひたすらネックをタッピングする光景は視覚的にも妙な味わいがあった。個人的にはインダストリアル・アート・ロックと呼びたくなる。スペシャル・ゲストのデイヴィッド・クロスは、白いエレクトリック・ヴァイオリンを抱えての登場。レヴィンもスティックを弓弾きし、あたかもアルコ奏法によるバトルが繰り広げられているような場面もあった。「スターレス」、「トーキング・ドラム」、「太陽と戦慄パート2」等、キング・クリムゾンの古典を惜しげもなく出したのは「あまりにもベタ」という感じもしたが、名曲の力にはあらがえない。
(原田和典)
撮影:Masanori Naruse


Popular CONCERT Review


「アンティバラス」 4月27日 南青山・ブルーノート東京
 1998年に前身バンド“コンフント・アンティバラス”が発足し、2000年にファースト・アルバムを発表。フェラ・クティの生涯を描いたブロードウェイ・ミュージカル「フェラ!」(2010年のトニー賞を獲得)でも演奏した人気グループが久々に来日した。ぼくは10年ほどまえに行なわれた初来日公演も「フェラ!」も見ており、彼らのアフロ・ビートに寄せる情熱に圧倒されたのだが、久々にナマで聴くサウンドは当時よりもさらに骨太かつシャープになり、濃厚なラテン風味も感じられた。少し大げさに言えばフェラ・クティのサウンドに、エディ・パルミエーリ“ハーレム・リヴァー・ドライヴ”の音のかたまりがぶつかったような感じか。グループの発起人であるマーティン・ペルナのバリトン・サックスは冴えに冴え、グループ内の数少ないアフリカ系のひとりであるアマヨはヴォーカル、パーカッション、そしてダンスで場内の喝采をさらった。(原田和典)
撮影 : グレート・ザ・歌舞伎町


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