2015年6月 

  

Audio Blu-Ray Disc Review

「121212ニューヨーク、奇跡のライブ」(KADOKAWA DAXA-4817)
 米東海岸に上陸、大きな被害をもたらしたハリケーン「サンディ」の被害者救援コンサート「12-12-12 コンサート・フォー・サンディ・リリーフ」のドキュメント映像。当日マディソン・スクエア・ガーデンのステージに登場した錚々たるミュージシャンのライブ演奏が収録されているが、どちらかというとコンサートビデオというよりイベントのメイキングでドキュメンタリーである。
 アーティストサイドの音頭をとったのはポール・マッカートニーだそうだが、ストーンズ、ザ・フー、クラプトン、ロジャー・ウォーターズと英国色が強い。ニューヨーカーの代表という点ではビリー・ジョエルくらい。ブルース・スプリングスティーンやアリシア・キーズの出演のおかげで何とかミュージシャン達の自主的発意という面目が保った印象。
 こうした大規模チャリティーロックコンサートの始まりはバングラデシュ難民救済コンサートと記憶する。企画が杜撰で義援金が長期間納付出来ず批判されたが、そこにはまぎれもなく純粋な音楽家達の「初心」があった。
 このコンサートはさすがに過去の失敗事例が活かされ、企画運営は周到かつスマートで万事ぬかりがない。しかし、高度にプロフェッショナルな商業的手際にどこか鼻白むものがあるのだ。ことに、寄付金をリアルタイムで募るウェブ回線がパンクしグーグルの経営者が助っ人に会場に姿を現すくだりは、「どうだ、俺たち(企画者)すごいだろ!」という傲慢さを感じる
 確かにコンサートの収益(約54億円とか)は、台風の被害にあったニューヨーク州の低所得者層の救いになったろう。しかし、舞台裏が映し出されたこのイベントには「感動」がない。(大橋伸太郎)