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「モーツァルト:弦楽四重奏曲 第15番 ニ短調K.421、第19番 ハ長調「不協和音」K.465、ディヴェルティメント ヘ長調K.138 / エベーヌ弦楽四重奏団(ピエール・コロンベ〈Vn〉、ガブリエル・ル・マガデュール〈Vn〉、マチュー・ヘルツォク〈Va〉、ラファエル・メルラン〈Vc〉)」(ワーナーミュージック・ジャパン、エラート / WPCS-13266)
エベーヌのこのモーツァルトには恐らく賛否両論があるだろう。特に最初のニ短調、K421のクァルテットは凄まじい迄の印象を聴く人に植え付けてしまう。第1楽章第1主題の乾ききった表現は、一般のモーツァルト・ファンにとってここは怒りとも虚無的とも取れるかも知れない。最初の2つの楽章にはこのムードが横溢している。しかし第3楽章のトリオではこの曲の中で終楽章最後の第4変奏と共に明るさを感じるがこれは諦めか。そして2つのクァルテットに挟まれたK.138のディヴェルティメントは前曲とは真逆の大変颯爽とした演奏ではある。最後の「不協和音」は3曲中最も中庸的な演奏である。巧者エベーヌはこのアルバムで可成り多面的な顔を覗かせる。(廣兼 正明) |