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「ナタリー・マンフリーノ ソプラノ・リサイタル」(6月22日、武蔵野市民文化会館小ホール)
今回が初来日のナタリー・マンフリーノ。最高のドラマティック・ソプラノだ。身体の中に巨大な溶鉱炉があるように、熱く燃える歌声が小ホールの壁を突き破るような勢いで飛び出してくる。声が大きく強いだけではなく、艶があり、弱音もコントロールされる。音を高く遠く飛ばし、最後に消え入るように終わらせるテクニックもある。
彼女の持ち味が最も発揮されたのは、前半最後の、マスネ「彼は優しい人」歌劇《エロディアード》より。サロメが預言者ジャンの素晴らしさを讃える歌。「愛する預言者よ、あなたなしでなぞ、生きられまい!」と鋼鉄の強さで歌う声に「ブラヴァ!」多数。
最後に歌ったヴェルディ「神よ平和を与えたまえ」歌劇《運命の力》より。レオノーラが引き裂かれた恋人アルヴァーロへの思いから抜け出せずにいる自分に、神に死で安息を求める歌が劇的で素晴らしかった。
聴衆の熱い反応に乗ったのか、アンコールは3曲。それらが全て良かった。ドラマティック・ソプラノにぴったりのベッリーニ「神聖な女神よ」歌劇《ノルマ》より、プッチーニ「ある晴れた日に」歌劇《蝶々夫人》より、は当然として、リリックに向いたプッチーニ「私のお父さん」歌劇《ジャンニ・スキッキ》よりが、涙がでるくらい良かった。彼女の明るい性格と歌がぴったりと重なったためではないだろうか。
ビゼー《カルメン》のミカエラや、プッチーニ《ラ・ボエーム》のミミのように純真で弱さを持ったキャラクターは、マンフリーノの声は少し強すぎるようだ。
ピアノはゲオルギューやフェリシティ・ロットとも共演するなど、ヨーロッパで活躍中の中野正克。リサイタル終演後マンフリーノは中野と抱き合い、お互いを讃えあった。(長谷川京介) |