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「メンデルスゾーン:劇音楽《真夏の夜の夢》(抜粋)、ピアノ協奏曲第1番・第2番、序曲《ルイ・ブラス》(1839年初稿ホグウッド校訂版) /リッカルド・シャイー指揮、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団、サリーム・アシュカール(ピアノ)」 (ユニバーサル ミュージック、デッカ/UCCD-1398)
このCDはシャイーが手兵ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団と組んだ3枚目のメンデルスゾーンのデッカ録音である。2005年に始まるシーズンから第19代ゲヴァントハウスのカペルマイスターとなったシャイーは、世界最古のオーケストラであるゲヴァントハウスに最も相応しい指揮者ではなかろうか。古い中にも新しさを求めて行く情熱が大きく感じられるからだ。今回新しくリリースされたCDは歯切れの良いリズムで一つ一つの音をとても大切に扱い、その上で分かり易く組み立ててくれる。最初の序曲「ルイ・ブラス」では金管を吠えさせ、ヴァイオリンを表情過多に語らせ、その上に強弱を用いて序曲だけで終わる内容としたのだろう。次の劇音楽「真夏の夜の夢」は可成りドラマティックな進行となっている。特に有名な「結婚行進曲」は実際の結婚式で使えば最高のムードが得られるのではないだろうか。一言で言ってとても心のこもった演奏である。最後2曲のピアノ協奏曲を弾いているサリーム・アブード・アシュカールは1976年イスラエル生まれの俊英ピアニスト。多くの欧米有名オーケストラと数多く協演している。清潔感のあるタッチと有り余る技巧を感じさせる。第1番第2楽章のオーケストラの弦とのアンサンブルは誠に美しい。ヴィルトゥオーゾの誉れ高かったメンデルスゾーンの2曲のピアノ協奏曲は両曲とも美しいが、この2曲をシャイーと何回も協演しているアシュカールの演奏は既に貫禄のようなものを感じる。(廣兼 正明)
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