2017年3月 

  

Audio Blu-ray Disc Review

「ジャニス リトル・ガール・ブルー」(キングKIXF456)
 ファンはご承知だろうが、タイトルは「コズミック・ブルースを歌う」の中の一曲から採られた。「歌え!ジャニス★ジョプリンのように」という珍作映画(仏西合作)がかつてあったが2005年製作の本作は劇映画ではなく、ジャニス・ジョプリンの生い立ちから27歳の死まで家族や親交のあった人々の証言で綴るドキュメント。
 ビッグブラザー&ホールディング・カンパニーやコズミックブルースバンドらかつての仲間、CBSレコードの当時の社長も登場。随所に挿入される両親や妹弟、友人に当てた手紙の朗読はチャン・マーシャル。声質が似ていて一瞬ジャニスの肉声と錯覚してしまう。
 彼女を一躍有名にしたモンタレー・ポップフェスティバルやコズミックブルースバンドとのヨーロッパ楽旅のステージ映像も挿入されるがいずれサワリで一曲フル演奏がない。ブートレッグに聴くアムステルダム・コンセルトヘボウでの演奏はジャニスのキャリア上のベストステージの一つ、映像があれば収録してほしかった。エド・サリバンショー出演時の映像が紹介されないのも残念。
 音声はDTS-HDマスターオーディオ5.1CH。主要な演奏シーンの音源はそれなりにきれいに収録されている。一方友人や関係者の最近のインタビューの録音が歪んでいたり総合的に決して高音質ではない。映像は関係者が撮影した8mm、16mmフィルムや当時のテレビ映像が多く、あくまでドキュメント映像の品位に止まる。
 特典映像にビッグブラザー&ホールディング・カンパニーのメンバーたち(もちろんみな老人)のアカペラ等が収録されているが、こんな余興よりジャニスのライブ映像を数曲でもいいからフル収録してほしかった。どこか欲求不満が残る作品だが、ジャニスのファンにとってはマストアイテムだろう。(大橋伸太郎