☆今回のヨーロッパの旅は、1991年4月15日から始まった。ロンドン・パラディアムで「ショウ・ボート」、オールド・ヴィック・シアターで「カーメン・ジョーンズ」、クイーンズ・シアターで「マタドール」、ドミニオン・シアターで「フォーティセカンド・ストリート」、パリへ移って、テアトル・モガドールで「コーラス・ライン」、ストックホルムのチャイナ・テアテルンで「アニーよ銃をとれ」、サーカス・テアテルンで「レ・ミゼラブル」。アムステルダムのテアター・カーレで「オペラ座の怪人」に出会った。
4月25日にドイツ入りして、ハンブルグのネウエ・フローラで「オペラ座の怪人」、そして待望のベルリンで、テアター・デス・ヴェステンズの「グランド・ホテル」、メトロポール・テアターの「ハロー・ドーリー!」となった。
テアター・デス・ヴェステンズの「グランド・ホテル」
☆時は1928年、所はベルリン。ここグランド・ホテルには、様々な人が来ては去り、人生を謳歌していた。この日の宿泊客は、老いの影に怯えるバレリーナのグルーシンスカヤ (レスリー・キャロン) と付き人のラファエラ (イザベル・ヴェイケン)、借金に苦しむ若いガイゲルン男爵 (フェルディナンド・フォン・プレッテンベルグ)、ハリウッド・スターを夢見るタイピストのフレムシェン (ミシェール・ベッカー)、アメリカの実業家プライジング (ロベルト・ディエトル)、義足の医師オッテルンシュラグ (F・ディオン・デイヴィス)、 死を目前に、豪華ホテルで余生を送ろうと有り金はたいてやってきたユダヤ人の会計士オットー (ヘルムット・バウマン)、等々。
ガイゲルン男爵は、盗みに入ったグルーシンスカヤの部屋で彼女に出会い、たちまち恋に落ちる。男爵の愛に触れ、グルーシンスカヤは、自信を取り戻す。しかし、プライジングの部屋に忍び込んだ男爵は、プライジングに見つかり射殺されてしまう。フレムシェンの明るさに励まされ、オットーも又、前向きな気持ちになっていく。たった一晩のホテルでの出会いが見つかり、人に与える影響はまさに計り知れない。
今回の「グランド・ホテル」は、上演されているのが、まさにご当地ベルリンというのがとても嬉しく、そして何より「巴里のアメリカ人」「リリー」「足長おじさん」「ジジ (恋の手ほどき)」等、数々の名作映画に出演してきたレスリー・キャロンがバレエ・ダンサーのグルーシンスカヤを演じているのが、忘れられない思い出となった。パリジェンヌのレスリー・キャロンがドイツ語で演じ、歌っているのが楽しかった。オープニングでレスリー・キャロンが舞台に現れると、彼女のオーラでそこはそのままグランド・ホテルになる。オットーはじめ、他の出演者も申し分なしの名舞台だが、終始レスリー・キャロンの存在感に圧倒される大満足な「グランド・ホテル」だった。
開演前にブロデューサー兼オットー役のヘルムット・バウマン氏に、色々と話を聞く機会に恵まれ、彼が舞台にかける情熱が良く分かり、更に舞台を楽しむことができて有難かった。
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