オーケストラ・エレティール 第47回定期演奏会」
2月10日 武蔵野市民会館大ホール・・・・・・・・・・・・藤村 貴彦
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指揮者の新田ユリ
オーケストラ・エレティールは、1988年に電気通信大学の卒業生が呼びかけ、学生時代に共演した白百合女子・実践女子の各大学弦楽合奏団の卒業生らとともに結成されたとのこと。現在年二回の定期演奏会を行っている。弦はきれいにそろってさわやかな音を出し、調和のとれたしっくりした美しさを聴かせるのが特徴。今回の定期は、モーツァルトの「交響曲第一番」、ベートーヴェン「ピアノ協奏曲第一番」、ショスタコビッチの「交響曲第一番」というプログラムで初期の3曲である。どの作品も派手な演出抜きの誠実な再現で、良い響きが出ていたし、細かな表情も念入りに磨かれており、好感のもてる音楽であった。
ベートーヴェンの「ピアノ協奏曲第一番」は指揮者の新田ユリによる独奏で、「弾き振り」のスタイルでの演奏。新田の指揮はこれまで数回接したが、ピアノを聴くのは初めてである。過度な力みや緊張から解放されて、芳醇な音楽性を少しも無理なく発揮していた。新田ユリの指揮の長所は、内容の充実感を持って、穏やかに人の心をとらえることにあるが、ピアノの演奏も同様であり、特に第二楽章が美しかった。旋律の処理の表現が鮮やかで、しかも豊かな音の美しさにも、要所要所くさびが打ち込まれて、しっかりした形式感が保たれている。
ショスタコビッチの交響曲第一番は出来もなかなか立派な物で、ひたすらまっすぐに頑丈な音楽を作り出しているのが印象に残った。テンポと曲想がめまぐるしく変化する第4楽章が非常に難しいのだが、どのパートもしっかり音を出しており、それでいて機械的な表現は見られなかった。
日本にはアマチュアオーケストラがどのくらいあるかはわからない。オーケストラ・エレティールの団員の方がたがたも音楽を通して、さらに豊かな人生を歩んでもらいたい。
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