2006年9月 

<ラス・ヴェガスで実現したバリー・マニロウと岩崎宏美のデュエット> 村岡裕司
 ラス・ヴェガスで長期コンサートを敢行中のバリー・マニロウ。そのバリーのステージに岩崎宏美がゲスト出演、日米の実力派シンガーのデュエットが実現した。
 フランク・シナトラからエルヴィス・プレスリー、リナ・ホーン、アン=マーグレット、セリーヌ・ディオン、エルトン・ジョンなど、数多くのスターがステージに立ち、ショー・ビズの歴史を語る上で欠かせない不夜城ラス・ヴェガス。正直なところ、ギャンブルの街は僕好みではないが、ここで行なわれるライヴ・パフォーマンスには大きな興味があった。そのラス・ヴェガスでバリー・マニロウが「Music And Passion」と題したショーを開始したのは2005年秋のこと。エルヴィス・プレスリーの伝説のステージで知られるラス・ヴェガス・ヒルトンの目玉となったこのショーは、たちまちロングラン体制に入り、来年にかけての延長も決定している。ホテルの壁面には彼の写真が設置され、ルーム・キーにもバリーの写真が使われるなど、ヒルトンはバリー・マニロウ一色の趣だった。
 僕が観たのは8月4日と5日のステージ。披露された曲やオーディエンスの層が微妙に違うだけで、両日の公演には異質なグルーヴも生まれていたが、基本となるコンセプトは同じで、ラス・ヴェガスならではの派手な仕掛も用意されてとても楽しい内容だった。
 岩崎宏美がゲストで出演したのは5日の公演。コンサート中盤に設定されたオールディーズ・コーナーの一曲としてフィーチュアされた「シンシアリー/今夜教えてね」(ムーングロウズやマクガイア・シスターズで知られる名曲と、ザ・デキャストロ・シスターズのヒット曲をメドレー化)のパートナーを務めたのだ。このコーナーは、全米No.1に輝いたバリーのアルバム『ザ・グレイテスト・ソングス・オブ・フィフティーズ』とリンクさせた選曲で、アルバムにも収録された「ヴィーナス」「慕情」に続いて同ナンバーが歌われた。日本からスペシャル・ゲストを招いた旨のバリー自身の紹介に続いて、岩崎が登場。彼女が「シンシアリー」の冒頭のメロディを歌うと、バリーがそれを受けてハーモニーを取り、二人が旧知の恋人のようなリラックスしたヴォーカルで掛け合った。もちろん、オーディエンスの受けもよく、ワン・ナイト・オンリーのデュエットはスタンディング・オベイションと絶賛の拍手で迎えられた。包容力あふれるバリーのサポートがあったとはいえ、岩崎宏美のパフォーマンスはプロフェッショナルそのもの。これは、定評がある歌の上手さに加えて長いキャリアの賜物であろう。見事なラス・ウェガス・デビューだったと思う。
 これまでにも、ラス・ヴェガスのステージを踏んだ日本のシンガーはいるが、その多くは、内外の日本のファンを動員するようなあらかじめお膳立てした内容だった。今回のバリーと岩崎のデュエットは、わずかなスタッフと記者が同行したものの、彼女のファンにサポートされるような試みではなかった。彼女が単独でラス・ヴェガスに乗り込んで、アメリカを代表するスーパースターのステージにチャレンジ、そのスーパースターのファンたちに日本のシンガーの実力をアピールした点で大いにリスペクト出切る試みだったのだ。
 ちなみに、このコラボレーションが実現したのは、バリーの『ザ・グレイテスト・ソングス・オブ・ザ・フィフティーズ』(このアルバムの他、岩崎宏美の新作『Dear Friends III』にも収録)の日本マーケットに向けた「シンシアリー/今夜教えてね」のレコーディングがきっかけだ。こちらは両者が顔を合わせず、Pro Toolのやり取りでレコーディングされたが、この出来にバリーが感激。彼女のスケジュール調整の末ステージで歌うことが具現化したもの。いわば、このラス・ヴェガスのデュエットが初顔合わせになるわけだ。今回のデュエットをきっかけに、二人の新たなコラボレーションにも期待したいと思う。

<2006年上半期 HMVジャズCD売り上げランキングの考察> 高木信哉
   

<総合ランキング>
10cd Wallet Box/ マイルス・デイビス(輸入盤)
リトル・ウイリーズ/リトル・ウイリーズ(輸入盤)
キャッチング・テイルズ/ジェイミー・カラム(輸入盤)
10cd Wallet Box/ チャーリー・パーカー(輸入盤)
スタンダード・ライブ/ウイントン・マルサリス(輸入盤)
ユアーズ/サラ・ガザレク(輸入盤)
スパイラル/上原ひろみ(輸入盤)
デイ・イズ・ダン/ブラッド・メルドー(輸入盤)
オーバーシーズ/トミー・フラナガン(輸入盤)
スーパー・トリオ/ チック・コリア/スティーブ・ガッド/クリスチャン・マクブライド(国内盤)
ノラ・ジョーンズ(輸入盤)
ライブ・イン・パリ/エンリコ・ピエラヌンツィ(輸入盤)
ジャンゴロジー/ジャンゴ・ラインハルト(輸入盤)
ライブ・アット・トニック/クリスチャン・マクブライド(輸入盤)
アンダー・カレント/ビル・エバンス(輸入盤)
スマイリン/noon(国内盤)
ポッシビリティーズ/ハービー・ハンコック(輸入盤)
フー・イジ・ディス・ビッチ・エニウェイ/マリーナ・ショウ(国内盤)
ビッグ・バンド10cd Wallet Box(輸入盤)
ジェイミー・カラム(輸入盤)
フィールズ・ライク・ホーム/ノラ・ジョーンズ(輸入盤)
コラージュ/ akiko(国内盤)
10cd Wallet Box/ グレン・ミラー(輸入盤)
クール・ストラッティン/ソニー・クラーク(輸入盤)
トゥルース:20th Anniversary/ T-square(国内盤)

<新譜ランキング・海外アーティスト>
1.リトル・ウイリーズ/リトル・ウイリーズ(輸入盤)
2.キャッチング・テイルズ/ジェイミー・カラム(輸入盤)
3.ユアーズ/サラ・ガザレク(輸入盤)
4.スーパー・トリオ/ チック・コリア/スティーブ・ガッド/クリスチャン・マクブライド(国内盤)
5.ライブ・イン・パリ/エンリコ・ピエラヌンツィ(輸入盤)
6.ライブ・アット・トニック/クリスチャン・マクブライド(輸入盤)
7.インダストリアル・ゼン/ジョン・マクラフリン(輸入盤)
8.サンダーバード/カサンドラ・ウイルソン(輸入盤)
9.トリビュート・トゥ・ウェス・モンゴメリー/パット・マルティーノ(輸入盤)
10.亡き王女のためのパヴァーヌ/スティーブ・カーン(国内盤)
11.チェンジング・パートナーズ/ハービー・メイソン(国内盤)
12.ボストン Tパーティ/デニス・チェンバース(輸入盤)
13.アナザー・ナイト・アット・ザ・ベイクト・ポテト/グレッグ・マティソン(輸入盤)
14.イッツ・オール・イン・ザ・ゲーム/エリック・アレキサンダー(輸入盤)
15.ワン・モア・フォー・ザ・ロード/トゥーツ・シールマンス(輸入盤)
16.ホワット・ラブ・イズ/エリン・ボーエム(輸入盤)
17.ダウンライト・ウップライト/ブライアン・ブロンバーグ(国内盤)
18.モーツァルト・イン・ジャズ/レイ・ケネディ・トリオ(国内盤)
19.ミュンヘン・コンサート/マイルス・デイビス(輸入盤)

<新譜ランキング・国内アーティスト>
1.スマイリン/noon(国内盤)
2.コラージュ/ akiko(国内盤)
3.トゥルース:20th Anniversary/ T-square(国内盤)
4.ハンズ・オブ・ガイド/塩谷哲(国内盤)
5.夜間飛行/寺井尚子(国内盤)
6.ファイン/小林香織(国内盤)
7.コントレイル/秀景満(国内盤)

<10cd Wallet Boxランキング>
1.10cd Wallet Box/ マイルス・デイビス(輸入盤)
2. 10cd Wallet Box/ チャーリー・パーカー(輸入盤)
3.ジャンゴロジー/ジャンゴ・ラインハルト(輸入盤)
4.ビッグ・バンド10cd Wallet Box(輸入盤)
5.10cd Wallet Box/ グレン・ミラー(輸入盤)
6.10cd Wallet Box/ ベニー・グッドマン(輸入盤)
7.10cd Wallet Box/ フランク・シナトラ(輸入盤)
8.10cd Wallet Box/ エラ・フィツジェラルド(輸入盤)
9.10cd Wallet Box/ ビリー・ホリディ(輸入盤)
10.イッツ・ルイ・アームストロング/ルイ・アームストロング(輸入盤)

<旧譜ランキング・海外アーティスト>
1.スタンダード・ライブ/ウイントン・マルサリス(輸入盤)
2.デイ・イズ・ダン/ブラッド・メルドー(輸入盤)
3.オーバーシーズ/トミー・フラナガン(輸入盤)
4.ノラ・ジョーンズ(輸入盤)
5.アンダー・カレント/ビル・エバンス(輸入盤)
6.ポッシビリティーズ/ハービー・ハンコック(輸入盤)
7.フー・イジ・ディス・ビッチ・エニウェイ/マリーナ・ショウ(国内盤)
8.ジェイミー・カラム(輸入盤)
9.フィールズ・ライク・ホーム/ノラ・ジョーンズ(輸入盤)
10.クール・ストラッティン/ソニー・クラーク(輸入盤)
11.ブルー・トレイン/ジョン・コルトレーン(輸入盤)
12.サムシン・エルス/キャノンボール・アダレイ(輸入盤)
13.ヨーロピアン・ジャズ・サウンズ/ミヒャエル(マイケル)・ナウラ(国内盤)
14.カインド・オブ・ブルー/マイルス・デイビス(輸入盤)
15.ボサ・ノバ/キャノンボール・アダレイ(輸入盤)
16.アフィニティ/ビル・エバンス(輸入盤)
17.セラー・ドア・セッションズ 1970/マイルス・デイビス(輸入盤)
18.ワルツ・フォー・デビー/ビル・エバンス(輸入盤)
19.スペイン/  ミシェル・カミロ/トマティート(輸入盤)
20.カリフォルニア,ヒア・アイ・カム/ビル・エバンス(輸入盤)

<旧譜ランキング・国内アーティスト>
スパイラル/上原ひろみ(輸入盤)
マイ・フェイリー・テイル/noon(国内盤)
リトル・ミス・ジャズ・アンド・ジャイブ/ akiko(国内盤)
ベター・ザン・エニシング/noon
マドリガル/山中千尋

<考察>
HMVから2006年上半期のジャズCD売り上げランキング(100位まで発表)が発表された。今回の結果を見ると、輸入盤市場で、異変が起きていることを感じる。
驚くことに総合の1位は、マイルス・デイビスの『10cd Wallet Box』である。
このアルバムは、ドイツのDocumentsレーベルから輸入され、国内では1月30日に発売された。10枚組で、なんと1617円である!収録曲は、1956年以前(著作権の切れたもの)の代表作20枚からセレクトされているが、驚いたことに8枚分は全曲が揃っている。解説文や録音DATAはついてないが、十分調べられる。音質は、まったく問題なく結構いい音で聞ける。これで1枚あたり167円なので、口コミで噂が流れ自然と火がついて売れ始めた。さらに驚いたのは、マイルスだけでなく チャーリー・パーカー、グレン・ミラー、ベニー・グッドマン、フランク・シナトラ、 エラ・フィツジェラルド、 ビリー・ホリディなど豊富なラインナップが揃えられていることだ。これは実に有り難い!例えばチャーリー・パーカーを聞いてみたいが、当たり外れもありそうだし、録音状態にもバラつきがありそう、でもチャンスがあれば聞いてみたいという潜在ユーザーの購買意欲に火をつけたのだ。なんせ1617円である。失敗してもいいと思える額だ。私もマイルスを買ってみたが、録音DATAのないこと以外は、不満がない。これなら国内得意の1500円安価シリーズも歯が立たないであろう。別表の≪10cd Wallet Box≫のランキングを参考にして頂きたい。
 さて実質総合ランキングの1位と呼べる作品は、『リトル・ウイリーズ』である。これは、ノラ・ジョーンズが参加しているので、結局ノラのファンが買っている。イギリスのジェイミー・カラムは、ノラ・ジョーンズ同様若き才能溢れる新世代アーティストである。
『スタンダード・ライブ/ウイントン・マルサリス』と『スパイラル/上原ひろみ』は、ジャズ・ディスク大賞の受賞作品なので、よく売れている。6位のサラ・ガザレクは、3月にコットン・クラブで初来日公演を行った注目の逸材。他にもソフィー・ミルマン等続々と才能ある新人が登場し、どうやら今年は女性ボヴォーカルの当たり年のようだ。
 逆にガッカリしてしまうのが、国内アーティストである。ベスト100の中で、国内アーティストの新譜は7作品、旧譜は5作品しか入ってない。しかもnoon、上原ひろみ、akiko、山中千尋、寺井尚子といつも同じ顔ぶれである。強力な新人やベテランの良い作品が登場しない。旧譜の海外アーティストの人気は根強く、『オーバーシーズ/トミー・フラナガン』、ビル・エバンスの『カリフォルニア,ヒア・アイ・カム』、『アフィニティ』、『ワルツ・フォー・デビー/ビル・エバンス』、マイルス・デイビスの『カインド・オブ・ブルー』、『セラー・ドア・セッションズ 1970』(これは6枚組で、12905円と高い)、『ミュンヘン・コンサート』(これは3枚組で、1985円と大変お得)がよく売れている。驚異的ロングセラーが続いているのはノラ・ジョーンズで、『ノラ・ジョーンズ』、『フィールズ・ライク・ホーム』そして前述したノラが参加した『リトル・ウイリーズ』の3作品が、延々と売れ続けている。国内でノラ・ジョーンズ同様の存在がnoonで、『ベター・ザン・エニシング』、『マイ・フェイリー・テイル』、『スマイリン』と全ての作品がよく売れている。またnoon、アン・サリー、畠山美由紀を見出したゴンザレス鈴木のSoul Bossa Trioも再評価され5月に発売された2枚組のベスト『Soul Bossa Production 1994-2005』もよく売れている。
それから付け加えたいのが、セルジオ・メンデスの10年ぶりの新作『タイムレス』。ジャズのランキングを飛び越え、音楽総合ランキングの45位に入っている。再演されている<マシュ・ケ・ナダ>など斬新なサウンドで、世代を超える勢いが大ウケしている。


直球曲球 <観客の方を向いたオペラ公演を〜兵庫と東京の場合> 加藤浩子
 昨年オープンした、兵庫県立芸術文化センターのオペラ公演が好調である。
 筆者が足を運んだのは、昨年12月のクリスマスに上演された《ヘンゼルとグレーテル》。芸術監督佐渡裕の指揮のもと、子供が喜ぶ仕掛けを沢山盛り込んだ、鈴木敬介の正統派メルヘンタッチの演出、わかりやすい日本語訳詞(しかも字幕つき)、そして若手を中心としたソリストと、オール日本人キャストで楽しめる舞台に仕上がっていた。それでチケット代は1万円ちょっとだったから、2日間の公演は見事にソールドアウトだったのである。
この7月、同じ芸術文化センターで、《蝶々夫人》の公演があった。残念ながら筆者は聴きそびれてしまったのだが、なんと8回の公演があり、ほぼ満席の盛況だったという。チケット代はやはり12,000円だった。
興味深かったのは、間接的にきいた入場者アンケートの結果。何と回答者の9割がオペラに初めて足を運んだというのだ。観劇したある関係者の話だと、その聴衆の大半が感動し、終演後はスタンディングオベーションとなったという。
そう、チケット代も含めてもっと敷居が低ければ、オペラを観たいひとは大勢いるのである。果たして主催者側は、それに見合った公演を提供しているのだろうか。

日本はオペラ大国である。日本全国で上演されるオペラの演目は、1年間でおよそ70から80演目にものぼる。大都市には必ず、歴史ある公の歌劇場があると決まっている欧米に比べ、国立のオペラ劇場が生まれたのがわずか8年前というお国柄で、これだけオペラの公演が活発な国はまずないだろう。
そのオペラ大国を成り立たせている特殊事情が、海外オペラハウスの来日公演である。本2006年に海外から日本にやって来るオペラハウスはざっと15。世界のどこにも、こんな国はおそらくない。ミラノでもウィーンでも、オペラは基本的に自前の劇場で上演するもの、外国の劇場の公演などまれである。日本は、自前の劇場ができる前に、外国の劇場を呼んでくるパターンが定着してしまった特殊な国なのだ。チケット代が5万、6万という一般では考えられない値段がつくのも、この手の来日公演、もっというと海外の一流歌劇場の公演である。
当然のことだが、一晩に5万、6万出せる聴衆は限られる。けれど生のオペラを観たいひとは大勢いる。そんな要望に応えて、ここ10年あまり盛んになっているのが、海外のあまり有名ではない劇場の来日公演である。人件費が安いため、S席で1万円台の公演もあり、満席になる公演も少なくない。高額な公演が近年必ずしも満席にならないのとは対象的である。
新国立劇場ができても、このような状況は基本的には変わっていない。それどころか既存の日本のオペラカンパニー(二期会、藤原歌劇団など)と競合して、ファンを食い合っている面もある。
そのようなアンバランスな状況があるところに、また一つ波紋を投げたのが、昨年から始まった東京都が主催するオペラフェスティバル「東京のオペラの森」である。
ある週刊誌の報道によれば、音楽監督となった小澤征爾氏は、石原都知事との「友情」もあってこの催しを引き受けたという。都が主催するからには、都の文化を活性化すべく、自前のオーケストラ(東京都交響楽団)や邦人歌手を使い、コストパフォーマンスも考えた公演になるのかと思っていたら、オーケストラは臨時編成(「東京のオペラの森」管弦楽団)、主な歌手は外国から招聘、しかもチケット代はS席38,000円という高額だった。
さまざまな公演を知っている東京の聴衆は、コストパフォーマンスには厳しい。昨年も今年も、会場には空席が目立った。唯一盛況だったのは、今年でいえばリッカルド・ムーティが指揮したヴェルディの《レクイエム》のコンサートだけだった。
都の音楽家にも聴衆にもあまり利益があるとは思えないこのような催しを、都が主催する意義が果たしてあるのだろうか。地方自治体が責任を持つからには、兵庫のような、聴衆の方を向いたオペラ公演であってしかるべきなのではないだろうか。小澤征爾氏の振るオペラが東京で聴けるからということだけなら、税金を投入する意味はない。
自治体が主催するということは、その自治体の文化的発展のためになるという前提があって当然である。中途半端な来日公演のようなオペラフェスティバルより、将来性豊かな日本の音楽家(とても多いのは周知の通り)が、そしてそれを喜んで支える聴衆が育つような、そのような場所を作ってこそ、都の、そして日本の音楽文化の発展に役立つのではないだろうか。都知事が好む「愛国心」という言葉の実践には、後者の方がはるかに相応しいと思うのだが。〈完)

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