<おめでとう250歳! W.A.モーツァルト>
「ユニバーサル ミュージック モーツァルト大全集」特集
−第2回−

第1巻「交響曲全集」(2) UCCG-4001〜14(CD14枚組)
「第13番」の2年後に書かれた「交響曲第25番ト短調」映画「アマデウス」の中で最もよく演奏された曲でもあり、モーツァルトの交響曲の中でも傑作のひとつ。あの「第40番」も悲愴感に満ち溢れているが、この曲も暗く、胸をえぐるような情感に満ちていて、まさにモーツァルトの「シュトルム・ドラング」なのである。速い楽章と緩徐楽章のコントラストを鮮やかにつけ、胸のすく様な名明快な表現。ウィーン・フィルの色彩豊かな響きと見事なアンサンブルを駆使して、ドラマティックな音楽を作っている。強弱の起伏も凄くそれでいて流動性を失うことがない。みずみずしい感興の中に聴き手を導く、そんな魅力に溢れた「第25番」のモーツァルト演奏である。17歳の青年がこのような交響曲を作曲したとは!モーツァツトはどのような人間であったのか、改めて筆者は考え込んでしまった。「青春の嵐」などおという言葉では片付けることができないのである。
 1779年に作曲された「交響曲第33番」は最近よく演奏される様になった。この時代の最も優れた交響曲の中の一つであり、イタリアの輝かしい太陽、そしてブッフォの精神がここにある。ここでレヴァインは、全身で喜びを表し踊るような音楽を作り上げている。一じんの風がさあーっと過ぎ去った様な爽快感とはまさにこの様な演奏を云うのではないだろうか。
 モーツァルトの後期6大交響曲になると実に数多いCDが発売され、どの指揮者を選ぶか、筆者も評論家諸氏の記した紹介や批評を読んで買ったものである。初期や中期の交響曲はコンサートでも滅多に演奏されることがなく、聴く機会は少ないが、6大交響曲となると別である。もう、耳ひたこができるくらいに聴いた方も多いような気がする。レヴァインのモーツァルトの初期、中期の交響曲を感心して聴いたが、後期の交響曲でもそれぞれの曲を把握した確固とした表現をとり、最上質の演奏になっている。
 交響曲第35番「ハフナー」。同じウィーン・フィルを振ったバーンスタインとレヴァインを聴き比べてみるのも一興だ。バーンスタインの場合はオーケストラを鳴らしすぎ、ベートーベン風になっており、非常に力強い。それに対してレヴァインは必要以上に力を込めたり、表面を華やかに装うことはなく、ワルターと同様に温かく包み込むような演奏である。第3楽章のメヌエットがやや重々しく、推進力に欠けているのが残念。
 「交響曲第36番(リンツ)」はウィーン時代のモーツァルトの代表的な傑作であり、1783年の11月4日に初演された。レヴァインがウィーン・フィルを相手にモーツァルトを振ることを楽しんでいるのが伝わってくるかのような演奏である。レヴァインの「リンツ」はクーベリックやヨッフムの様な重厚さはないが、温かく、柔らかく、心ゆくまで歌わせている所が良い。第2楽章のアダージョが美しく洗練された響かせ方が印象に残り、ここでレヴァインはウィーン・フィルの自発的な演奏に任せ、要点だけを抑えて指揮しているかのような感じである。繊細で豊かなニュアンスは、ウィーン・フィルならではのものである。〈以下次号〉(藤村 貴彦)

第2巻「セレナード全集」(2) UCCP-4001〜6(CD6枚組)
 「セレナード全集」前月に続いての第2回(完結分)は第9、10、12、13番の4曲を紹介したい。
第9番 ニ長調 K.320「ポストホルン」、この曲はモーツァルトがザルツブルクから職を求めて旅に出、パリで同行していた母親を病気で亡くし、就職もうまく行かずザルツブルクで再び宮廷オルガニストとして過ごした失意の時代に作られた。ドイツの郵便局のマークとしても有名なポストホルンは、元々郵便馬車用のラッパでピストンもなく出せる音も自然倍音だけ、モーツァルトが何故この楽器を用いたかは謎の儘である。この曲を吹きこなすには相当の技術を必要とするので、当時ザルツブルクにポストホルンの名手が存在したことは事実と考えられる。この曲に於けるポストホルン活躍の場である第6楽章メヌエットの第2トリオを聴いてみると、名手、マイケル・レアードの素朴で柔らかい音色が楽しめる。
マリナー指揮、アカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズの颯爽としたモーツァルトは一服の清涼剤的な効果を聴く人に与える。
第10番 変ロ長調 K.361(370a)「グラン・パルティータ」、この曲はオーボエ、クラリネット、バセット・ホルン、ファゴットが2本づつ、ホルン4本、それとコントラバスという13人の奏者で演奏するため、別名「13管楽器のためのセレナード」とも呼ばれる7楽章からなる壮大な曲。そして第11番K.375、第12番K.388と共にディヴェルティメントを含む管楽器の為のアンサンブル曲の中でも頂点に位置する曲である。現在この曲はモーツァルトがコンスタンツェと結婚した際に彼女に贈った、とする説が定着している。実際に聴いてみても、第1楽章の厳かなムードから始まる曲全体に織りなす音の感触は、まさにしあわせ溢れるモーツァルトの胸中を表している。
アカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズの達者なそして輝きを持った演奏を、モーツァルトが聴いたとしたら、当然のことながら喝采を叫んだろう。
第12番 ハ短調 K.388(384a)「ナハトムジーク」、この曲は4楽章から成るが、パーティ音楽からは遙かかけ離れた強烈な暗さと悲劇性を感じるモティーフで開始される。モーツァルトは短調で吹いたときの木管独特の陰鬱な音色を充分すぎるほどあらわに聴かせる。変ホ長調の第2楽章は大変美しい楽章だが、必ずしも陽気にはなり得ない。続く2つの楽章も短調で曲全体としては悲壮感に満ちているが、終楽章のコーダでハ長調に転調し始めての明るさを感じる。しかしこの時期に作られた多くの傑作の中でも、特にこのセレナードは力作の誉れが高い。
 ここでは採り上げなかった第11番変ホ長調とこの第12番ハ短調の演奏はオーボエの第一人者、ハインツ・ホリガーが主宰している「ホリガー・ウィンド・アンサンブル」メンバーに依るもので、室内楽奏者としてのホリガーの真価がここに現れている。
第13番 ト長調 K.525「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」、モーツァルトの「セレナード」といえばこの曲を指している位有名な「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」は、モーツァルトが作曲したセレナードの最後に位置する優雅な美しさに充ち満ちた弦楽合奏の曲である。特にこの第2楽章ロマンスは神からの授かりものと言っても過言ではない美しさを持っている。しかしこの曲は誰が頼んだものか、そして何のために演奏する曲だったのかが分かっていないミステリアスな部分があり、尚かつモーツァルト自身が記録に残しているもう一つのメヌエットが行方不明となり、現在は4つの楽章になっている。だがそんなことはどうでもいい位、内容的には完成された曲なのである。
 ここでもマリナー指揮、アカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズは清々しいモーツァルトを聴かせてくれる。マリナーという指揮者は、曲によってTPOを実に良く心得た演奏をする。一般的にイギリスの演奏家のモーツァルトは流麗で癖がない。聴く方としても自然にモーツァルトが耳から入って体内を駆け抜けるかの様な爽やかさを持っていることは確かだ。〈この項完結〉(廣兼 正明)

第3巻「ディヴェルティメント全集」(1) UCCP-4007〜14(CD8枚組)
 
モーツァルトはディヴェルティメント、セレナード、カッサシオン、ノットゥールノ、ナハトムジークなどの名の音楽を多数作曲した。これらの音楽の形式や内容については、一般に区分はなく、モーツァルトもいろいろな音楽を混合して使っている。作曲の動機と目的は大司教宮廷の食卓音楽として、貴族の命名日や誕生日、その他祝典的な夜会の為のもので、それらは総称して「機会音楽」と呼ばれている。内容は明るくて分かりやすく、交響曲がえりを正して聴く真面目な音楽であれば、セレナードの類いは気楽に聴く、社交的な娯楽向きの実用音楽。ディヴェルメントは名曲が多い割に、コンサートでは演奏される事があまりなく、聴き手も18世紀末の貴族の様な気分になってこれらの実用音楽を楽しんでもらいたい。筆者もモーツァルトのセレナードを聴きながら、ワインを飲む事はこの上ない至福の一時だからである。
 ディヴェルメントの形式はかなり自由で3楽章から7楽章のものもあり、楽器編成も管弦楽や弦楽合奏、管楽器だけの編成もある。特徴のある作品と印象に残った演奏を紹介しておこう。
 ディベルメト第5番 ハ長調 K.187は、トランペットとティンパニの編成で1776年作。2本のフルートが主要旋律を吹き、5本のトランペットが力強い和声的な色彩を持って伴奏をし、ティンパニが祭り気分を駆り立てる。エルガー・ハリース指揮、フィリップ・ジョーンズ・ブラス・アンサンブルの演奏はまず音が美しい。腕達者な管楽器の名手をそろえているだけに、ティンパニを中心に、フルート、トランペト奏者が自分に与えられた役割に専心して、充実した気力と輝きをもって音楽を進めている。
 ディヴェルティメント第11番 ニ短調 K.251は1776年、姉ナンネルの第25回の誕生日(7月26日を祝って作曲されたもので、楽器編成はオーボエ1、ホルン2、弦4部でいわゆる「ナンネル七重奏曲」と呼ばれている。全体は6つの楽章から成り、アダージョのようなゆったりした楽章はなく、すべては軽快に流れてゆく。アカデミー室内アンサンブルの演奏は愉悦感に溢れ、どの楽章もきびきびしており、テンポが実に良い。緻密なアンサンブルであり、ディヴェルティノス演奏のひとつの理想像といっても過言ではないと思う。〈以下次号〉(藤村 貴彦)

第6巻「ヴァイオリン協奏曲全集」(2) UCCG4015〜8(CD4枚組)
 CD-2(UCCG-4016)には、クレーメルとアーノンクール&VPOによる第4番K.218、第5番K.219、パールマンとレヴァイン&VPOによるアダージョK.261、ロンドK269、ロンドK.373 が収められている。いずれも素晴らしい名演だ。第4番ではクレーメルの鮮鋭かつ引き締まった表情が魅力。第5番は一層変化に富んだ演奏で、モーツァルトの美質を伝えている。一方パールマンも、心に染みとおるような音と表現で、モーツァルトの美しさを堪能させてくれる。
 CD-3(UCCG-4017)には、第6番K.268、第7番K.271aを収録。これらは自筆譜が失われ、伝承も曖昧なため、現在では第6番は、偽作及び疑わしい作品の部に入れられ、第7番は、他人の手が入ったものと見做される。演奏しているのは藤川真弓とヴァルター・ヴェラー指揮ロイヤル・フィル。藤川は桐朋学園を経て、ベルギーに学び、コーガンやシェリングの薫陶も受け、ロンドンを本拠に活躍するヴァイオリニスト。この録音でも、高度な技巧と豊かな音楽性を多彩に発揮。〈以下次号〉(横堀 朱美)

第14巻「ピアノ小品、4手のための作品、オルガン作品全集」(2) UCCP-4042〜50(CD9枚組)
 初回に引き続いて今回は〔ピアノのための変奏曲集〕が集められた2枚のCDを採り上げたい。
 CD2 (UCCP-4043) は、5曲の変奏曲が収録されているが、ふだんあまり演奏されることのない作品が多いので、特別な研究者以外の方には新鮮に響くことだろう。別に〈小曲〉を集めたわけではなく、「フィッシャーのメヌエットによる12の変奏曲」k.179は350小節の雄大なスケールの堂々たる作品。両手を上手に交差させたり装飾音の難しさなど、演奏するのは楽ではないから、このCDのように清楚で正確な演奏で味わえるのは便利だろう。「〈リゾンは眠った〉による9つの変奏曲」k.264も15分を超える長い曲だが、それと対照的にピアノを本格的に習った人なら誰でも弾ける。だがこのCDのように、肩の力を抜いて軽やかに無理なく運ぶのは容易ではない。「サリエリの主題による6つの変奏曲」K.180は、例のモーツァルトとサリエリをめぐる風説を吹きとばすような快適な作品で、演奏も見事。どの曲もイングリット・ヘブラーが正統的で、理想に近い好演を聴かせる。
 CD3 (UCCP-4044)は、4曲の変奏曲が収録されているが、こちらは有名な作品ぞろいだ。まず「〈ママ、聞いてよね〉による12の変奏曲」k.265。このCDでは「何から語ろうかしら、お母さん」と題されているが、要するに〈キラキラ星〉の変奏曲。このCDもすべてヘブラーの演奏だが、念入りに弾いているのに、少しも重苦しくならず、窮屈にもならない。ピアノを習っている人のお手本にしてもよさそうだ。「グレトリーの行進曲による8つの変奏曲」K.352は、優雅な変奏曲の優雅な演奏。「〈美しいフランソワーズ〉による12の変奏曲」K.353は、聴かせ上手な本格的変奏曲で、名ピアニストならではの卓越した表現が楽しめる。「〈私はランドール〉による12の変奏曲」k.354は、20分ちかくかかる大きな曲だが、悪達者にならないところがヘブラーの奥ゆかしさで、自然な呼吸で無理なく弾き上げている。このCD、長い年月、繰り返し聞いても飽きることはないだろう。〈以下次号〉(青澤 唯夫)

第16巻 「中期イタリア語オペラ」UCCG4056〜64(CD9枚組)
 名作「イドメネオ」を含む、モーツァルト18歳から27歳までの5作である。この巻で大切なのは、イタリア語オペラだがここからモーツァルトはイタリアと訣別し、彼の個性を如実に示し始めたことにある。ザルツブルクを拠点にミュンヘンの依頼で作曲するなど、そしてさらに途中、ドイツ語オペラ「後宮からの誘拐」(第18巻所収)を作るように、一皮剥ける姿が特徴だ。
 最後の2作はザルツブルクの宮廷と訣別したばかりの未完のブッファである。しかも1つは台本がダ・ポンテ作と考えられており、だとすれば二人の最初の仕事にあたる。貴族を笑いの対象にするモーツァルトのブッファの姿勢が読み取れる。オペラ作曲家モーツァルトの個性の芽生えといえるだろう。
「にせの女庭師」K.196。ハーガー指揮、ザルツブルク・モーツァルテウム管弦楽団、1980年録音。作曲者18歳のブッファ表現を、E・d・チェーザレの歌う市長、J・コンウェルのサンドリーナ、T・モーザーの伯爵らが見事に展開する。第1幕ナルドのカヴァティーナに後のツェルリーナのアリアが顔をのぞかせたり、第2幕アルミンダやナルドのアリアに、モーツァルトのすっかり大人びた手法が表現されたりする。その音楽は、成人モーツァルトを知れば知るほど興味深い。
 「羊飼いの王様」K.208。ハーガー指揮、ザルツブルク・モーツァルテウム管弦楽団、1974年録音。P・シュライヤーが大王を、E・マティスがアミンタを、その恋人役をA・オジェーが歌う。モーツァルトは、必ずしも成功しているとはいえないが、アリアでしきりにコロラトゥーラにこだわりを見せる。またマティスとオジェーの二重唱は聴きどころ。オーケストラは木管、金管のふくよかな響きで、10代終わりのモーツァルトの巧みな腕前を表現する。
「クレタの王のイドメネオ」K.366。序曲からモーツァルト固有の響き、構成感を繰り出す名曲オペラ。パヴァロッティ、バルツァ、ポップ、グルベローヴァ、ヌッチら豪華キャスト。1983年録音。山路芳久も歌う。プリッチャード指揮、ウィーン・フィルは弾みある音楽を聴かせ、層の厚い合唱団が24歳の、すっかり成人したモーツァルトのセリアをタップリ聴かせる。押しも押されもせぬオペラ作曲家として成長した姿が力強く描かれる。
「カイロの鵞鳥」K.422。シュライヤー指揮、C.P.E.バッハ室内管 男声にフィッシャー=ディースカウ、シュライアー、女声はE・ヴィーンス、コバーンら。1990年録音。第1幕のみで序曲はない。この作品でモーツァルトはこれまでにないほどセッコに執着する姿勢を見せる。第3曲アリアと三重唱など、後のスザンナとフィガロに伯爵を交えた滑稽さが滲み出る。圧巻は8部構成の第6曲フィナーレだ。ソリスト7人と合唱の掛け合いが13分以上に及ぶ。
「騙された花婿」K.430。コリン・デイヴィス指揮、ロンドン交響楽団 1975年録音。台本ダ・ポンテ? 序曲に4曲のアリアと重唱のみの20分ほどの作品。レチタティーヴォはない。そのうち2つのアリアはE・スミスの補完・編曲によるものである。ソリストはソプラノがF・パーマーとI・コツルバス、テノールがA・R・ジョンソンとR・ティアー、そしてバリトンのC・グラント。「カイロの鵞鳥」と同時期に手掛けた27歳の作品。第1幕の第1、第3、第4、第9場のみである。第1場が四重唱なので、貴族の婚約者を友人たちがよってたかってコケにする様がモーツァルトの熟達した筆により伝わる。「フィガロの結婚」と距離の近いことがうかがえる。〈この項完結〉(宮沢 昭男)

◇その他のモーツァルト
「モーツァルト:クラリネット協奏曲、クラリネット五重奏曲、他/エマ・ジョンソン(クラリネット、バセット・クラリネットと指揮)ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団、コン・テンポ弦楽四重奏団」(ユニバーサル ミュージック/UCCS-1085)
30年前に天才少女ともてはやされたエマも今や40歳となった。新しく録音されたクラリネット協奏曲は21年目の再録音であり、その他にクラリネット五重奏曲、「魔笛」からパパゲーノの、「フィガロの結婚」からケルビーノの共に有名なアリア、最後に「アヴェ・ヴェルム・コルプス」か入っており、協奏曲と五重奏曲にはバセット・クラリネットを用いている。エマの演奏は音も解釈も可成り個性的と言えるもので、3月度に紹介したレジナルド・ケルの品格のあるイギリス風な演奏に較べて、女性らしくない骨太でどちらかというと粗野な感が強い。(廣兼 正明)

「モーツァルト:ピアノ三重奏曲集、K.502、542、548/アンネ・ゾフィー・ムター(ヴァイオリン)、アンドレ・プレヴィン(ピアノ)、ダニエル・ミュラー=ショット」(ユニバーサル ミュージック/UCCG-1285)
昨年10月新譜「ヴァイオリン協奏曲全集」に続く今回発売の「ピアノ三重奏曲」は、ムターの2005〜2006年にかけてのモーツァルト生誕250年録音プロジェクトの一つである。録音の時期としては三重奏曲の方が2ケ月早い。例によってモーツァルトのヴァイオリン・ソナタやピアノ・トリオはピアノに主体性があることは否めない。チェロなどは後の作曲家の作品に較べて活躍の場が殆ど与えられていない。プレヴィンのピアノ、ミュラー=ショットのチェロもなかなか上質のアンサンブル・プレイヤーと言えるが、このところのムターの演奏はそれ以上に素晴らしい。どんな些細なパッセージでもそこに音楽の命を注ぎ込んでしまう。これは最後に収録されている変ロ長調、K.502の第1楽章などを聴かれれば納得されることと思う。(廣兼 正明)

「モーツァルト・イン・ジャズ/レイ・ケネディ・トリオ」(スイング・ブロス/CMSB-28007)
 モーツァルト生誕250周年を記念しての企画。レイは49歳のベテラン・ピアニスト。トリオをひきいてモーツァルトの有名曲「トルコ行進曲」「哀しみのシンフォニー」など11曲をスインギーに、またうっとりとするバラードとしてあざやかにジャズ化してみせる。モーツァルトの軽快さと優美さとシンプルな魅力を存分に生かしており、モーツァルトとジャズの相乗作用が生んだ快作だ。(岩浪 洋三)

◇モーツァルト関連イヴェント&オペラ、コンサート

■イヴェント
「熱狂の日音楽祭(ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン)、モーツァルトと仲間たち」(5月3日〜6日、東京国際フォーラム)
東京国際フォーラムを舞台に、GWの連休中、朝から晩まで行われるクラシックの祭典、「熱狂の日」音楽祭の第2回目。今年のテーマはモーツァルト。 
http://www.t-i-forum.co.jp

「ザルツブルク音楽祭」
モーツァルトの本家本元といえるザルツルブルク音楽祭では、モーツァルトの劇音楽作品22作を一挙上演する。
http://www.salzburgfestival.at/

■オペラ公演
*6月
メトロポリタン歌劇場公演「ドン・ジョヴァンニ」
 
問い合わせ ジャパンアーツ http://www.japanarts.co.jp/

プラハ室内か劇場公演「フィガロの結婚」「魔笛」
問い合わせ プロ・アルテ・ムジケ http://www.proarte.co.jp

*7月
モーツァルト劇場公演「アポロとヒュアキントス」
 
問い合わせ http://www.mozart.gr.jp/

*9月
東京二期会オペラ劇場「フィガロの結婚」
 
問い合わせ 二期会 http://www/nikikai-opera.or.jp/

錦織健プロデュース・オペラ「ドン・ジョヴァンニ」 
問い合わせ ジャパンアーツ http://www.japanarts.co.jp

11月
東京二期会オペラ公演「コジ・ファン・トウッテ」
 
問い合わせ 二期会 http://www.nikikai-opera.or.jp/

12月
ポーランド国立ワルシャワ室内歌劇場公演
「後宮からの誘拐」「フィガロの結婚」「ドン・ジョヴァンニ」「コジ・ファン・トウッテ」「魔笛」「皇帝ティトの慈悲」
 
問い合わせ 光藍社 http://koransha.com/

■コンサート
5月
アンサンブル・ウィーン・ベルリン 

問い合わせ カジモト・イープラス http://www.kajimotomusic.com/

寺神戸亮&レ・ボレアード 
問い合わせ トッパンホール http://www.toppanhall.com/

アンドレアス・シュタイアー(フォルテピアノ) 
問い合わせ トッパンホール http://www.toppanhall.com/

アルバン・ベルク弦楽四重奏団
問い合わせ トッパンホール http://www.toppanhall.com/

6月
イングリット・ヘブラー(ピアノ)
 
問い合わせ カジモト・イープラス http://www.kajimotomusic.com/

10月
マーラー・チェンバー・オーケストラ
 
問い合わせ カジモト・イープラス http://www.kajimotomusic.com/

11月
ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス
 
問い合わせ カジモト・イープラス http://www.kajimotomusic.com/

■モーツァルト関連書籍
堀内修「モーツァルトのオペラ」(平凡社新書)

モーツァルトの全オペラ22曲を解説した初めての本。読みやすく内容も豊富。

加藤浩子「モーツァルト 愛の名曲20選(CDブック)」(春秋社)
「愛」というテーマに絞った名曲を集めたCDつきの入門書。さまざまなエピソードを盛り込み、人間モーツァルトに迫る

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