2015年7月 

第27回ミュージック・ペンクラブ・ジャパン音楽賞授賞式
さる4月8日にミュージック・ペンクラブ・ジャパン音楽賞の授与式が行われ、クラシック、ポピュラー、オーディオ三部門の前年度受賞者が会場の文京シビックセンタースカイホールで一堂に会し喜びを分かち合った。受賞者のスピーチを紹介する。

●クラシック部門

独奏独唱部門

「イリーナ・メジューエワ」

イリーナ・メジューエワ 様

こんにちは。ピアニストのイリーナ・メジューエワです。この度はこのような素晴らしい賞を頂き、光栄に思います。ありがとうございます。私は18年前に日本に参りました。日本国内でコンサートやCD録音等音楽活動をして参りました。特別なことは何もしていません。しかし今までの活動を認めていただき大変有り難く嬉しく思います。今回特に嬉しかったのは、アウトリーチ活動が認められたことです。日本各地の小学校へ行き子供たちのために演奏をしています。子供たちはある意味一番厳しい聴衆です。大人は下手な演奏でも我慢して聴きますが子供は聴いてくれません。逆に手応えのある聴衆です。演奏が上手くいくと集中して聴いてくれます。鏡のような存在で私にとってやりがいのある仕事です。これからもアウトリーチ活動は続けていきたいと思います。コンサートやCDにも取り組んで参ります。これからもよろしくお願いいたします。

室内楽合唱部門

「ヴォーカル・アンサンブル カペラ」

ヴォーカル・アンサンブル カペラ 音楽監督 花井哲郎 様


フォンス・フローリス 斉藤基史 様

グレゴリオ聖歌、ルネサンス主にフランドル楽派の宗教曲をアカペラの8人で歌う活動をずっと進めて参りました。地味な活動に注目いただき栄誉ある賞を賜り感謝しております。有難うございます。他に手掛ける方がいないので注目していただいたと思います。合唱団等でこうしたレパートリーを取り上げる方はおりますがアマチュアの愛好家の方々でプロフェッショナルな声楽家がこの活動を続けてきたのは大変なことで他に例がありません。私達もちょうど18年目です。その間にCDも発売し現在録音を終了し発売を待つタイトルがあります。1500年前後に活躍したジョスカン・デ・プレという素晴らしい人のミサ曲(全曲)を年内に発売すべく録音が終わっていますので制作作業中です。それが完成すると世界初のジョスカン・デ・プレ・ミサ曲全集になります。東京五輪の翌年2021年はデ・プレ没500年になります。それを目標に私たちはこれから活動を続けて参ります。今後ともよろしくお願いします。

オペラ・オーケストラ部門

「京都市交響楽団」

京都市交響楽団 音楽主幹 岡田慎司 様

本日は歴史ある会の確かな耳をお持ちの方々にご評価を頂き受賞にいたりましたことを光栄にまた嬉しく思います。京都市交響楽団は来年創立60周年を迎えます。この6月から18年ぶりになる海外公演をヨーロッパで予定しております。特別好演を企画している今大変励みになる受賞であり、特に今回は私どもが度々出演しております琵琶湖ホールのオペラ公演コルンゴルド「死の都」にも高い評価を頂きました。先月、沼尻竜典さんの指揮でヴェルディ「オテロ」を公演いたしました。たまたま受賞の報せの後でしたので会場にて受賞について出演者とスタッフにご報告いたしました。皆さん大変お喜びでした。関係者が一致団結した上での受賞と受けとめています。最後に常任指揮者の広上淳一から皆様にくれぐれも御礼を、ということでしたので私の言葉をもちまして代えさせていただきます。授賞ありがとうございました。

現代音楽部門

「読売日本交響楽団」

公益財団法人 読売日本交響楽団 事務局長 飯田政之 様

同事務局 大久保広晴 様

読響の常任理事、事務局長の飯田と申します。今回は栄えある音楽賞を頂きまして誠に光栄です。賞を頂く機会が少なく、ペンクラブ会員の皆様に感謝の気持ちで一杯です。今ご紹介の曲目は私にとってもものすごく衝撃的でした。カレル・フサの日本初演・演奏会は9月16日でした。終演後何人ものお客様から「演奏は録音していないの?」とか「凄い演奏だったね。」とか熱い反応が相次ぎました。私も現代音楽でこんなに感動したことがなくて当初は「このプログラム大丈夫?」と半信半疑だったのですが、ご満足いただけたのかなと確信を深めて参りました。もう一つ酒井健治さんのブルーコンチェルト(世界初演)は、私ども三月に12年ぶりの欧州公演でもメシアンのトゥーランガリラ交響曲と一緒に演奏しました。この曲にヨーロッパの聴衆から熱い拍手が送られました。大成功だったと思っています。現代曲だとなかなかお客様が入らないというのは事実だと思いますが、9月16日の定期演奏会は有料入場率が78%で12月4日の定期(ブルーコンチェルト世界初演)でしたが81%と予想を上回る関心度でした。これからどんどん現代曲をやりますとまでは申しませんが、(笑)意欲的に取り組んでまいります。ちなみに今月四月には現代のドイツを代表する作曲家ヴォルフガング・リームの「厳粛な歌」という作品を歌曲付として日本初上演いたします。果敢なプログラムで今後も挑戦して参ります。よろしくお願いいたします。

研究評論部門

「山田耕筰—作るのではなく生む/後藤 暢子・著」(ミネルヴァ書房 刊)

後藤暢子 様

 
後藤暢子と申します。今年は戦後七十年、が頻りに言われております。ふと気が付くと作曲家山田耕筰の没後五十年でもありました。明治の末年から四年ほどベルリンに留学、帰国後は日本における西洋音楽の初代作曲家として精力的な活動を展開して参ります。例えば日本発のプロオーケストラを組織して定期演奏会を開きます。三木露風や北原白秋ら詩人達とよくご存知の「赤とんぼ」や「からたちの花」などを沢山作ります。しかし、第二次世界大戦が始まり日本音楽文化協会の会長に就任し中央集権的に日本全国の音楽家に管掌する立場になります。顧みますと戦争協力者だったのですが、それにも関わらず戦後になると音楽家として初めて文化勲章を受賞しています。激しく動いた時代の中にあって波に乗り振幅の大きな人生を送った音楽家だったと思います。数年前にミネルヴァ書房から評伝を書かないかというお話を頂き、書きたいし誰かが書き残した方がいいのではないかと思いました。山田耕筰の弟子にもずいぶん会ってまいりました。その方達から興味深いお話も聴きました。山田耕筰は借金が上手で、貸したほうが返してくれなくてもいい気持ちになってしまうのだそうです。これは評伝には書きませんでした。(笑)去年夏に一冊出版していただきどのように受け止められるか心配だったのですが、ミュージックペンクラブに評価していただき何はともあれ安心したというのが今日の本心です。これからも仕事を続けてまいります。どうぞよろしくお願いします。


(株)ミネルヴァ書房 代表取締役社長 杉田啓三 様

ミネルヴァ書房の杉田でございます。音楽と無縁の出版社がこのような素晴らしい賞を頂き嬉しく思います。後藤先生のおかげであります。さきほどご紹介ありましたように古代から現代まで現在400人以上の日本の歴史的人物についての詳細な評伝を書く企画です。去年でちょうど十年の節目となる一冊として受賞作を刊行いたしました。音楽分野についての評伝が数年前にありました。「吉田正」でした。これから武満徹と古賀政男が執筆刊行予定リストに入っています。私は歌うことは下手ですが音楽は好きです。山田耕筰は関学の出で「赤とんぼ」の三木露風も関西人です。私も神戸の出身で身近に思えてなりません。ミネルヴァ書房は専門書の出版社で五百ページもある本ばかりです。皆様が書店に行かれた節は枕を買う気持ちで手に取っていただきたいと思います。本日はありがとうございました。

特別賞

「吉村 溪」

吉村知子 様

この度はありがとうございました。受賞の知らせを頂き多くの方が活躍されたこの年に夫が受賞してよろしいのだろうかという思いが私の中にありました。皆様が夫自身や夫の書き著したものを思い続けてくださる賜物の特別賞と受け止めています。その重みを受け止め深く感謝いたします。ありがとうございました。

功労賞

「遠山 一行」

遠山慶子 様


本日は皆様からこのような賞を頂くことが出来まして本人が居りませんが、吉村様の奥様と同じに、これから世の中の役に立つことの出来なくなった人ですので賞をいただくのはどうなのかと思いましたが、主人に供えて皆様からいただいたことを一緒に喜びたいとおもいます。生きておりましたころは忙しくて寝る暇もないほど働いておりました。誰かが種を蒔かなくてはという思いから一生懸命種まきをしておりました。私欲というもののまったくない人で私が三年五ヶ月傍らで看病して過ごしたことで初めて主人の傍にいることが出来て、何かの賜物と思っています。92歳という年齢で半身と言語中枢が麻痺しましたが私の話が分かりましたので頷いたり笑ったりしました。天井をずっと向いていて面白いことでもあるの、と聞くと色々考えることがあって退屈しないのさ、と申しておりました。幸せな一生だったと思います。皆様にこれからも遠山を思い出し故人が一生懸命書きました作品をお読みいただきたいと願います。本当にありがとうございました。

●ポピュラー部門

録音・録画作品賞(日本人アーティスト)

「サムシン・ブルー/山中 千尋」
ユニバーサルミュージック合同会社(UCCQ-1016)

ユニバーサルミュージック合同会社 
クラシックス&ジャズ ジャズ・グループ 五十貝 一 様


本来ならば山中が伺います所、現在全米ツアー中で私が代理で伺いました。「サムシング・ブルー」というアルバムはジャズの名門レーベルであるブルーノートの75周年を記念して制作されました。もし山中がブルーノートのモダンジャズのアーティストだったらこんなアルバムを作っただろうというと想像して演奏しました。山中は大変多忙で今年の七月に今度はラグタイムを題材にしたアルバムを発表します。その山中からJFKエアポートからメッセージが届きましたので読み上げます。
「この度は名誉ある賞を頂き、大変嬉しく光栄に存じます。誠にありがとうございました。審査員皆様のご拝聴を賜りましたことを心から御礼申し上げます。ケンドリック・スコット、ジェリール・ショー、ベニー・バナック三世、脇義典さんという超一流のミュージシャンの実力、スタッフの尽力が素晴らしい成果に導いてくれました。お一人お一人への感謝の気持ちで一杯です。これからもジャズを愛する人間として精進するつもりです。

録音・録画作品賞 (外国人アーティスト)

「チーク・トゥ・チーク/トニー・ベネット&レディー・ガガ」
ユニバーサルミュージック合同会社(UICS-1286)

ユニバーサルミュージック合同会社 ユニバーサル・インターナショナル 
タイアップ&スリーシクスティ・ビジネス 南場新太郎 様

「本日は名誉ある賞を頂きありがとうございます。ミュージックペンクラブの皆様に感謝申し上げます。本日代理で賞をお受け取りいたしますユニバーサルミュージックで洋楽を担当しております難波と申します。この作品は、トニー・ベネットというアメリカのショービズを代表する歌手とポップシーンを代表するレディ・ガガがスタンダードをカバーしたデュエットアルバムです。六十歳という年齢差があってジャンルとキャリアも違う二人がこのような作品を作ったことが幅広いリスナーの心を捉え、言葉の壁を越えて世界中のファンに受け入れられました。アルバムの発売直前にレディ・ガガに会う機会がありました。奇抜で派手なアーティストとして知られていますが、今回のアルバムは自分の派手な衣装や演出をとりはらって素の私の声を聴いてほしいのだ、と語っていました。
その後アルバムから数曲を聴かせてくれたのですが、聴いた瞬間、なんて素直でギミックのない音楽なんだろうと感じました。私が普段担当している洋楽は派手なポップミュージックですが、どんな世代が聴いても楽しめる音楽になっていました。
今年のグラミー賞もサム・スミスというシンガーソングライターが主要4部門を授賞することになりました。世界的にもいい音楽が受け入れられることを改めて実感しました。今回このような賞を頂いたことは会員の皆様のおかげであり、多くの人々に届いていくことを願います。これからもよろしくお願いします。」

コンサート・パフォーマンス賞(日本人部門)

「瀬川 昌久 Presents JAZZ I LOVE」(6/17 渋谷大和田伝承ホール)

瀬川昌久 様

私はかねてからジャズの一番大切なエッセンスである即興演奏はチャーリー・パーカー以降のビバップに始まる、という偏見が日本に根付いていることを残念に思っていました。即興演奏の始まりは1920年代のルイ・アームストロングであることをぜひ知ってほしいと願ってきました。日本のサッチモである外山喜雄さんとデキシー・セインツの演奏によるパフォーマンスを日本ポピュラー音楽協会の事務局長である佐藤さんにお願いしコンサートを開催する運びになりました。幸い、日本の若い世代のトランペッターがニューオリンズへ勉強に行って共演する動きも出てきました。今後とも外山さんのバンドを始めとするディキシージャズの活動を皆様に応援していただけると幸いです。ありがとうございました。


外山喜雄 様

トランぺッターの外山と申します。デキシー・セインツというバンドのリーダーを努めております。ルイ・アームストロングが大好きで日本ルイ・アームストロング協会を二十年やっております。五十年近く前にルイに会いました。楽屋をノックしたらあのグルルという声が聞こえ、楽屋でトランペットを吹かせてもらいました。その後家内とニューオリンズで五年間生活しました。以来、ニューオリンズジャズや古いジャズが大好きです。ニューオリンズという街がジャズのスウィング感を生み出しました。そのことを訴えたいと思っていましたところ、瀬川先生が同じ趣旨のコンサートを企画され、お手伝いが出来ましてしかもこういう栄えある場所に立つことが出来、嬉しく思います。ありがとうございます。

コンサート・パフォーマンス賞(外国人部門)

「14 On Fire Japan Tour/ザ・ローリング・ストーンズ」(2月 東京ドーム)

株式会社 キョードー東京  社長室室長 水上喜由 様


キョードー東京の水上と申します。ご承知の通り、ザ・ローリング・ストーンズは七十代のメンバーで構成されているロッックバンドですが、昨年大変パワフルなコンサートパフォーマンスを披露してくれました。私達も大変喜んだのですが、このオジサンたち少々元気過ぎまして、音が大き過ぎて(笑)東京ドーム周辺の住民の方にご迷惑を掛けたのが反省点でありました。昨年、体調不良で七公演全てがキャンセルになったポール・マッカートニーがもうすぐ東京ドームへ帰ってまいります。ここでも騒音の問題が起きるといけませんのでアーティストと入念な事前話し合いを致しました。契約書に100デシベル以下にするという特記項目を加えようかと真剣に検討致しました位です。(笑)
創立者の長島ら諸先輩の精神に則りこれからも世界レベルの音楽のライブエンターテインメントを提供し続けたいと思います。本日はありがとうございました。

ブライテスト・ホープ賞

「ムーン・リバー/飯田 さつき」

飯田さつき 様


皆様こんにちは。今日はとても寒い日で春なのに都心で雪が観測されるという特別な日にこのような素晴らしい賞を頂くことが出来まして記念すべき一日になりました。まだまだこれからの歌手ですが、四年前に若い人にスタンダードジャズを広めたい思いでデビューCDを発売しました。今回のセカンドアルバム「ムーン・リバー」もニューヨークで録音したスタンダード集で二作品ともピアニストの宮本貴奈さんにサウンドプロデューサー、アレンジすべてお任せしました。一人では取れなかった賞だと思います。宮本さんの協力的なサポートと、今日おいでになっておりますが、ピーコックレコードの今野社長、素敵なライナーノーツを書いてくださった長門さん、そして歌を歌うことを教えてくれた両親、支えてくれる方々すべてに感謝をいたします。27回の今回、瀬川昌久先生と同時に受賞したことにご縁を感じます。ファーストアルバム発売の折に瀬川先生と故岩浪洋三先生に記者会見を開いていただいたご恩があります。デビュー以来応援していただいていまでもつながっています。クラブジャズとかスムーズジャズとか世にいわれておりますが、私はスタンダードジャズを愛しております。往年のジャズファンがこれだなあと思う伝統的な音楽をこれからも歌い続けてまいります。ありがとうございました。


宮本貴奈 様

みなさん、こんにちは。ピアニストの宮本貴奈です。今日私はさつきさんのおめでたい瞬間を応援しに来たのですが、登壇することになりまして少々驚いています。さつきさん素晴らしい賞を受賞されておめでとうございます。この作品は第一作は私が十年間済んでいたアトランタに続きまして四年間活動したニューヨークで信頼しているジャズの仲間たちと和気藹々と演奏して作りました。さつきさんは若い世代に珍しく古き良きジャズスタンダードを直球勝負で伝える貴重な存在です。受賞をきっかけにさらに飛翔していただけたらと思います。そしてさつきさんの活動を四六時中支えているお母様でマネジャーの飯田  様、音楽への愛を与えた飯田ジャズスクール学院長の飯田敏彦先生、飯田ファミリー全員の今回の受賞と思います。おめでとうございます。

企画・著作出版物賞

「ライヴ・イン・ジャパン」コレクション 1966-1993/鈴木 道子・編」
(河出書房新社)

鈴木道子 様


鈴木でございます。私の地下室から魔法のように出来上がった本に思えます。というのは昔からコンサートにずっと通っておりました。毎回コンサートの度にプログラムを買っていてそれが地下室に山のように溜まっておりましたのを、本にしたらどうかという案を出してくれた方が居りました。今日会場にお見えになっている根本隆一郎、明子様ご夫妻でお二人のコーディネートにより河出書房新社の武田さんの担当で本になりました。私にとりまして夢のような出来事です。私の名で本になっておりますが、野口(久光)先生、福田(一郎)先生、青木(啓)先生ら今は亡き先輩方が達筆を揮っておられる文章が沢山載っております。もちろん現役で活躍中の方々も熱を込めてアーティストへの思いを書いておられます。皆様がそれを使っていいと快諾してくださりこの本が出来ました。なぜザ・ビートルズの1966 年からマドンナの1993年までかについてお話いたします。昔のプログラムはアーティストへの熱い思いを書いた文章が載っています。ある時期からそれがなくなり写真集のようになってしまいました。マイケル・ジャクソンはぜひ登場してほしかったアーティストでしたがプログラムが写真ばかりなのでこの本に入っていません。約三分の一は原稿にしましたが本に収めることが出来ませんでした。「○○が入っていないじゃないか。」というお叱りが寄せられましたが、そういう事情ですのでお許しをいただきたいと思います。年代順に書きましたが、普通あまり載っていない(バック)ミュージシャンの名前が全部載っていたり、日本公演の全公演の日付が記録されているので資料としての価値があると思います。懐かしく読んでいただいても結構ですし、資料としても皆様に喜んでいただけたかなあと思います。賞を頂けて光栄に思います。皆様のご支援あってのことです。ありがとうございました。


河出書房新社 武田浩和 様

編集を担当しました武田と申します。鈴木さん所蔵の沢山のパンフレットを並べてどれがいいかと厳選しました。沢山の方が寄稿されておられて当時限られていた情報からミュージシャンの魅力を伝えるか書き手が競い合っているのが面白く、その温度感を本にパッケージ出来ればと思い、企画しました。先ほど鈴木さんが90年代になるとそういう文章が少なくなってきたとお話されていましたが、またここに来てストーンズにしてもポール・マッカートニーにしてもキャリアをどう閉じるかという総仕上げの時期にあって評伝を出したり出版活動が活発化しています。海外から版権の売り込みもあったり、
海外の音楽をどう伝えていくかという時期にありますので、これを契機に出版サイドで
音楽を伝えていきたいとおもいます。ありがとうございました。

特別賞

「フランキー・ヴァリ」

(株) ワーナー・ミュージック・ジャパン 
ストラテジック本部 宮治淳一 様


本来ならフランキー本人がニューヨークからやって参りまして賞を受け取ります所ですが、80歳と高齢であり、受賞にやって来られるなら是非コンサートをやってほしいと思うくらいであります。フランキー・ヴァリとフォーシーズンス、やっと日本でも名前が浸透して参りました。六十年におよぶキャリアがありますが、去年、今年とようやくポピュラーになり昔からのファンの私は喜んでいます。60年代、70年代のポピュラー音楽のファンの方はご存知と思いますが、50を越えるヒット曲があります。ザ・ビートルズが1964年にアメリカ上陸した時にアメリカの多くのアーティストが向かい討つべく奮闘しましたが、モータウンと共に唯一ブリティッシュ・インヴェイジョンと戦い得た存在でした。そして70年代も80年代も活躍を続けた希有なる存在ですが、残念ながら我が国では「シェリー」一曲しかヒット曲のないグループと思われていました。しかし、映画「ジャージー・ボーイズ」の公開、そして今年一月キョードー東京様の招聘になるコンサートの大成功で我々もアメリカ東海岸型エンターテインメントの本流を間近に味わえ素晴らしい体験をしました。ぜひともキョードー東京様には再来日を実現してもういちどあの感動を味わえたらと思います。何せご高齢でありますのでタイムリミットが迫っております。(笑)今日はありがとうございました。

功労賞

「伊藤 八十八」

伊藤妙子 様

故人の代理の伊藤妙子と申します。素晴らしい賞を頂戴し本当にありがとうございました。皆様の中には生前八十八がお世話になりました方が沢山居られます。伊藤に代わり心より御礼申し上げます。伊藤は昨年十一月に68歳でこの世を去るまでの四十数年間ジャズ一筋に走ってきた人でした。その間プロデュースに携わった作品が約400あるそうです。私は全てを聴いてはおりません。アマゾンとかでも購入できるかと思いますが枕にするには十枚位勝っていただかないといけませんが、私は伊藤の残した素晴らしい音とジャケットの作品たちを忘れてほしくない思いで会社エイティーエイトを引き継がせていただきました。私は知識も経験もありませんが頑張ってまいります。今年の七月の二十五、二十六日に軽井沢で第四回ジャズフェスティバルを開催いたします。よろしければ是非聴きにお越しください。本日は本当にありがとうございました。

オーディオ部門

「テクニクス C700シリーズ、R1シリーズ/デジタルアンプの新技術を
中心にしたシステムの開発」パナソニック株式会社

パナソニック株式会社 アプライアンス社
ホームエンターテインメント事業部 テクニクス事業推進室 小川理子 様

チーフエンジニア 井谷哲也 様


こんにちは、パナソニックでテクニクスを担当しております小川と申します。本日はこのような素晴らしい賞を頂きメンバー一同を代表し心より御礼申し上げます。今日はチーフエンジニアの井谷と二人で大阪より参りました。数十年前の新入社員の頃開発に加わったのがテクニクスでした。この度再び携わることが出来、去年ブランドが復活したばかりで皆様のご支援を賜り素晴らしい賞を授賞出来ましたことを光栄に思います。賞状の中に「ブランドの復活」という言葉がありました。テクニクスは1965年に誕生し今年で五十年になります。しかしオーディオを取り巻く環境がことに二千年前後に激変しハイファイオーディオの事業活動を一時期休止しておりました。しかし近年ネットワークオーディオのインフラネットがとみに充実し多様なオーディオの価値観をエンドユーザーの皆様が享受する時代になりパナソニックのデジタル技術を活かしずっと蓄積してきたオーディオのアコースティックな技術と融合させ新時代のオーディオをお届け出来るのでないかと考え、ほぼ二年前にボトムアップのプロジェクトで始まったのが新生テクニクスでした。急ピッチで開発を進め九月にベルリンのIFAで発表いたしました。そして一月に欧州ドイツとイギリスを中心に発売、日本国内ではついこの前二月に発売されました。生まれたての新生テクニクスでございます。昨年九月の発表前に今日会場にお見えの先生方に試聴して頂き貴重なご意見を頂きそれから数ヶ月間音質の詰めに従事しました。開発陣一同、冬休み年末年始もなく不眠不休で頑張って参りました。今日大阪に残してきました技術のメンバーも喜んでいることと思います。テクニクスのフィロソフィーは「世界中に音楽の感動をお届けする」ことです。その一心で頑張っております。今スマホの音源をイヤフォンで聴くばかりの若い人が増えています。そうした中いい音をもう一度思い出そう、皆様にお届けして自分たちも楽しもうという姿勢で取り組んでおります。ブランドメッセージ「リ・ディスカバー・ミュージック」を世界中に発信して参ります。今日は多種多様な形で音楽に携わっておられる方々がこの会場においでになっておられます。私もジャズを長年演奏して参りました。瀬川先生や外山ご夫妻、そして司会の横堀様とも何十年ぶりかにお会い出来て音楽で縁が広がっていくことを実感しております。素晴らしい音楽の世界といい音を提供出来るように尽力して参ります。これからもご支援のほどよろしくお願いします。

最優秀録音作品賞

「J.S.バッハ:教会カンタータ全集/鈴木 雅明指揮・
バッハ・コレギウム・ジャパン」(CD/SACD)
BIS/キングインターナショナル(KKC-8501~55)(全55枚)

株式会社キングインターナショナル 企画営業本部 クリエイティブルーム
清水雄一 様

この度は栄誉ある賞を頂戴出来ありがとうございました。キングインターナショナルの清水と申します。この企画を担当いたしました宮川に代わり私が受賞に参りました。指揮者の鈴木雅明、BIS社長ロベルト・フォン・バール始めこの企画に携わった関係者一同を代表して御礼を申し上げます。55枚という巻数で構成される巨大なプロジェクトで1995年の第一回リリースから2015年の完結まで足掛け二十年に渡る企画です。当初は通常のCDでの発売でしたが、28集からSACDハイブリッド盤での発売に変わりました。この度のボックス化にあたりしれまでの27枚もSACDハイブリッドで発売し直すようBIS社に働きかけリマスタを経てボックスが誕生しました。55枚が完結したばかりですがただいま「J.S.バッハ 世俗カンタータ全集」が進行中です。こちらは55枚まで行きませんが(笑)ご評価頂きますようお願い申し上げます。手短ではありますが御礼に代えさせていただきます。

最優秀著作出版物賞

「改訂増補/リスニングルームの音響学」石井 伸一郎、高橋 賢一共著
(誠文堂新光社)

石井伸一郎 様


この度はこのような名誉ある賞を頂きありがとうございます。先ほど「テクニクスの復活」というお話がありましたが、松下電器産業時代、テクニクス第一号機の小型ブックシェルフスピーカーシステムを設計し、テクニクスというブランドネームを考えた二人の内の一人が私でした。いくらいいスピーカーを作ってもそれを鳴らす部屋によってはとんでもなく悪い音になるということがあるのです。同じスピーカーをいい部屋で聴くとわぁ素晴らしいね、石井さんといわれるのに、別の部屋だと何ですかこれは、ヒドイ音、と全く同じスピーカーがぼろくそに言われることを度々経験しました。その原因は部屋(の伝送特性)にあるのですね。当時のオーディオ技術では原因を究明出来ませんでしたし、本当にいい部屋を作る技術もありませんでした。で、色々考えて1980年でしたが現在石井式と呼ばれている新しい方式を発表しましたが日本ではさっぱり評価されなかった。
しかしそれが何とアメリカで映画「スター・ウォーズ」の監督で有名なジョージ・ルーカスの録音スタジオのスカイウォーカー・ランチに石井式が応用されていることが分かりました。それを期に部屋の音の改善について発言しなければいけないと思ったのですが、当時のオーディオ業界はいい音の部屋でないといい音がしないなどと言おうものなら、それでは製品が売れなくなるじゃないか、部屋の話なんかするなと袋叩きにされる。(笑) それじゃあ、定年になり自由の身になってからやるしかないな、と思ったのです。いまからちょうど二十年前、定年退職を機に我が家のリスニングルームを世界一の音にしようを目標に個人で研究を始めました。当時のパソコンでは性能が悪くシミュレーションが出来ないので部屋の十分の一の模型を作り模型実験による研究を開始しました。その結果、部屋の定在波が悪さをしていることが分かり、部屋の寸法をある比率にすれば好結果(良好な伝送特性)が得られることが分かり、『MJ 無線と実験』に二年ほど連載をいたしました。それをまとめて出版されたのが最初の「リスニングルームの音響学」でした。この本はそれなりに評価されましたが、いい音の部屋を一から作ることにテーマを絞っていました。今日会場においでの日本オーディオ協会がデジタルホームシアター普及委員会を立ち上げ室内音響部門のワーキンググループを担当するよう申しつかりました。その理由は最初からいい音の部屋を作れるユーザーはそうはない、普通の部屋をいい音にする研究をしてくれということでした。それで普通の部屋の音響特性を改善する研究を共著の高橋さんと一緒に始めました。その成果をまとめたのが今回受賞したこの本「改定増補版」です。高橋さんが作ったソフトをフルに活用していますし、現在世界で最も進んだ研究と考えています。個人の環境と言う点で欧米でも我々の研究に比べられるものは発表されていません。これから世界へ向けて情報発信していきたいと高橋さんと話していた矢先に今回の受賞のお報せを頂き勇気百倍、全世界へいい音を普及させて行く活動をして参ります。いい音が出るようになるとオーディオ機器ばかりでなくソフトも売れます。そうなれば音楽家も潤うはずです。私の所へしょっちゅう大勢の方がお見えになりますが、いい音を聴かせるとそのソフトのタイトルを控えて帰ります。あとでその方の家へいくとそれを買っているケースが多いのです。ソフト産業を繁栄させるためには世界中がいい音で溢れるようにしないといかんと思っています。これからも研究をどんどん進める所存です。皆さん方のご指導をお願いしたいと思います。


高橋賢一 様

今日は授賞ありがとうございました。御礼申し上げます。いま石井さんがお話しましたがオーディオと音の分野は面白い現象が多く研究のテーマが無尽蔵にあります。研究を進めていい製品を提供して行きたいと思います。


株式会社誠文堂新光社 磯野貴志 様

石井さんがご紹介された私どもの雑誌『MJ無線と実験』 は昨年創刊九十周年を迎えました。NHKラジオ放送の前年からずっと音楽と音声を再生する装置の研究をしてまいりました。あと十年、百年を目指して石井、高橋先生のお力添えを頂きながら努力して参ります。有り難うございました。

特別賞

「世界初の鍛造連続結晶高純度無酸素銅 PC-Triple Cの開発に対して」
FCM株式会社

FCM株式会社京都事業所電気機能線事業部 顧問 芥田泰夫 様

(株)プロモーション・ワークス 代表取締役 矢口正幸 様


この度は歴史ある会の素晴らしい賞を頂きありがとうございました。私どもFCMは銅線メーカーです。その私どもが受賞いたしましたことを驚き、また有り難く思います。私どもは電線に加工してエネルギーや信号を流す銅線のメーカーです。一昨年大手の古河電工が代表的なオーディオ用高品位導体PC-OCCの製造を止めました。貴重な素材が市場から消えることを残念に思いましたが、それ以上にオーディオ業界の落胆が大きく、次世代のオーディオ用導体を開発してほしいという声が高まり、私どもFCMとオーディオ業界に詳しいプロモーションワークス様が協力し発奮して作り上げたのがPC-Triple-Cでした。開発にあたりあくまで銅線の結晶構造にこだわりました。PC-OCCまでは鋳造で行いましたが、今回我々の鍛造加工技術を活かし結晶構造を変えてみようと試みました。その結果長手構造に連続的に伸びる結晶構造の導体が完成、PC-Triple-Cと名付けました。今後ともオーディオに貢献出来るよう努めてまいります。本日はありがとうございました。

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