「プレイ・ザ・ブルース/ウィントン・マリサリス&エリック・クラプトン」(ワーナーミュージック・ジャパン/WPZR-30420~1)
今年4月上旬、ジャズ・アット・リンカーン・センターのローズ・シアターで収録されたライヴ作品。JALCの芸術監督を務めるウィントン・マルサリスがクレオール・ジャズ・バンドを意識して組織したものだというミュージシャンたちに加えて、クラプトン側からクリス・ステイントンも参加。オープニングアクトを務めただけでなく終盤の2曲にゲスト参加したタジ・マハールを含めると総勢11人でつくり上げた、豊かで味わい深い、そしてルーツへの深い造詣を感じさせる音がたっぷりと詰まっている。取り上げられているのは、W.C.ハンディが作曲や採譜に関わった曲、ルイ・アームストロング、ハウリン・ウルフ、ビッグ・メイシオ、メンフィス・ミニーなど。ニューオリンズ・ジャズを主題にした選曲はクラプトンが担当していて、マルサリスはその博識ぶりにあらためて脱帽したという。その流れのなかではどうしても異質な感じを与えてしまう「レイラ」はメンバーたちの強い希望で取り上げることなったもの。クラプトンは消極的だったそうだが、ニューオリンズ風葬送曲のアレンジが意外なほどいい高価をあげている。今は後悔していないはずだ。二人の交流は03年にアポロ・シアターで行なわれたJALCのためのチャリティ公演がきっかけではじまり、10年秋発表の『クラプトン』にもマルサリスは参加していた。その完成直後に収録された公式インタビューでクラプトンは「次は、ルイ・アームストロングと並んでギターを弾くようなアルバムをつくってみたい」と語っていたのだが、早くもそのアイディアを現実のものとしてしまったわけだ。(大友 博)
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