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「ベートーヴェン:交響曲第3番「英雄」、バレエ音楽「プロメテウスの創造物」より/ケント・ナガノ指揮、モントリオール交響楽団」(ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル SICC-1453)
「ケント・ナガノ+モントリオール響 ベートーヴェン・プロジェクト」と銘打ったシリーズの第2弾。最初の「プロメテウスの創造物」は序曲以外の曲を耳にすることは殆どないが、如何にもバレエのための音楽であり親しめる。特に3曲目のハープ・ソロで始まるパ・ド・ドゥであったろう第5曲はチェロのソロが活躍し、アダンのジゼル的そしてモーツァルト的で実に愛らしい。最後の第14曲では後に「英雄」の第4楽章で用いる旋律も出てきて、リスナーはここでようやくこの曲が「英雄」と関係付けられたのかが分かる。
現代楽器でピリオド奏法を採り入れたナガノの演奏は、特に「英雄」の第1楽章に於いて言い方は変だが律儀ともいえる礼儀正しさを感じる。葬送行進曲ではこの奏法のお陰でいやが上にも荘厳な雰囲気が盛り上がる。スケルツォのテンポは中庸ながら管から弦まで楽器間の繋ぎをはじめ一つ一つの音符に至るまで一糸乱れぬアンサンブルを形作り、終楽章でのクライマックスを待つのである。
それにしてもケント・ナガノは全盛期と言われたデュトワ時代のモントリオール響にあとひとつ「精緻」と言う素晴らしい能力を与えた、と言えるだろう。(廣兼 正明)
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