2010年7月 


Audio What’s New


「ボーズ lifestyle V35」
ブルーレイ時代に対応し発展を遂げたフロントサラウンドの代表機種
前方に置いたスピーカー(2~3本)で映画ソフトの5.1chサウンドを再生するシステムをフロントサラウンドシステムと呼ぶが、その最も代表的な存在がボーズのlifestyleである。Lifestyleにはソース機器(DVD/CDプレーヤー)までを含む完全完結型とアンプとスピーカーシステムで構成される機種の2種があり、後者が新世代(V35/V25/T20)に発展した。BD/DVD/CDプレーヤーをコンソール部に接続すれば5.1chサラウンドをフロントセクション(L,R,センター)とアクースティマスモジュール(ウーファー)のスピーカーシステムのみで再現する趣向である。オーディオビジュアルは変化が急なので、一般ユーザーにとっては長期使用と発展性という点で完結型よりこちらが本命である。今回、コンソール部が完結システム(LS48等)同様のスマートな薄型に変わったのも位置付けを上げた表れだろう。また、HDMI Ver.1.3を搭載(4入力)しブルーレイディスクのドルビートゥルーHDへの対応を果たした。ただし、DTS-HDマスターオーディオには非対応である。

接続を、映像で手取り足取り教えてくれる新機能がUnify
今回最も注目される新機能がUnify("Intelligent integration technologyモ)の初搭載である。ボーズは長年イージーセットアップに配慮してきたが、今回はその決定版に近い。コンソール背面のセットアップボタンを押すとUnifyが起動、テレビのOSD画面上にブルーレイレコーダー等ソース機器の接続手順をカラー映像の対話形式で教える。秀逸なのは「HDMIとはどれのことか?」まで遡って画面で教示、間違えるとブザー音が鳴って「咎め」正しく接続出来るとクリアなチャイム音が「褒めて」くれる。統合リモコンはIR(赤外線)から無線にグレードアップされ、無指向性なので部屋のどこからでも指示が出せインターフェースが楽、一方接続機器のIRはコンソールにメモリー済でエンドユーザーは自宅の機器のそれを選べばよくユーザーフレンドリーの極みである。

音場の広がり、前後の動き、高さの表現にさらなる進境
渋谷のボーズ本社試聴室で新作ブルーレイソフトを中心に視聴した。いずれも5.1ch音声だが、フロントサラウンドの経験厚いボーズだけに前方の3本の非常にコンパクトなキューブスピーカーだけで広々とした空間を描写し、特に高さの表現に優れているのに感心させられる。実例を挙げてみよう。『不滅の恋 ベートーヴェン』CH2のスワンホテルのロビーに轟く雷鳴は音場高く後方まで転がって行き、宿屋の女将が不安げに天井を見上げる演技と一致する。『ハワーズ・エンド』冒頭のピアノの解像感も秀逸、野外の小鳥の囀りも近く遠く、広々とした空間描写である。音楽ソフトはピアノ独奏ペライア、ハイティンク指揮コンセルトヘボウ演奏のシューマン・ピアノ協奏曲イ単調を聴いたが、ソフトの5.0ch音声を選択しフロントサラウンド化した場合、やや細かな情報が整理される傾向がある。ステレオ音声を選択しヴァーチャルサラウンド化した方がいい場合もあるから、ソフト毎に研究するといいだろう。(大橋 伸太郎)
【主な仕様】
サテライトスピーカー部:
■ジュエルキューブスピーカー×4
■外形寸法:57W×113H×83Dmm
■質量:350g(1本)
センタースピーカー部:
■ジュエルキューブスピーカー×1
■外形寸法:141W×60H×67Dmm
■質量:350g
アクースティマスモジュール部:
■外形寸法:207W×334H×552Dmm
■質量:12.3kg
■コンソール部:
■接続端子:HDMI4、コンポジット映像1、コンポーネント映像1,
アナログ音声、光デジタル音声、同軸デジタル音声、iPodドック接続、USB×2(前面/背面各1)
■外形寸法:421W×77.5H×237.5Dmm
■質量:3.4kg
■価格:¥399,000(税込)
■問合せ先:ボーズ(株)
www.bose.co.jp

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「デノンプリメインアンプPMA-1500SE」日本のオーディオの良心と踏ん張り
定番プリメインアンプの最新進化形
デノンの中堅価格帯のプリメインアンプ1500番は、この分野で長くベストセラーを続ける定番機種である。一つ前の世代がPMA-1500AE(\84,000~税込)で2005年の発売だが、5年ぶりに刷新されPMA-1500SEに発展した。価格は約一万円アップの¥94,500(税込)である。PMA-S1、PMA-2000から採用のUHC-MOSパワー素子を使用、パワー部シングルプッシュプル構成である点は前作と同様。UHC-MOSはバイポーラ型の3倍の急峻な立ち上り、立ち下がり特性の描き出す音に特徴がある。今回の新機軸として電源回路の整流用に大電流型ショットキー・バリア・ダイオードを採用し、前世代に対し約1.5倍の高速動作とハイパワーを得ている。

地道な改良が随所に窺われる 27ディアメーター大型電動ボリュームを採用
機構面では、メカニカルグランドに工夫が見られる。各セクション毎に設置位置を下げ(51mm→38.5mm)基板全体の位置が低重心化し振動の影響が抑えられ、安定感のあるクリアな音質を得ている。また、パワーアンプの基板とヒートシンク内側の接合部に新たに銅箔プレートを介在させUHC-MOS素子の温度上昇を抑えた。デュアルELコアのトランス部には二層のベースシャーシを新たに採用し振動対策を徹底した。ヒートシンクは共振モードが一定にならず分散するようにフィンの厚みを3パターンとしローテーション配列した。これはPMA-2000から継承。こうした改良で前作に比較して900g質量が増加、約一万円の値上げとなったわけである。やはりPMA-2000から降ろした技術要素が、大型27ディアメーターの電動ボリュームの搭載。前作は16ディアメーターで、実際にノブを回してみるとねっとりした滑らかさ、きめ細かさが違う。世代を重ねて1500を愛用していきたいユーザーには最も大きな(歓迎すべき)変更点であろう。(大橋 伸太郎)

【主な仕様】
■定格出力:両チャンネル駆動(CD→SP OUT)70W+70W(負荷8Ω、20Hz〜20kHz、T.H.D. 0.07%)
■実用最大出力:140W+140W(負荷4Ω、1kHz、T.H.D. 0.7%)
■全高調波歪み率:0.01%(定格出力―3dB時、負荷8Ω、1kHz)
■周波数特性:5Hz〜100kHz(0〜-3dB)
■S/N比(Aネットワーク):LINE 108dB(入力端子短絡時)、PHONO MM 89dB(入力端子短絡時、入力信号5mV時)、PHONO MC 74dB(入力端子短絡時、入力信号0.5mV時)
■消費電力:295W
■外形寸法:434W×134H×410Dmm
■質量:15.5kg
■価格:¥94,500(税込)
■問合せ先:(株)デノン コンシューマーマーケティング
http://www.denon.jp/

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「デノンSACD/CDプレーヤーDCD-1500SE」
デジタルオーディオの変化を映し、過去最大級の進化を遂げたSACD/CDプレーヤー
デノンの話では、上級機種にグレードアップするのでなく同じシリーズの新製品をずっと待つ固定ファンが大勢いるのだそうだ。プリメインPMAと同時に中堅クラスのCD/SACDプレーヤーが新世代に発展した。DCD-1500SE(¥94,500~税込)である。前世代DCD-1500AEと比較してやはり約一万円のアップ。しかし、プリメインと比較した場合、ディスクプレーヤーというカテゴリーの置かれた状況を反映して前世代からの変化がこちらはもっと鮮明で、AL32を初搭載するなど一昨年の国内オーディオの話題を独占ししミュージックペンクラブ音楽賞(オーディオ技術開発部門)を受賞したフラグシップDCD-SXからの技術フィードバックが見られる。

アナログ波形再現をAL32にグレードアップ 機構面はほぼ全面刷新
DCD-1500SEの変更点を見ていこう。まず、DACのデバイスがバーブラウンから旭化成に変わった。DCD-SX等上級機からの流れである。次にデノンオリジナルのアナログ波形再現技術がAL24からAL32へグレードアップした。デノンオリジナルの技術であるDACマスタークロックデザイン(192kHz/32bit対応の高精度DACをマスターに、クロックを各デバイスへ供給する)にもフロー上の新構成が見られる。ジッター発生を低く抑えたマスタークロックを32ビットDACの直前に配置し正確なDA変換を実現している。
機構面はどうか。天板を外しての回路レイアウトの眺めは前世代機と一変した。従来はデジタルパワー部、アナログパワー部、信号処理部が一つの基板上にあったのに対し、今回全て分離した上で最短経路での引き回しを実現した。また、サーボプロセッサー部をメカ裏のAL32と同一基板上へ移動し信号処理の最適化を達成。機構面の刷新も大きい。メカの支持部の厚みを42mmから32mmへ減らしメカ全体を低重心化した。本機は上級機種の薄型メタルメカでなくモールドタイプの在来型だがきめ細かく手を加えた。異種素材組み合わせのハイブリット構造S.V.H.(Super Vibration Hybrid)メカで、トレイ部は通常より高分子の塗料によるプロテイン塗装。膜厚が出るため防振効果が高く、空気中の水分を保存するため静電気が起きにくい。こうした大小の改良の積み上げでDCD-1500SEはAEに比較してカタログスペック上で大幅な進歩を遂げている。なお、本機からUSB入力を搭載しiPodのファイルをデジタルで入力出来る。(大橋 伸太郎)

【主な仕様】
スーパーオーディオCD部
■信号方式:1ビットDSD
■再生周波数特性:2Hz〜50kHz(-3dB)
■S/N比:117dB(可聴帯域)
■ダイナミックレンジ:113dB(可聴帯域)
■高調波歪率:0.0013%以下(1kHz、可聴帯域)
CD部
■再生周波数特性:2Hz〜20kHz
■S/N比:117dB
■ダイナミックレンジ:100dB
■高調波歪率:0.0018%以下(1kHz)
総合
■消費電力:30W(待機電力 0.2W(エコモード時:0.1W))
■外形寸法:W434×H135×D331mm
■質量:8.0kg
■価格:¥94,500(税込)
■問合せ先:(株)デノン コンシューマーマーケティング
http://www.denon.jp/

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「TANGENT NET-200-EU-SIL」
インターネットラジオをチューナー感覚で楽しめるネットワークプレーヤー
TANGENT(タンジェント)はデンマークのホームオーディオメーカーで、コンパクトなスピーカーシステムやPCオーディオ等をラインナップ、いかにも北欧製品らしいインテリア志向の粋な存在感で日本でも最近人気が急上昇している。NET-200-EUは、いわゆるネットワークプレーヤーと呼ばれるジャンルのオーディオ製品で、ホームネットワークへ接続してPCやNAS内の音楽ファイルを高音質再生する他、インターネットラジオ番組を単体コンポーネントのチューナー感覚で受信して楽しめる。Recivaの最高級技術Internet Radio Module “Stingray”を搭載、Reciva.comから送られるデータで日々機能がアップデートされ世界各地の18,000を超すインターネットラジオを快適に受信できる。スペックは、802.11b/gワイヤレスと有線LAN接続が選べ、再生ファイルは、
Realaudio/MP3/Windowsmediastreams/OGGvorbis/AAC/WAV(16bit/44.1kHz,48kHz)/AIFF/AU各種に対応する。(大橋 伸太郎)
【主な仕様】
■ワイヤレスLAN:802.11b/g
■セキュリティー:WEP、WPA1/WPA2(TKIP)
■再生可能フォーマット:
Real audio/MP3/Windows media streams/OGG vorbis/AAC/WAV(16bit / 44.1kHz, 48kHz)/AIFF/AU
■外形寸法:430Wx60Hx240Dmm
■質量:5kg
■問合せ先:(株)ポーカロ・ラインTEL/03-5625-3505
http://www.porcaro-line.co.jp/

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「NUFORCE CDP-8」剃刀の切れ味の超コンパクト 超高性能なCDプレーヤー
V3パワーアンプとデザイン統一した恐ろしくコンパクトかつ高性能なCDプレーヤー。外形寸法は別記の通り。機械的なスイッチは止め本体操作は全てタッチパネル、メカニズムは一見スロットインのように見えるが音質を優先してトレイ式、付属のリモコンで同社製アンプのボリュームコントロールが可能である。本機は、アップサンプリングもビット拡張も行わず16ビット44.1kHzのCDフォーマットの正確無比な再生を行う、いわばCD原器のような着想の製品である。高度なエラー訂正システムで読み取ったデータはアルゴリスム上の類推を含まずレッドブックに基づき回復、ジッターを極小に止め384Fsでオーバーサンプリングし純粋な16ビットデータとしてAKM製ハイブリッドDAC(R2R型/デルタシグマ型)へ入力する。ディスクの偏心や振動からの影響を最小にするため読み取りは定速で行う。I2Sデータを格納しマスタークロックと同期するためのバッファを持ち、ジッターを最小限に抑え込む。電源部は2つの独立したスイッチングレギュレーターがあり、接続システムとのグラウンドの干渉を排除する設計。出力はデジタル同軸/BNC、アナログRCAピンの2系統。サイズを疑うダイナミックレンジと鮮烈な立ち上がりが印象的なニューフォースの魅力が凝集した製品である。(大橋 伸太郎)
【主な仕様】
■S/PDIF出力:同軸/BNC
■再生周波数帯域:20Hz〜20kHz
■SN比:98dB以上
■出力インピーダンス:100Ω
■外形寸法:215W×59H×390Dmm
■質量:2.8kg
■価格:¥157,500(税込)
■問合せ先:(有)フューレンコーディネート
http://www.fuhlen.jp/

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「OPPO BDP-83SE NuForce Edition」
ニューフォースのノウハウで徹底的な音質改善を遂げたユニバーサルプレーヤー
ブルーレイディスク、DVD(ビデオ、オーディオ)、SACD、CD等市販のすべてのディスクメディアの再生が可能なユニバーサルプレーヤー。アメリカ製でポイントはデジタルアンプで飛ぶ鳥落す勢いのNuForce社の息がかかっていること。OPPO BDP-83のD/AコンバーターをセイバーDACへグレードアップ、音質を高品位化したのが同SEだったが、それをベースにニューフォースのノウハウをさらに注ぎ込んだ製品が本機である。SEとの違いを列記していくと、@アナログパーツをNuForce(ニューフォース)のハイエンド機で使用しているものに換装、ADACとアナログ回路に高速レスポンスの電源を供給、Bステレオチャンネルのハイパフォーマンス高集積回路化、Cステレオ/7.1chミューティング回路バイパス、の諸点である。その結果、ブルーレイディスク(音楽/映画)再生時、ステレオ2chチャンネル/3チャンネル音声の大幅な音質改善が果たされた。
まさに音楽のために生まれたブルーレイディスクプレーヤーでありユニバーサルプレーヤーである。最初に音が出た瞬間から従来のブルーレイディスクプレーヤーで体験出来なかった量感豊かな厚い響きが印象的だ。(大橋 伸太郎)
【主な仕様】
■再生可能ディスク:
BD-Video、BD-R/RE、DVD-Video、DVD-Audio、DVD±R/RW、DVDアR DL、AVCHD、SACD、CD、HDCD、CD-R/RW、Kodak Picture CD
■音声出力:
アナログ/7.1ch/5.1ch/ステレオ
デジタル/HDMI、同軸、光
■映像出力:
アナログ/コンポジット、コンポーネント(Y/Pb/PR、480i/p、720p/1080i)
デジタル/HDMI(HDCP)NTSC/PAL(1080p24信号まで出力)
■外形寸法:430Wx336D x 77Wmm
■質量:5.1kg
■価格: ¥199,500(税込)
■問合せ先:(有)フューレンコーディネート
http://www.fuhlen.jp/

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「ACOUSTIC ARTS Power ES」 アコースティックアーツ初のエントリーモデル 高い質感を失わず低価格を実現 ドイツの素朴と科学が融合し色付を排した再生音
ACCUSTIC ARTS(アコースティック・アーツ)は1996年創立、ドイツ・シュツットガルト郊外のラッフェンの本社でスピーカーユニットからアクセサリーに至る全てのコンポーネントのモディファイと生産を行い、社内に録音スタジオを持つ高級オーディオメーカーである。CDプレーヤー、DACコンバーター、スピーカーシステムまでラインナップは幅広く、世界的な好評を博した同社初のプリメインアンプがPOWER I-MK2(2008年)である。しかし、同機は邦貨130万円のハイエンド機だから一般の音楽ファンはそうおいそれと手が出ない。
そんな折、朗報がもたらされた。今回紹介するESは“EntrySeries”の略。同社がエントリーラインを新たに立ち上げたのである。その第一弾がプリメインアンプPOWER ESである。価格はフォノイコ無しのベーシック機で\609,000(本体)。一気に半分以下になったのだから、正直危惧を拭えなかった。アコースティックアーツらしい内容の妥協のなさ、製品としての凛とした佇まいがもし失われていたらと…。しかし、それは紀憂であった。まず、製品を目の前にして次に触れて同社製品のCIである高い質感に安堵した。ツマミ類はしっかりとした重みが備わった手応えのあるもので、前面パネルに刻印された“HAND MADE IN GERMANY”に恥じないクラフツマンシップを感じさせる。低価格を実現した日本における輸入総代理店のハイファイジャパンの努力に敬意を表する。
その名の通り、本機は基本的にパワーアンプにプリ部(ラインアンプ)を追加したシンプルな構成である。出力素子はMOSFETを使用し電源部に330VAのトロイダルトランスを搭載、出力は120w+120W/4Ω(THD+N=0.1%)、フォノイコライザーはオプション、なお本機の4系統入力は全てアンバラでバランス(XLR)は省略されているのはコスト上やむない所。虚飾と色付けを排し力強い芯の備わった透明感豊かな音楽を聞かせる。なお、アコースティックアーツESシリーズのタイムスケジュールは、7月にUSB入力付きのCD PLAYER ESを日本に導入、秋にはデジタルネットワークプレーヤーSTREAMING DACが登場の予定だ。(大橋 伸太郎)
【主な仕様】
■入力:アンバランス (RCA) x 4、アンバランス (RCA) x 1・・・SURROUND-BYPASS
■左右信号差:0.5dB以下 (0 〜 -40dB)
■入力インピーダンス:50KΩ/RCA
■パワー出力 (THD+N=0.1%): [8Ω] 90W + 90W/Stereo、[4_] 120W + 120W/Stereo
■Raise & Fall time:4.6μs @4Ω
■S/N:-89dB (ref.6.325V)
■歪:0.005% @8Ω,1KHz,10W、0.008% @4_,1KHz,10W
■電源トランス:330VA トロイダルコアトランス
■ダンピングファクター(THD+N):500 以上
■電源キャパシタンス:50,000μF
■消費電力:56VA (無負荷) 
■外形寸法:H96 x W482 x D400mm
■質量:約11Kg
■価格:¥609,000(税込)/POWER ES Inc. phono エ 714,000(税込)
■問合せ先:(株)ハイファイジャパン
http://www.hifijapan.co.jp/

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「ロバート・マンの芸術/サイトウキネン・オーケストラ」(エヌアンドエフ/NF-25101)
 ロバート・マンはジュリアード弦楽四重奏団の創立者で半世紀に渡りクワルテットのファーストヴァイオリンを務めた名演奏家である。齋藤秀雄が大学として発足したばかりの桐朋学園のマスタークラスにジュリアードSQを招いたのが1961年のこと、そこからマンと日本の音楽界、桐朋学園との長い縁が始まった。ロバート・マンが初めてサイトウキネン・フェスティバルを訪れたのは1993年であった。この時はジュリアードSQとしての出演だったが、音楽祭のプロデューザーである小澤征爾とシェーンベルク「浄夜」について語り合ったのをきっかけに1999年に単独で客演、以来毎回のように参加するほど同音楽祭との縁が深まった。このCDはマンが初めてサイトウキネン・オーケストラの指揮を務めた2003年の演奏を3曲(モーツァルト交響曲第40番、バルトーク・ディヴェルティメント、ベートーヴェン弦楽四重奏曲第16番より)を収録している。LP時代、ジュリアードSQのベートーヴェン弦楽四重奏曲全集は筆者の愛聴盤であった。ここでのマンはサイトウキネン・オーケストラを指揮して自家薬籠中のベートーヴェン(オケ編曲版)から室内楽とはまた違った厚い響きと豊かな旋律美を引き出ている。会場は管弦楽やオペラの主会場であった松本文化会館でなく、比較的小会場の松本市音楽文化ホール(ハーモニーホール)での演奏で色付きのない生々しい実在感が出色。演奏の実音ノイズまで拾ったドキュメンタルな迫力に富む臨場感主体の録音である。(大橋 伸太郎)

Audio ALBUM Review

「ヴィヴァルディズム/ラ・ストラヴァガンツァ東京」 (エヌアンドエフ/NF-25201)
 ラ・ストラヴァガンツァ東京は、松野弘明(vn)と黒木岩寿(cb)をリーダーにヴィヴァルディ演奏を目的に結成されたアンサンブルで、団体名称はヴァイオリン協奏曲作品4にちなんだもので「奇妙な」「風変わりな」という意味を持つ。同アンサンブルは万葉集の時代の日本人を「万葉びと」と呼ぶのになぞらえ、自らを「ヴィヴァルディびと」と考えているそうだ。このあたりの背景はCD のライナーが些か説明不十分で筆者が想像するに、高踏的な<技巧>を徒にクローズアップするより人間の感情の自然な流露を大切にしたいという彼らの演奏に臨んでの姿勢なのだろう。本作に収められた演奏は、シンフォニア、弦楽のための協奏曲、協奏曲集「調和の霊感」から代表的な曲を選んで演奏、ヴィヴァルディの世界への案内といえる内容である。東京・三鷹市芸術文化センター「風のホール」でのDSD録音。最初に音を出した瞬間、モダン楽器での演奏かピリオド楽器での演奏家か戸惑った。ラ・ストラヴァガンツァ東京は、モダン楽器での演奏だが古楽奏法を参考にして独自の響きを追求しているのだそうだ。透明感豊かな音場の中に弦楽の厚い量感がくっきりと響き、アンサンブルが実在感豊かに描写されるN&Fらしい録音。(大橋 伸太郎)

Audio ALBUM Review

「camomile smile(カモミール・スマイル)/藤田恵美」 (ポニーキャニオン/ PCCA-60023)
「(聴いていると)いつの間にか気持ち良くなって眠りにつける」音楽のハーブが藤田恵美のcamomileシリーズで好評を博して今回が第4作目である。タイトル曲「smile」(1954)はチャーリー・チャプリンが作曲し、ナット・キング・コールが歌った曲。「イマジン」や「青春の光と影」等超有名曲からメリー・ホプキンの「ロンドン通り」(アップルでの最後のアルバム『大地の歌』に収録)といった地味な曲までコンセプトと選曲に工夫が見られ、どの曲も藤田の声の明るい音色と柔らかな歌い口、繊細なフレージングを活かす編曲で聴かせる。さて、本シリーズには音質へのこだわりというもう一つの顔がある。今回、バックの演奏楽器がギター、ピアノの他、チェロ等低弦初め、バグパイプまで音色数が増えて多彩になり、その中で藤田の声質の美しさをバランス上最大限引き出すため、声に合わせて楽器の音を録る部屋を一つ一つ割り振った。次にボーカルを録る時も歌う場所や向きを変えてマイクのベストポジションを探し、極め付きは何とマニアがスピーカーなどを置くオーディオ遮音ボードの上に立って藤田が歌ったのだそうだ。本作のミキシングを担当したのがソニー・オーディオ事業部でアンプの開発を手掛けて有名な金井隆氏である。ポニーキャニオンのスタジオでマルチトラックの録音を全て済ませたベーシックトラック音源を品川のソニーにある通称「金井部屋」と呼ばれる試聴室に持ち込み、そこに集まった藤田、アレンジャー、プロデューサーの全員の納得が行くまでバランス調整を繰り返した。こうして決まった音はマスタリング工程で一切手を加えず、藤田が「自分が歌った時の思いがそこにある」最終バランスのままリスナー一人一人の部屋に届けられるわけである。なお、本CDはSACD/CDハイブリッド盤で一般のCDプレーヤーで演奏可能。(大橋 伸太郎)

Audio Blu-ray Review

「ヘンデル《エイシスとガラテア》/コヴェント・ガーデン王立歌劇場2009」(オーパスアルテ/OABD-7056D)*輸入盤
 9月に日本公演が予定される英ロイヤルオペラ(コヴェント・ガーデン王立歌劇場)の公演ライブ。本作はヘンデル作曲によるオペラというよりセレナータと呼ばれる形式の音楽劇で上演約一時間半と短く、実際にご覧になった方によると先々号で紹介の『ダイドーとエアネス』と二本立てで上演されたという。
 ニンフのガラテアと羊飼いのエイシスは恋仲になるがそれを嫉む怪物ポリフェムスがエイシスを撲殺、ガラテアの祈りが天に通じて恋人が甦るという田園劇で、注目すべきは歌手と舞踊手が二人一役を演じる演出である。(ダモン役は、歌手一人男女舞踊手一人ずつの計三人)ロイヤルバレエの舞踊手達は全員が素肌に薄いレオタードを纏い全裸とみまがう出で立ちである。ガラテア役を人気沸騰のソプラノ、ダニエル・デ・ニーズが歌うが、幕切れで彼女本人がロイヤルバレエのプリンシパル(主演舞踊手)を相手に歓喜のパ・ド・ドゥを踊る。バレエの素養のあるデ・ニーズを迎えて初めて実現した趣向で楽しませる。映像コーデックはMPEG-4 AVC、音声形式はLPCMステレオ、DTS-HDマスターオーディオ5.0ch。日本語字幕無。(大橋 伸太郎)