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「マイケル・ジャクソン THIS IS IT」(ソニー・ミュージック ジャパン インターナショナル/EICP1301〜2=限定盤2CD EICP1284=通常盤)
マイケル・ジャクソンが今年(2009年)の6月25日に急死して以来、さまざまな情報が錯そうしていたが、それまで彼がリハーサルしていた模様の記録映像が約2時間にわたって編集され映画『ディス・イズ・イット』として10月28日から2週間限定で公開される。同名のCDは、その映画の中で歌われる作品群を、過去にリリースされたCD音源から編集したもの。それらに今回新たに一応未発表新曲として出る「ディス・イズ・イット」を付け加えた。このナンバーは1983年頃に書かれたものでバックにジャクソンズのメンバーのコーラスが収録されている。もともとのタイトルは違ったが、今回のライヴにあわせ、タイトルが「ディス・イズ・イット」に変更されて制作されたようだ。映画は話題を集めそうだ。(吉岡 正晴)
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「ノラ・ジョーンズ/ザ・フォール」(EMIミュージック・ジャパン/TOCP-70830)
待望のノラ・ジョーンズが新作発表。第4作となる。21世紀の新しい音楽動向としてノラをあげたのは、拙著『アメリカン・ミュージック・ヒローズ』中でだったが、自然でゆったりとしていながらアンニボュイのない大都会のオアシスのような和みは、優れた歌唱と共に新鮮だった。それから6年、この新作で変化を見せてきた。プロデューサーはトム・ウェイツやバディ・ガイ等で知られるジャクワイア・キング。実力派の新メンバーによるバンドと新しいサウンドに挑戦。ライアン・アダムス、ジェシー・ハリス等と共作。ノラは主にギターで作曲。歌で芝居をしているのも新しい傾向だ。初シングル「チェイシング・パイレーツ」でおっと思わせ、ソウルっぽい曲やエレキ・ギターの響きが新しく、グルーヴ感も打ち出して、「テル・ヤー・ママ」はヒット性に富み、ボーナスはカントリー・タッチと中々多彩で面白い。(鈴木 道子)
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「ディス・イズ・アス/バックストリート・ボーイズ」(ソニー・ミュージック ジャパン インターナショナル/BVCP40098〜9=限定盤、BVCP-40100=通常盤)
先の来日プロモーションでもファンを盛り上げていたバックスの最新作。数あるボーイズ・バンド中、キャリア的にも年長組になったが、彼らはこれまでのボーイズ・バンド=解散という公式を捨てて、前人未到のキャリアに突入したように思える。初期からの常連マックス・マーティンからRed Oneらまで、様々なプロデューサーとコラボレーションを行いながら、自らのスタイルを明確に打ち出しているのは、さすがだ。新しいピークを作り出すきっかけになりそうな力作に仕上がっている。(村岡 裕司)
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「ブルー・リッヂ・レインジャーズ・ライズ・アゲイン/ジョン・フォガティ」
(ユニバーサルミュージック/UCCB-1033)
CCR解散の翌年ということになる1973年、ジョン・フォガティが一人多重録音で仕上げたソロ第一弾は、当時は、ブルー・リッヂ・レインジャーズという覆面グループの作品としてレコード店に並んでいた。きっとそこには、いろいろな想いが込められていたのだろう。これは、36年の時をへて制作されたその続編。ジョンは「少なくとも一年に一回はまたああいうアルバムをつくってみたい」と思ってきたそうで、ようやくそれを形にしたわけだが、今回は一人多重録音はやめ、プラント/クラウス・ブロジェクトとも重なるブルーグラス系実力派ミュージシャンたちとセッションそのものを心から楽しんでいる。究極の私的名曲集といった趣の選曲も素晴らしい。ただし、70年代の曲も多く、自身の原点に焦点を当てたものではない。ブルース・スプリングスティーンとドン&ティモシーのイーグルス組がゲスト参加している。(大友 博)
1973年、CCR解散後に発表された初のソロ作『ブルー・リッヂ・レインジャーズ』。バンド名義だが実際はワンマン録音で、内容もカントリーのカヴァー・アルバムということでファンを驚かせたものだが、それから36年後の2009年、その続編アルバムが発表。今回は一流のセッション・ミュージシャンをバックに、そしてブルース・スプリングスティーン、ドン・ヘンリー、ティモシー・B.シュミットら著名ゲストを迎えて、リラックスした雰囲気の中で制作された。収録曲もエヴァリー・ブラザーズやリック・ネルソン、パット・ブーン、ジョン・デンヴァーらの全米大ヒット曲から、バック・オウエンズやケンドルズのカントリーNo.1ヒットまで、フォガティのフェイヴァリット・ソングが集められた。来年には世界ツアーが敢行されるという。日本でも観てみたい!(森井 嘉浩) |
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「エッセンシャル・ユアーズ/チック・ロジャース」(BSMF Records/BSMF-2138)
≪シカゴの秘宝≫、チック・ロジャースを形容するのに、これほどピッタリの表現はみつからない。彼女の歌を聞いた事のある誰もがその才能と歌唱力に魅了されるのに、今までリーダー作がなかったのが七不思議のひとつでもあったが、この度、日本のBSMFレコーズからデビュー・アルバムである本作がリリースされたのだ。アレサ・フランクリンやB.B.キングなどのブルース、R&Bの人気曲に加えて、「Over The Rainbow」や「Summertime」などのポップス、ジャズの超有名曲も取り上げている。これらの幅広いジャンルを自身のものとして歌いきってしまう懐の深いソウルフルな歌が詰まったこのアルバムは、ブラック・ミュージックファン必聴の1枚と言えるだろう。このアルバムで日本ツアーが実現することを願ってやまない。(菊田 俊介)
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「キメラドゥール/ジェフ・ラング」(P-VINE RECORDS/PCD-93300) 残念ながら観ることができなかったのだが、今年のフジ・ロックで絶賛を集めたという豪メルボルン出身のシンガー/ソングライターの新作。ここ数年、アメリカンのルーツ音楽を豪州的感性で消化し、卓越したギターを核に個性的な音を聞かせるアーティストが何人か登場しているが、彼もそのひとりといっていいだろう。今回も、渋いスライドからアコースティックの速弾き、ストレートなエレクトリック・ソロまで、多彩なギターを聴かせながら、しっかりと自身の歌の世界を築き上げている。リチャード・トンプソンの「ジ・エンド・オブ・ザ・レインボウ」へのアプローチもよかった。(大友 博)
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「ルーツ・トゥ・リッチーズ/ママズ・ガン」(Varicount Records/NFCT-27231) またもや気になるイギリスからの新星!これまたワクワクさせられてしまう5人組!出て来るは予想(期待?)通り、昨今のイギリスならではのレトロ・フレイヴァーを感じさせるものメロディーやサウンド作りのセンスに凡庸ではないものが。。。これはちょっと他の新人たちとはスケールが違うんではないか、と。聴き進むうちにジミ・ヘン、スライ、プリンス、テレンス・トレント・ダービーにレニ・クラ。。。かつてR&B〜ソウル界に新風を送り込んだアーティストたちの顔が入れ替わり立ち替わり浮かび上がって来たほど。曲もプロデュースも自前で賄える才能ある彼らのソウル、ファンク、ロック、ポップスをブレンドしたカッコ良くてキャッチーな音楽。いやはやもういっぺん最初から聴いてみたくなってしまった♪(上柴 とおる)
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「ブレイキング・オブ・アワー・デイズ/カーリ・フェアバンクス」
(BSMF RECORDS/BSMF-2142)
2年前にデビューしたワシントン州スボケーン出身のカーリ・フェアバンクス、オルタナティヴ・フォークのシンガー/ソングライターとして注目したい。彼女の音楽にはカントリーもルーツロックもブルースのエレメントも・・・。シアトル音楽界のサウンド・クリエイターとして知られるコリン・クラッケンバーグに認められ本作を発表。グルーヴ感溢れるサウンドの中でしっとりと清らかなヴォーカルで魅了する。シンプルな展開の中に実にしっかりとした音楽性を感じさせるのだ。こうした≪本物≫のアーティストをもっともっと楽しみたい。(高見 展)
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「バタフライ・エフェクト/ダイアナ湯川」
(ソニー・ミュージック ジャパン インターナショナル/BVCP-40157) 2000年夏にセンセーショナルなデビューを飾ってから9年、前作から数えて8年ぶりのカムバック作品は、この間のダイアナの成長を実感させる内容だ。前2作がクラシック作品であったのに対して、今回はポップやクラシカル・クロスオーヴァーへのシフトが成功しており、彼女の方向性が明確に示された。ラテンやクラブ・テイストなどユニークなサウンドに乗せてダイナミックでエモーショナルなヴァイオリン演奏を満喫させてくれる。オリジナルで構成されているが、ハウス・クラシックのカヴァー「チルドレン」の弾けた演奏が異色。映画『沈まぬ太陽』のインターミッション曲として住友紀人(音楽)と組んだ「祈り(永遠の記憶)」を日本盤のボーナス・トラックとして収録しているのも話題だ。(村岡 裕司)
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「アルボラーダ・ド・ブラジル/カルロス・ヌニェス」
(ソニー・ミュージック ジャパン インターナショナル/BVCP40131) スペインのガイタ奏者、カルロス・ヌニェスの新作はブラジルにテーマを求めたアルバム。郷愁や神秘を感じさせるケルト音楽と多様なブラジル音楽とがここでは違和感なく融けあっている。ヌニェスの出身地、ケルト文化圏のガリシア地方はポルトガルにも隣接していてブラジルとは近しい間柄にあるという。ショーロやサンバなどの名曲をバグパイプやリコーダ、ホイッスルで紡いでゆく。気負うことなくラップやスクラッチが織り込まれている。ブラジルの先鋭的なプロデューサーや若手ミュージシャン、シンガーなど100人以上が参加、伝統と革新とをコラージュして瑞々しいサウンドを聴かせてくれる。(三塚 博)
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「アロー/クレア&リーズンズ」(バッファロー・レコーズ/BUF-145)
『ザ・ムーヴィー』は確かに衝撃的なデビュー作だった。甘えた可愛い声が醸し出すノスタルジックなスウィート&ロマンティック。これにはコロリと参ってしまった男性ファンも多かった。が、同性なだけに女の魔法がきかない分、今一だと思ったのも事実だ。それが2月の来日で、歌のうまさや魅力的な人柄、チェロ、弦楽器のユニークな組み合わせなど、面白い音楽性がじかに楽しめた。帰国後すぐに取り掛かったのが、この第2作。歌唱にも一層磨きが掛かり、滑らかにメロウな曲線を描いていく。楽器もエレクトロニクスやキーボード、ループを多く取り入れ、音楽の色合いが多彩になった。マーチ調を配した「パーデュー・ドゥ・パリ」、思い出も魅力的な「フォトグラフ」、単純なバックだが歌声が呼びかける「オール・ザ・ワイン」、「アワ・チーム・イズ・グランド」は完成度も高い。(鈴木 道子)
今年2月の来日公演を見て、なんとほんのりあたたかく、さわやかで可憐な♪と。当日はちょっとしんどかった日だったので癒されてホロホロ〜ウルウルな気分に。。。「ザ・ムーヴィー」に続く第2弾もさらにふわふわな幸せ感にくるまれること請け合い。弦楽器の調べが何とも心にやさしく、まるで天使がハミングしているかのようなクレアのささやくような歌声に改めてうっとり♪今作にはジェネシス1983年のヒット「ザッツ・オール」のカヴァーや「キョート・ナイツ」といった目を引く作品も。ちなみにタイトルの≪アロー≫とはあのニルソン1971年のアルバム『オブリオの不思議な旅』に出て来る犬の名前からとか。当時から大好きな曲「アローは友だち」からって。。。ますますたまりません♪(上柴 とおる)
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「リズム・デル・ムンド☆クラシックス/VA」(ユニバーサルミュージック/UICZ1334)
自然災害による被災地を支援するために設立された≪ARTIST PROJECT EARTH (APE)≫のチャリティー・アルバム。BUENA VISTA SOCIAL CLUBのミュージシャンたち/RHYTHMS DELMUNDOと有名ミュージシャン、ジャック・ジョンソン、ザ・ローリング・ストーンズ、ケイティ・タンストール、キラーズ、エイミー・ワインハウス、キ−ン、フォール・アウト・ボーイほかがジョイントしての名曲カヴァー集。ストーンズの懐かしの「なぎさのボードウォーク」がたまらなく良いのです、もちろんニュー・リミックス。マニアもチェック・イット・アウトなのだ。(高見 展)
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「ビー・ジーズ/アルティメイト・ベスト・オブ・ビー・ジーズ」(ワーナーミュージック・ジャパン/WPZR-30352=デラックス・エディション WPCR-13706=通常盤)
待望の4枚組ボックスの発売は来春に延期されてしまったが≪結成50周年記念≫のフィーヴァーはこの最新の2枚組ベスト盤のリリースが発火点になりそう♪全41曲(同時発売の限定デラックス・エディションはレア映像を含む18曲入りDVD付)。彼らのベスト盤は近年相次いで何種類も世に出されているが、今回は「ハートブレイカー」や「ギルティ」「アイランド・イン・ザ・ストリーム」といった彼らが他のアーティストに書いて大ヒットした曲を自らライヴで歌ったものやオーストラリア時代最後のヒット作「スピックス・アンド・スペックス」の同じくライヴ音源も含まれているのがミソ。とはいえ個人的には1968年の中ヒット「ジャンボー」がまたしても未収録というのは納得出来ず。。。(上柴 とおる)
全世界で2億5500万枚のセールス・・・、ビートルズ、エルヴィス・プレスリーらと並び≪20世紀最高のアーティスト≫とも称されるビー・ジーズ。1959年にオーストラリアで音楽活動をスタートさせてから今年で50周年。それを祝すべく出された究極のベスト盤が本作だ。初期の感傷的で美しいナンバー、70年代後期のディスコ・サウンド、さらにはAOR路線に進んでからの近年の円熟味溢れるナンバーまで、いずれも時代を超えた魅力溢れるメロディーとハーモニーの名曲で満載。デラックス版には、イギリス帰国前(66年)の「スピックス・アンド・スペックス」から89年の「ワン」までのPVなど映像も収録。全音楽ファン必須アイテムだ。(小松崎 健郎)
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「伝説のチャンピオン〜アブソリュート・グレイテスト〜 / QUEEN 」
(EMIミュージック・ジャパン/ TOCP-70810)
QUEEN初の世界基準1枚ものベスト・アルバム『伝説のチャンピオン〜アブソリュート・グレイテスト〜』が、11月11日世界に先駆け日本先行発売される。74年の「キラー・クイーン」から91年の「ショー・マスト・ゴー・オン」まで、決してシングル・カットされた曲だけを並べただけではないところが、QUEEN自ら厳選したといったところか。また、GATEWAY STUDIOのボブ・ルドウィックによる09年最新デジタル・リマスターによって、フレディのヴォーカルが力強く、そして儚くも美しく蘇る。鮮烈な73年のデビューから、全世界が悲しみに暮れた91年のフレディ突然の死去に至るまで、QUEENの輝かしい軌跡を辿るには最適な全20曲ベスト・アルバムである。初回限定スペシャルプライス1980円も、ファンには嬉しいニュースだ。(上田 和秀)
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「レノン&マッカートニー・ソングブック〜ポップ〜/VA」
(ワーナーミュージック・ジャパン/WPCR13683)
アレサ・フランクリン、ファッツ・ドミノからジュディ・コリンズ、リンダ・ロンシュタットまで多彩な21曲のカヴァー曲を収録。ジャケットが赤いのでビートルズの初期の名曲を集めた赤盤を意識しているのかと思ったが、選曲は中期以降が中心。世界・日本初CD化曲を多数収録という宣伝文句に、だからといって買う人はビートルズのカヴァー曲マニアぐらいだろうと突っ込みを入れたくなる人もいるかもしれないが、それが結構いるのがビートルズ・ワールド。ビートルズのオリジナルはもう頭の中でいつも鳴っているから聴く必要がないので、ビートルズのカヴァーしか聴かないと豪語していたカヴァー曲マニアのY氏も、この選曲にはおそらく満足していることだろう。(広田 寛治)
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「レノン&マッカートニー・ソングブック〜スムース・ジャズ〜/VA」
(ワーナーミュージック・ジャパン/WPCR13682)
ジョージ・ベンソン、ランディ・クロフォード、チャカ・カーンからジャズ界の大御所デューク・エリントン、サラ・ボーン、カーメン・マクレエ、ハービー・マンまで、ジャズ・テイストあふれる名カヴァーを17曲収録。こちらは青いジャケットにふさわしく中期以降の名曲が中心。あるビートル・マニアの女性にビートルズのリマスター盤の感想をたずねたら、「いいですね、やっぱりビートルズ曲は・・・」という返事。そのときは、彼女一流の褒め言葉なのだと思って妙に納得してしまったが、このアルバムを聴かせたらやはり同じ感想がかえってくるような気がする。そういう意味ではリマスター盤に匹敵するすごい1枚なのかもしれない。(広田 寛治)
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「ラヴ・ユー・ライヴ/ザ・ローリング・ストーンズ」
(ユニバーサルミュージック/UICY-91500〜1=SHM-CD UICY-60172〜3=通常盤)
「スティル・ライフ(アメリカン・コンサート'81)/ザ・ローリング・ストーンズ」
(同/UICY-91502=SHM-CD UICY-60174=通常盤)
「フラッシュポイント(発火点)/ザ・ローリング・ストーンズ」
(同/UICY-UICY-91503=SHM-CD UICY-60175=通常盤)
「ストリップト/ザ・ローリング・ストーンズ」
(同/UICY-91504=SHM-CD UICY-60176=通常盤)
「ライヴ・リックス/ザ・ローリング・ストーンズ」
(同/UICY-91505〜6=SHM-CD UICY-60177〜8=通常盤)
レーベル移動で、RSレコードでのストーンズのライヴ・アルバムが改めてファンの前に登場である。今回はSHM-CDでのリリースということで改めてじっくりとその偉大なるライヴ・サウンドを堪能したい(初回限定発売で、その後通常CDに以降)。ストーンズはデビュー前からライヴにライヴを続け、その回数は本人達で分からないくらい膨大な数字・・、僕自身1973年以来200回近くその凄さを味わっている。
『ラヴ・ユー・ライヴ』は78年4〜6月にかけてのヨーロッパ・ツアーからのセレクションが中心だが、ファンにとっては≪エル・モカンボ・サイド≫として知られるLP時代のC面4曲。77年3月にトロントの250人収容のクラブでのスモール・ギグからのライヴが収められているのだ。ブルージーな「マニッシュ・ボーイ」やレゲエの「クラッキン・アップ」、究極のストーンズ・ライヴ・ヴァージョンに改めて興奮させられる。
タイトル通り『スティル・ライフ(アメリカン・コンサート'81)』は81年のUSツアーからを収録。デューク・エリントンの「A列車で行こう」をテーマに、スケール・アップしたストーンズのライヴがあますところなく味わえる。ここで彼らはロックンロール史にその名を残したエディ・コクラン(21歳で死去)の「トゥエンティ・フライト・ロック」をカヴァー(RS初出楽曲)。アルバムからは「タイム・イズ・オン・マイ・サイド」がシングル・カットされた。
90年ストーンズ初来日、その感激が残されているのが『フラッシュポイント(発火点)』だ。東京ドーム・ヴァージョン、ミックの日本語MCもこのアルバムで楽しめるのだ。♪ここでちょっとペースをおとします♪
♪まだまだ続くよぉ〜♪、「ルビー・チーズデイ」「悪魔を憐れむ歌」。そしてこのアルバムにはスタジオ・レコーディングの「ハイワイアー」(90年代ストーンズ流メッセージ・ソング)「セックス・ドライヴ」も収録。
『ストリップト』は90年代ストーンズのとても貴重な作品集だ。94〜5年のヴードゥー・ラウンジ中の比較的小さな会場でのライヴ・ヴァージョンと、東京&リスボンでのスタジオ・レコーディング・ナンバーを鏤めてある。特に後者でのライヴ感覚での録音がファンの注目を集めた。東芝EMI/第3スタジオ・ヴァージョンは「クモとハエ」「ワイルド・ホース」「スリッピング・アウェイ」「むなしき愛」「リトル・ベイビー」(RS初出楽曲)。
尚、ブリッジズ・トゥ・バビロン・ツアーからの『ノー・セキュリティ』は前配給元にまだ権利が残っているために今回は登場していない。
2002〜3年のリックス・ワールド・ツアーからの2枚組『ライヴ・リックス』。ディスク<1>ではストーンズ・スタンダード、ディスク<2>ではマニアック・ナンバーという構成。ファンはやっぱりD2だ。「ザッツ・ハウ・ストロング・マイ・ラヴ・イズ」「ロック・ミー・ベイビー」(RS初出楽曲)、ソロモン・バークがゲスト参加した「エエヴリィバディ・ニーズ・サムバディ・トゥ・ラヴ」、キース・ソロ初出楽曲「ザ・ニアネス・オブ・ユー」(ホーギー・カーマイケル1940年作品)など超目玉作品が収められているのだ。(Mike M. Koshitani)
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「アンソロジー/ライ・クーダー」(ワーナーミュージック・ジャパン/WPCR-13691〜2)
「ボーダーライン/ライ・クーダー」
(ワーナーミュージック・ジャパン/WPCR-13693)
「ロング・ライダーズ/ライ・クーダー」
(ワーナーミュージック・ジャパン/WPCR-13694)
「スライド・エリア/ライ・クーダー」
(ワーナーミュージック・ジャパン/WPCR-13695)
「パリ、テキサス(オリジナル・サウンドトラック)/ライ・クーダー」
(ワーナーミュージック・ジャパン/WPCR-13696)
「クロスロード/ライ・クーダー」
(ワーナーミュージック・ジャパン/WPCR-13698)
「ゲット・リズム/ライ・クーダー」(ワーナーミュージック・ジャパン/WPCR-13699)
スライド・ギターの名手であり、独自のギター・スタイルと音楽スタイルを確立し、エリック・クラプトンに「彼には敵わない」と言わせた男ライ・クーダーの来日記念として、初回限定盤2枚組ベスト・アルバムと完全生産限定盤80年代作品全6タイトル2009年デジタル・リマスター紙ジャケット・コレクションがリリース。ライ・クーダーは、アメリカン・ミュージックに止まらず有りとあらゆる音楽を吸収するため、世界中を旅する旅人としても有名であり、96年キューバ・ミュージシャン達と作成した『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』の成功で新たな方向性と名声を手に入れた。また、あまり知られていないが、ライ・クーダーは映画のサウンド・トラックを多数担当している数少ないミュージシャンの一人である。有名なミュージシャンがサウンド・トラックを担当した場合、ミュージシャンとしての色合いを出すべきか、それとも映画を意識して本人の色合いを見せないようにするか悩むところだが、ライ・クーダーはその卓越したテクニックと幅広い音楽性を持って、他のミュージシャンには踏み込めない音楽の世界で映画に花を添えている。彼の音楽はミック・ジャガー主演の懐かしの映画『青春の罠』にも登場するとストーンズ第一人者、MK氏に教えられた。
『アンソロジー』は、ソロ活動39年に渡る軌跡を辿る旅にはもってこいの34曲ベスト・トラックの究極2枚組ベスト・アルバムだ。ライ・クーダー本人による曲目解説は、彼の曲に対する思い入れや背景が良く理解できる。「富める秘訣」、「おしゃべり屋」等泥臭いリズムの名曲が、08年デジタル・リマスターにより洗練された音質で蘇る。従来の録音に比べ、各楽器のバランスと音質が向上し、ヴォーカルやコーラスも際立って聴こえる。
『ボーダーライン』は、正に旅人ライ・クーダーに相応しく、アメリカ・メキシコ・ハワイ・カリブへと国境を越えて音楽は展開し、「今宵は僕と」、「自動車狂い」といったユニークなアレンジの楽曲が連なる傑作である。音質の向上に伴い、アメリカン・サザン・ミュージックを初めて聴く人にも耳あたりの良い音楽に・・・。
『ロング・ライダーズ』は、ライ・クーダーが担当した映画のサウンド・トラックの代表作のひとつだ。これぞウエスタンと言ったサウンドが炸裂する決定版だ。楽しいダンス曲「セニカ・スクエア・ダンス」やもの悲しい「アーチの葬儀」といったどの曲を聴いても映画のシーンが蘇る。ギターとバイオリンのアレンジが光る「旗のもとに集まろう」等、聴き応え十分な作品である。
『スライド天国』は、タイトルが示すとおりスライド・ギター全開のサウンドは、もう誰もコピー出来ないであろう。「ゲットーのUFO」「ウィッチ・ケイム・ファースト」は、ライ・クーダーのみに許される、ずば抜けて音の良いニュー・タイプのアメリカン・プログレだ。「ジプシー・ウーマン」は、美しいメロディーに儚いギターのディレイが響き、「ブルー・スウェード・シューズ」は、このスライド・ギターとアレンジはやりすぎなのか、それとも新しい解釈なのかと悩んでしまう。そして、エコー処理の美しくも悲しい「愛とはいつもこんなもの」がラストを飾る。
『パリ、テキサス』は、84年カンヌ国際映画祭にてパルム・ドールを受賞したヴィム・ヴェンダー監督の代表作であり、ロード・ムービーの金字塔をライ・クーダーが担当したサウンド・トラック決定版である。全編を通して、ギター1本でよくこれだけの表現が出来る物だと感心してしまう。
『クロスロード』は、伝説のブルース・マン/ロバート・ジョンソンをモチーフに『クロスロード伝説』を映画化し、全編ライ・クーダーのブルースが響き渡る名作である。主人公と対決するギタリストにスティーヴ・ヴァイが登場するので、ロック・ファンには映画も見て欲しい。このアルバムの「クロスロード」は、ライ・クーダーの「クロスロード」だ。「フィーリン・バッド・ブルース」のスライド・ギター・ソロは彼の真骨頂であり、ギターの響きの美しい名演奏である。「サムバディズ・コーリン・マイ・ネイム」は、極上のゴスペルに仕上がった。「ウイリー・ブラウン・ブルース」と「ウォーキン・アウェイ・ブルース」は、ブルース・ハープとスライド・ギターによる屈指のブルースである。
『ゲット・リズム』は、とうとう沖縄までやって来た旅人ライ・クーダーの5年振りとなるオリジナル・アルバムだ。この人の感性とリズム感は、常人を遥かに越えていることが分かる。「ゴーイング・バック・トゥ・オキナワ」は、これをやられると日本人は敵わないという名曲に仕上がっている。「13クエスション・メソッド」の弾き語りは、誰も真似できないだろう。「オール・ショック・アップ」は、ジェフ・ベックがやりそうなハード・ロックだ。「アクロス・ザ・ボーダーライン」は、メランコリックなヴォーカルが光る、哀愁漂う佳曲であり、サックスをフューチャーしたハード・ブギーの「レッツ・ハヴ・ア・ボール」がラストを飾る。
2009年デジタル・リマスター紙ジャケット・コレクションは、音質・音圧共に向上し、楽器の音もヴォーカルも美しく、伸びやかなって古い録音を現代に蘇らせた。それを差し引いてもギターの弦とボトルネックの擦れる音が、これ程心地よいギタリストを私は知らない。03年ローリング・ストーン誌≪ローリング・ストーンの選ぶ歴史上最も偉大な100人のギタリスト≫に於いて第8位に選ばれたことが伊達でないことは、今回のコレクションが十二分に証明してくれる。(上田 和秀)
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「キャス・エリオット/キャス・エリオット」
(ソニー・ミュージック ジャパンインターナショナル/BVCP-40111)
「ザ・ロード・イズ・ノー・プレイス・フォー・ア・レディ/キャス・エリオット」
(ソニー・ミュージックジャパン インターナショナル/BVCP-40112)
「ストーリーズ・ウィ・クッド・テル/エヴァリー・ブラザーズ」
(ソニー・ミュージックジャパン インターナショナル/BVCP-40113)
「イズント・イット・ロンリー・トゥゲザー/エステル・レヴィット」
(ソニー・ミュージックジャパン インターナショナル/BVCP-40114)
「ニュー・ムーン・ライジング/カレン・ベス」
(ソニー・ミュージック ジャパンインターナショナル/BVCP-40115)
長門芳郎さんの監修でシリーズ企画され好評を博していた名盤復刻企画≪パイド・パイパー・デイズ≫(紙ジャケット)の発売元がソニー・ミュージックに変わり新たに登場。1972年リリースのキャス・エリオット2枚のうち『ザ・ロード・イズ〜』はオリジナル形式では世界初、エヴァリー・ブラザーズ1972年の作品は日本初(個人的にも拍手♪)、そして日本では(いや本国でも)ほとんど無名の女性シンガー/ソングライター、エステル・レヴィット(1974年作品)とカレン・ベス(1975年作品)も世界初のCD化♪
≪ママ・キャス≫の2枚はママス&パパス解散後ダンヒルでの2枚を経てRCAからリリースしたもの(当時『キャス・エリオットの新しい世界』『レディのための道はない』の邦題で日本発売)。サウンド的にもキャッチーな色合いを強調したダンヒルでの2枚目とは変わって彼女本来の歌唱の魅力が引き出された落ち着いた味わいでそれぞれのアルバムに収録されたカヴァー曲も聴きもの。バーバラ・ルイスでヒットした「ベイビー・アイム・ユアーズ」、ジェリー&ザ・ペイスメーカーズの「アイル・ビー・ゼア」(曲を書いたのはボビー・ダーリン!)、ブルース・ジョンストン作の知る人ぞ知る名曲「ディズニー・ガールズ」、ハリケーン・スミスの「オー・ベイブ」、そしてボーナス・トラックでもあるマーヴィン・ゲイの「トライ・イット、ベイビー」やジョン・セバスチャンの「ウィル・シー」なども興味深い。グッド・タイム・ミュージック風が好きなファンにもお薦めしたい♪
リアル・タイムでは『アメリカン・ストーリー』の邦題で出されていたのが往年の大スター、エヴァリー兄弟が1970年代に再起を賭けて発表したRCA移籍第1弾。ジョン・セバスチャン、ライ・クーダー、デラニー&ボニー、ウォーレン・ジヴォンなど改めてラインナップを眺めるとため息が出るほどにすごい顔ぶれ♪のミュージシャンが多数サポートした作品で結果は全米208位に終わったもののカントリー、スワンプなどルーツ・ミュージック的な要素を軸足にした当時の≪時流≫を行く音作りで後年、アメリカン・ロックの名盤としても高く評価されるに至っており、日本でのCD化が長らく熱望されていたもの。
N.Y.出身のエステル・レヴィットは「桜の木に桃は実らない(1966年にビクターから出された際の邦題表記)」(ジャスト・アス)「ドアがスイング」(ハーマンズ・ハーミッツ)「ひとりぼっちの涙」(ベバリー・ブレイマーズ)などヒット・ポップスのファンにはそれなりに知られた楽曲を書いていたソングライターだが、こんなアルバムを発表していたとは♪(今の今まで聴いたことがなかった)。ここではそれらの作者ヴァージョンが聴けるだけでも個人的には興味深々。丁寧で熱のこもった長門芳郎さんのライナーも読みごたえあり♪
ギターを手に歌うソングライター、カレン・ベスもN.Y.出身で、1969年にデビュー。ジョン・サイモンがプロデュースしたこのアルバムは3作目でウッドストックのベアズヴィル・スタジオでレコーディング。ジョン・ホール(当時オーリアンズ)らが参加、フォーク、カントリー風味のシンプルな演奏を背景に独特の印象的な歌声が息づく。こちらも初めて耳にしたがもう30数年も前の作品なのに新鮮な響きを感じて聴き惚れてしまった♪
(上柴 とおる)
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「イン・ジャパン/ジャクソン 5」(ユニバーサルミュージック/UICY-94299) 1973年4月、マイケルたちジャクソン兄弟が初来日。第2回東京音楽祭にゲスト出演したほか東京、広島、大阪でコンサートを行った。音楽祭レセプション・パーティーでマイケルやジャーメインといろいろ話し写真も撮ったりしたんだけど、そんな想い出をよみがえらせてくれたのがこの73年LIVEだ。大阪厚生年金会館でのコンサートの模様が当時、ジャパン・オンリーでLP化された。そんな作品集が遂に我が国でもCD化。メドレーでのJ5ヒット「帰ってほしいの」「ABC」「小さな経験」、そしてジャーメインの「ダディーズ・ホーム」、マイケルの「ベンのテーマ」など当時の話題作が楽しめる。当時よくご一緒させていただいた故・三浦憲さんの来日リポート掲載の当時のLP用ライナーノーツが再現されている、感激。(Mike M. Koshitani)
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「俺たちに明日はない/頭脳警察」(アイドルジャパンレコード/JRDF-0019)
1969年、「日本でロックをやろう」という想いから頭脳警察は結成されたという。それから40年、彼らの想いはまったく変っていない。「止まっているということと、変らないということは、違うんだよ」とパンタは語っている。その通りだ。18年ぶりとなる新作は、揺るぎない強固な岩の上に立ち、腐った時代に向けて激しいことばを放つ。「死んだら殺すぞ」「血の色足せば黒の賑わい」、どうしてこんなに強いことばを生み出せるのだろう。パンタは偉大な詩人だ。しかも、心地よいメロディーと、ギター、キーボード、ベース、ドラムの基本構成のロック・サウンドで伝えられる彼のことばは、まるで会話のように耳に入ってくる。ただしその意味を理解するには、聞き手にも同じような感性とイマジネーションが必要だ。ロックに生きて来た大人にしか創造できない魔力を感じさせる傑作であり、頭脳警察は≪世界に誇れる日本のロック・バンド≫と改めて認識させられる1枚だ。(菅野 ヘッケル)
1969年のバンド結成から40年を迎えた今年、フジ・ロック出演〜全国ツアー、ドキュメント映画公開と活発な動きを見せる頭脳警察。本作は実に18年ぶりとなる彼らのニュー・アルバム。舞い踊るように連打する姿が目に浮かぶTOSHIのパーカッションと、一言一言に説得力のあるPANTAのヴォーカルが、年月を経てさらに凄みを増している。ユニット≪響≫でPANTAとタッグを組んでいたギタリスト菊池琢己や、リンドバーグのドラマー小柳CHERRY昌法らによるバンドも好サポート。タイトル・ソング「俺たちに明日はない」や、頭脳警察の前身バンドを思わせるタイトルの「SPARTAKUS INTERNATIONALE R&R BUND」からは、今後代表曲になり得そうな強力な印象を受けた。嬉しいHidden Trackも収録。(町井 ハジメ)
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「ディア・ソウルズ/彩花-iroha-」(ティートックレコーズ/XQDN-1020) ジャジーでソウルフル、そして実にソフィストケイトされたファンキーな歌いっぷりで注目を集めている彩花(iroha)が早くもセカンド・アルバムを発表。キャロル・キング、スティング、スティーヴィー・ワンダー、ルイ・アームストロングらのジャズ/ソウル/ロックなどの名作が、彼女のオリジナリティー溢れたヴォーカルでハッピーに楽しめる。新しい世代のジャズ・シンガーのイメージも強いが、ソウル・ファンにも愛されるだろう。彼女はR&Bも歌ってきたのだ。今回のレコーディングにはオマー・ハキムやケイコ・ボルジェソン、トミー・キャンベルも参加している。そのオマーのジョイントしている彩花の作詞作曲による「Smooth」が大きく光っている、これからはもっとももっとオリジナル楽曲も取り上げて欲しい。(Mike M. Koshitani)
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「アル・ディ・ラ〜美しきイタリアン・メロディー/日向由子」
(Beltaレコード/YZBL-1015)
東京芸術大学声楽科卒業後、イタリアに留学。国立パルマ音楽院/アリーゴ・ボイトを首席で卒業した日向由子。メゾソプラノの実力派としてオペラなどで活躍。そんな彼女がこのデビュー・アルバムでカンツォーネや映画音楽ナンバーをセレクション。イタリア留学中に同国のポップスを好きになり、懐かしのカンツォーネに魅了され、歌うようになったという。タイトル・ソングほか「夢みる想い」「ピノッキオの手紙」「チリビリビン」「忘れな草」「愛遥かに」などカンツォーネ・スタンダード、もちろん伊太利亜語である。自分のスタイルを基本に見事に歌い上げる。「ゴッドファーザー〜愛のテーマ〜」にも注目。そしてボーナス・トラックスは「アメイジング・グレイス」「ユー・レイズ・ミー・アップ」、この2曲は日本語歌詞、ドラマテッィな出来映えだ。(Mike M. Koshitani)
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「Softly As I Leave You/マーサ三宅」(ティートックレコーズ/XQDN-1021)
これが「ラスト・アルバム」というつもりで吹き込んだという最新作は、今年のベストの一枚に数えたい素晴らしい作品。一曲一曲、歌われる歌の内容が聴いていて、目に浮かんでくるような見事な表現力で歌われる。特に、ペンシルヴァニア・ターンパイクで自動車事故のため夭折したトランペッッター、クリフォード・ブラウンの死を悼んでベニー・ゴルソンが書いた「アイ・リメンバー・クリフォード」は、その不慮の事故を聞いた時の悲しみが伝わってくる胸を打つ素晴らしい歌唱だ。北島直樹(p)のトリオに増尾好秋(g)伊勢秀一郎(tp、flh)
が加わる伴奏陣も好演。(高田 敬三)
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「スティーヴン・ソンドハイム作品集/ジェーン・ハーヴェイ」(SSJ/XQAM-1039)
ジェーン・ハーヴェイは、ベニー・グッドマン楽団の歌姫。1944年に同楽団の専属歌手となるがツアーが苦手で一年あまりで退団、その後、ディジー・アーネッツ楽団とハリウッドへ行き有名になりTV、ラジオでも活躍した。このアルバムは、1988年に彼女がマイク・レンジーのトリオと録音したものにレイ・エリス樂団のストリングスの演奏をオーヴァー・ダビングして『ジ・アザー・サイド・オブ・ソンドハイム』というタイトル発表になった。今回は、ストリングスをはずしてオリジナル録音そのままに未発表曲9曲を加えている。結果、トリオの音も前面に出てきてジャズ色が濃くなった。キャバレー・ショウ風の構成でソンドハイムのナンバーを快唱するジェーン・ハーヴェイが楽しめる。(高田 敬三)
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「オン・ザ・ウェイ/ジャスティン・ヤング」(オクテットレコーズ/YZOC-10006)
のびやかなハイトーンが耳に心地よい。スロー・バラッドは実に歌心にあふれている。ジャスティン・ヤングはデトロイト出身の28歳、現在はLAを中心に活動する若手のサックス奏者だ。本作がデビュー盤だ。2年ほど前から注目されるようになり、EW&F、テンプテーションズ、ピーター・ホワイトらとの共演を通じて人気が高まったという。メロウできめの細かい音作りはいわゆるスムーズ・ジャズにカテゴライズされるが、決して緊張感をあおることのないプレイの中にも、ちょっとしたスリリングな隠し味がある。ベテランのトム・シューマンやポール・ブラウン、ゲイル・ジョンソンらがトラックごとにプロデューサーとして参加していることからもその期待度が伺える。(三塚 博)
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「My Dear Pianists 〜チンさんと6人のピアニスト〜/鈴木良雄」
(フィフティ・ファイヴ・レコーズ/FNCJ-1004)
ベースのベテラン鈴木良雄が音楽生活40周年を記念して録音した問題作。なんと6人の有名ピアニストとのデュオであり、実力と人望のあるチンさんならではの豪華な顔ぶれが揃っている。秋吉敏子、山本剛、小曽根真、ケイ赤城、野力奏一、イサオササキの6人で、1人2曲ずつ弾いているが、全員がチンさんのスタディオに来てプレイしたので、音質的にも統一感がある。一番突出したプレイをみせているのは秋吉敏子で、最近ピアノに徹しているだけに、パワフルで、みずみずしいプレイに圧倒される。秋吉とササキが弾いている曲以外はすべて鈴木良雄のオリジナルであり、彼がすぐれた作曲家であることを証明したアルバムにもなっている。チンさんはもともとピアニストだっただけに、人選にも彼の好みと、ピアニストに対する評価がよく表われていて興味ぶかい。鈴木良雄のこれまでのベスト・アルバムだ。(岩浪 洋三)
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「おぼろ月/日高憲男」(ティートックレコーズ/XQDN-1019)
トランペッターであり、歌手でもある日高憲男のティートックでの第2作。今回はピアノの竹下とのデュオであり、バラードを中心に、この上なくビューティフルな音色でトランペットを吹き、甘く、ロマンティックなヴォーカルを聴かせる。日高はいま日本でいちばん美しい音色を奏でるトランペッターであり、なめらかで、センシティブな情感豊かな表現を、オープンとミュートでみせてくれる。彼は1/4だけイギリス人の血が入っているが、ここでは≪和≫にこだわり、1曲だけ日本の歌「おぼろ月夜」をミュートをかけて演奏していて印象深い。インストでは「スターダスト」も素晴らしい。ホットな演奏ではリー・モーガンの「セオラ」がよく、そして「チーク・トゥ・チーク」「ハウ・ハイ・ザ・ムーン」「このすばらしき世界」「星に願い」などを歌っている。今秋の見逃せない快作だ。(岩浪 洋三)
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「中西俊博PROJET爆裂クインテット」(ポニーキャニオン/PCCY-50063)
中西俊博が率いる新ユニットの第一作。デビュー作『不思議な国のヴァイオリン弾き』でそのつややかな音色がオーディエンスを魅了して四半世紀。それにひきかえ今回、≪爆裂≫の二文字はインパクトが強い。「のっけからアヴァンギャルドな音が飛び交うのではないか。いや、そんなはずはない」などと勝手に想像しながら期待と不安でプレイボタンを押すとジョビンの「ストーンフラワー」、耳なじみの音にまずはホッとした。「タイム・アフター・タイム」「ロッキン・イン・リズム」「マイルストーン」「テキーラ」などは遊び心のなかにも緻密な構成がされて聴き応え充分だ。本作品を聴いていると、中西は技の引き出しをたくさん持っていることが改めてよく分かる。他のメンバーたちも技量は高く次々と技を繰り出してくる。ただお互い、技の掛けすぎは時に怪我の元、本当に爆裂してしまわぬよう、息の長いグループであってほしい。(三塚 博)
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「ミー&マイガール」(東宝ミュージック/TOHOM-0909)
ロンドン下層階級のビルが、突然貴族家の世継ぎと判明、上流階級に入り込んだことから次々と起こる珍プレイ。愉快なロンドン発のヒット・ミュージカル『ミー&マイガール』は、宝塚と東宝が日本でも上演を繰り返し、人気演目になっている。東宝版は2003年に始まり3年間隔で上演されてきたが、今回初めてCDが発売された。今年6月23日、24日の帝劇公演を収録したライヴ盤で、「オーヴァーチュア」から「フィナーレ」まで、全20トラック。「ランベス・ウォーク」「ミー&マイガール」「もしもハートをとられたら」「ヘアフォードの歴史」「愛が世界を回してる」「街頭の下で」等、ノエル・ゲイ作曲の珠玉のようなミュージカル・ナンバーが網羅されている。井上芳雄、笹本玲奈、貴城けい、本間憲一、草刈正雄、涼風真世ほか当代の日本ミュージカル界のトップ・スターを集めた豪華キャストによる楽しい1枚だ。(川上 博)
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「Whole Lotta Led Zeppelin 史上最強ヘヴィ・ロック・バンド レッド・ツェッペリンの軌跡/ジョン・ブリーム 上西園誠・訳」(ソフトバンク クリエイティブ)
現在でも多くのロック・ファン注目の存在であるレッド・ツェッペリン、彼らの再結成までの40年の歩みを克明に纏め上げた一冊。まさに彼らの≪軌跡≫本である。リアル・タイムでLZを楽しんだ往年のフリークから若いギター小僧まで、幅広い音楽愛好者に触れて欲しい。当時の関係者達の証言によるアルバム制作秘話にまず驚嘆させられるが、本書はビジュアルな面でも僕らをうならせる、懐かしのポスターやティケット(日本公演も!)、当時の新聞記事などが数多く掲載されているのだ。筆者、編集者のLDへの≪愛≫を感じさせる。噂されたLD再結成ツアーはどうなったんだろう・・・。(高見 展)
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「レッド・ツェッペリン写真集 狂熱の日々/ ニール・プレストン著」(ブルース・インターアクションズ)
この記念すべき写真集は、レッド・ツェッペリンの単なるオフィシャル・フォトグラファーというだけでなく、ステージ以外でのツェッペリンに密着し、レンズを向けることを許された唯一のカメラマンであるニール・プレストンに、カリフォルニアのDJシンシア・フォックスがインタビューし、ツェッペリンの秘密に迫った写真と文章による歴史絵巻である。ご存知1970年のマディソン・スクエア・ガーデン・ライヴから始まり、79年のネブワース・ライヴ迄の10年間の正に若きツェッペリンの息吹が聞こえる。ライヴとバックステージの様子に沿って、ニール・プレストンのインタビューによるツェッペリンの実際の行動や発言が、生々しい証言と共にページ(時代)は進んでいく。HM/HRの元祖とも言うべきツェッペリンを知ることがロックを知ることだ。ツェッペリン・ファンはもとより、ロック・ファンは歴史の証人となるべく、絶対に必要なアイテムだ。限定4000部となっている為、早い者勝ちとなるのは必然、これを見ずにロックを語ることなかれ!!!(上田 和秀)
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Popular BOOK Review |
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「ビートルズを知らない子どもたちへ/きたやまおさむ・著」(アステルパブリッシング)
22年前に発売された同名書の増補改訂版。22年前にも読んだ気がする。改訂されたとは言え、新事実に基づいて議論が展開されるわけでもなければ、事実関係の間違いがさほど訂正されているわけでもない。それでもこの本がおもしろく読めるのは、出会いのときが1年違っていても、そんなの関係ない著者独自の見解がここでは論じられているからだ。年齢が6歳違うだけなのに、同じできごとのとらえ方がとても新鮮に感じられるのは、著者が精神科医の眼でビートルズ体験をとらえ直しているからなのだろう。それにしても、戦争を知らない子どもたちはこのまま増え続けて欲しいのだが、ビートルズを知らない子どもたちはあまり増えないで欲しいものだ。壊れたはずのカブト虫だけど、いまもいっしょに楽しく遊んでくれているのだから。加藤和彦さんと著者が出会わなかったらこの本もなかっただろう。合掌。(広田 寛治)
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「ROCK! ジャケ弁スタイル/オバッチ& Beat Sound編集部」(ステレオサウンド)
ロックのレコード・ジャケットを弁当で表現すると、どうなるか。そんな壮大なコンセプトに取り組み続けている≪ジャケ弁職人≫オバッチからの第一報というべき力作だ。レイジ・アゲインスト・マシーンの大ファンということで彼ら関連の弁当集が壮観だが、ほかにも『クリムゾン・キングの宮殿』『原子心母』『英吉利の薔薇』『勝手にしやがれ』『ヴェルヴェット・アンダーグラウンド・アンド・ニコ』などが鮮やかに弁当化されており、まさしくこれは洋楽に対する日本側からの、最大限にウィットのこもった愛情表現なのでは、といいたくなる。マーティ・フリードマン、ROLLY他のコメントも読み応えたっぷり。『サージェント・ペパーズ弁当』『サム・ガールズ弁当』『オグデンズ弁当』・・・・まだまだ見たいものは山ほどある。第2弾、第3弾が楽しみだ!!(原田 和典)
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「ザ・ワールド・オブ・エグベルト・ジスモンチ ギター・デイ」 9月13日 すみだトリフォニーホール
リオ・デ・ジャネイロ生まれだが、父親はレバノン人、母親はイタリアのシシリー島出身。アントニオ・カルロス・ジョビンのアドバイスでパリに行き、以来40年間にわたってサンバにもジャズにも現代音楽にも限定できないコスモポリタン・ミュージックを創造し続けているのがエグベルト・ジスモンチだ。日本では、ドイツのECMレーベルでの録音がよく知られている。ギターとピアノの達人として知られる彼だが、僕が見たのは≪ギターの日≫。余韻をタップリ生かした無伴奏ソロから、新日本フィルハーモニー交響楽団との共演による壮大な「ダンサ・ドス・エスクラーヴォス」まで、白昼夢のような音の流れに、ただただ酔いしれるばかりだった。と同時に、なぜ彼が「自分をジャズ・ミュージシャンだと思わないでくれ」と、たびたび主張しているのかがわかったような気がした。(原田 和典)
写真:三浦 興一
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Popular CONCERT Review |
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「マーカス・ミラー」 9月15日 Billboard Live TOKYO
来日公演が年中行事となっている人気ベーシスト、マーカス・ミラーが、新たなコンセプトを引っ提げて六本木のステージに立った。≪TUTU Revisited≫と題したスペシャル・セッション。1980年代に復帰したマイルス・デイヴィスの補佐役を務め、その後プロデューサーにまで昇格したマーカスは、マイルスの86年作『TUTU』で最も重要な役割を担った。当夜は同作収録曲を柱とするプログラムで、マイルスを追悼する趣向だ。ボスが他界して18年。この間マーカスは常に恩義を忘れずに、師への思いを表明してきた。この企画のためにマーカスが若手メンバーのバンドを編成し、20年前のナンバーを演奏するシーンに、伝えられるべきジャズ界の財産が確実に受け継がれていることを実感した。注目株のトランペッター、クリスチャン・スコットは大役に臆することなく、サックスとの2ホーンズで持ち味を発揮。同作以外のマイルス・ナンバーである「ヒューマン・ネイチャー」「ジャン・ピエール」も、マーカスの≪マイルス愛≫を体感させてくれた。(杉田 宏樹)
写真:acane
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Popular CONCERT Review |
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「ジョイス・ウィズ・スペシャル・ゲスト・ジョアン・ドナート」 9月27日 Blue Note TOKYO
ジョアン・ドナートとの共演作『アクエリアス/ジョイス・モレーノ・フィーチャリング・ジョアン・ドナート』を発表したばかりのジョイス・モレーノがBlue Note TOKYOに登場した。スペシャル・ゲストにジョアン・ドナート(p,vo)、ジェシ・サドキ(flh,tp)、ジョルジ・エルデル(b)トゥチ・モレーノ(ds)という布陣は新作のレコーディング・メンバーでもある。初日のファースト・ステージを聴いた。軽快な「ペナルティ」がオープニング、「デサフィナード」「ワン・ノート・サンバ〜サーフボード」「ソ・ダンソ・サンバ」とジョビン・ナンバーを歌ったところに、いつもの野球帽姿でジョアン・ドナートが登場。「A列車で行こう」のフレーズを入れながらのピアノが聴衆を和ませる。「Amazonas 2」「Aquarius」「No Fundo Do Mar」軽快で茶目っ気のある「Guarulhos ChaChaCha」ドナートのピアノをバックにしっとり歌い上げる「Luz Da Cancao」「Feminina」など新作から9曲、息のあったプレイを聴かせてくれた。アンコール曲の「Emorio」まで14曲、1時間のステージは瞬く間に過ぎた。(三塚 博)
写真:佐藤 拓央
「アクエリアス/ジョイス・モレーノ・フィーチャリング・ジョアン・ドナート」
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「渡辺香津美 ギター・ルネッサンス・スペシャル」 9月30日 Hakuju Hall 渡辺香津美のライフ・ワークといえるCDシリーズ≪ギター・ルネッサンス≫。そこからのナンバーを中心にしたコンピレーション『アコースティック・フレイクス』の発売記念コンサートがHakuju Hallで行なわれた。使われたギターはナイロン弦、スチール弦の各アコースティック、オヴェイション、セミ・アコースティック・タイプのエレクトリック・ギターで、すべて適度にアンプリファイドされていた。レパートリーは彼の幅広いバックグラウンドをそのまま反映するかのように多彩であり、バッハ、ビートルズ、ジャンゴ・ラインハルト、ジャコ・パストリアスの名曲やブルース等、色とりどりのナンバーが鮮やかに≪香津美化≫された。世界広しといえども、ここまで分け隔てなく弾きまくり、観客に喜びを与えるのは彼ぐらいなものだろう。(原田 和典)
Photo by Ryo Tanikawa(谷川 良)
「アコースティック・フレイクス」
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「ミュージカル シカゴ」 10月1日 赤坂ACTシアター
やはり実力あるキャストは作品を生き返らせる。以前つまらない『シカゴ』を見たことがあるが、今回のアメリカン・カンパニーは個性的なミュージカル女優もいて、面白く楽しむことが出来た。ボブ・フォッシーの振付、ジョン・カンダー&フレッド・エッブ作詞作曲というヒット・コンビだが、1975年の初演当時はそれほどヒットせず、96年のリヴァイヴァルによって新生し、現在もロングラン中だ。時代は1920年代のシカゴ。殺人犯の女囚達が、「犯罪はエンターテイメントである」という敏腕弁護士によって罪を免れ、ボートヴィルのスターとなるというブラック・ユーモアに満ちたミュージカルだ。監獄と法廷のみの舞台だから、主役陣が各々立体的に浮き立ってこないと面白くないのだが、今回は水準が高く、特にヴェルマウ役のテラ・C・マクロードがしなやかなダンスと強靭な個性で作品を引き締めていた。ロキシー役のビアンカ・マロキンも場数を踏んだ女優。弁護士ビリー・フリン役はカリスマ性が欲しいところだが、ケヴィン・リチャードソンはそつなく演じるにとどまった。が、全員のダンスは質が高く、フォッシーを見事に表現して、大いに楽しめた。(鈴木 道子)
写真:MAKOTO WATANABE
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「ギャランティーク和恵 〜 おんな・夜にひとり〜 」 10月3日 黄金町/試聴室その2
元「真夜中のギャラン」、現在はソロで活動するギャランティーク和恵のライヴを約4年ぶりに聴いた。愛する昭和40年代後期〜50年代前半の歌謡曲を歌い続けるという彼女の姿勢にブレはない。サリー久保田のベース、中森泰弘のアコースティック・ギター、中山努のエレクトリック・ピアノをバックに、朱里エイコ、平山三紀さん、内藤やす子らの、渋めのレパートリーを情感ゆたかに歌いきる。MCのとき、必ず作詞家や作曲家の名前も紹介するところにも、彼女の歌謡愛が感じられた。この夜の個人的なフェイヴァリットは、かつてリンダという歌手が歌っていた「ブルー・ライト」。僕は橋本淳の作詞曲を集めたコンピレーションCDでこの曲を知ったのだが、まさかギャランティークがカヴァーしてくれるとは。嬉しいものだ。(原田 和典)
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「深草アキ」 10月5日 スイートベイジル
NHK大河ドラマ『武田信玄』や『蔵』の音楽などでも知られる秦琴奏者・深草アキのライヴが久しぶりにスイートベイジルで行われた。彼は中国へのCD寄贈・日中友好音楽文庫の10周年記念コンサートへ日本代表としても参加している。秦琴は琵琶の仲間で、楽器そのものが天地・陰陽・四季を象徴するといわれ、中国の漢・武帝時代に出現したが、深草のは正調?(中国)とは違い独自の奏法と音響技術で自分の世界を形成している。
今回は笙の豊剛秋、アフリカン・パーカッション甲斐いつろうとのユニークなトリオだったこともあり、繊細・静謐の印象が強かった以前の演奏に比べ、変化に富んだダイナミックな表現が中心となっていた。楽器との出会いや曲についてのおしゃべりも交える。 第1部は息の合った熱演の「沙羅の糸」など、芸術性に富んでいた。第2部では歌も加えてくだけた演奏もあり、ジャズの要素やアドリブも飛び出す。また幽玄な「三世の旅人」、「月氏幻想」ではドラマチックに別世界へと運んでくれる。最後は喧騒な時代を安らぎへ導く祈りの歌でしめくくられた。繊細・幽玄な世界と力強い表現の響きあう深草の独自の音楽は、秋の夜に相応しいものだった。(鈴木 道子)
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「イリアーヌ」10月10日 Billboard Live TOKYO
ブラジル出身のトップ・ジャズ・ピアニストとして人気のイリアーヌが、約1年ぶりに来日。今回は長い共演関係を築いてきたマーク・ジョンソン(b)+ピーター・アースキン(ds)とのトリオだ。近年のイリアーヌはブラジル音楽に根差した自身のヴォーカルを含むサウンドと、トリビュート作で敬愛を示したビル・エヴァンスのレパートリーを大きな柱としている。今夜もその音楽性が展開され、ステージ上はジャジーなブラジリアン・フレイヴァーで満たされた。エヴァンス・トリオ最期のベーシストにして、公私共に最良のパートナーであるジョンソンと奏でる「ワルツ・フォー・デビイ」。同業ピアニストなら誰もが憧れるシチュエーションで、イリアーヌは中間部をファンキーに展開しながら、エンディングではオリジナル・ヴァージョンを踏まえて、らしさを表現。アンコールでは「イパネマの娘」「ソ・ダンソ・サンバ」のジョビン2連発で、得難い個性を輝かせた。(杉田 宏樹)
写真:Shannon Higgins
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「近藤房之助 The D-Tools LIVE」 10月23日 BLUES ALLEY JAPAN 房さんこと、近藤房之助と共演するは実に14年ぶりだ。会場の目黒Blues Alleyは、開演時には満員のお客さんで埋め尽くされた。房さんの歌とギターは、実に色っぽい。魅せて聴かせる素晴らしいステージだ。ブルースを、歌を本当に愛して大切にしているのが、びんびん伝わってきた。小生は、2セット目から入る。リハで「これまで、というまで弾きまくってくれ」という房さんの言葉通り、ソロがどんどん回ってくるので、ひたすら思い切り弾かせていただいた。「Today I Sing The Blues」「So Many Roads, So Many Trains」「Same Old Blues」「Let Me Love You」など全8曲に参加。アンコール「The Sky Is Crying」のソロ・ギターにも途中から呼んでくださり、急遽デュオに。房さんの人間の大きさと魅力を浴び続けた夜だった。とっても貴重で素敵な経験をさせていただいた房さん、みなさんありがとうございました。(菊田 俊介)
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「ドキュメンタリー頭脳警察」 昨年再結成、今年は結成から40年目を迎えた頭脳警察を題材にしたドキュメンタリー作品。三部構成で合計5時間15分という超大作。2006年から2008年にかけて、バンドの中心人物であるPANTAに密着取材を敢行。その間に行われたライヴ、レコーディング、そしてプライベート(例えばPANTAの母の葬儀まで)に至るまでを余すところ無く捉えている。バンド結成以前から現在に至るまでの心境がPANTA自身の言葉で語られ、全くブレのない言動にPANTAの≪かっこよさ≫を再確認。TOSHIが随所で語るコメントの中には、飾らないながらもPANTAとの強い絆を感じ取る事が出来た。ファンはもちろん必見だが、その政治色ゆえ聴く耳を持たなかったアンチの方にも是非見て欲しい作品だ。監督は『感染列島』の瀬々敬久。制作・配給:トランスフォーマー。(町井 ハジメ)
*11月7日よりシアターN渋谷にてロードショー
写真:(C)Transformer, Inc.
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「アンヴィル!夢を諦めきれない男たち」
カナダのヘヴィメタ・バンド、アンヴィルのドキュメンタリー映画。アンヴィルは1982年にデビューし、メタリカ、スレイヤー、アンスラックス、モーターヘッドなどに大きな影響を与えた。映画のオープニング・シーンにもなっているが、彼らは84年に西武球場で行われた『スーパーロック1984』にも、ホワイトスネイク、ボン・ジョヴィ、スコーピオンズ、マイケル・シェンカー・グループらと出演(なんとボン・ジョヴィが前座扱いだった)。だが……アンヴィルだけは売れなかった。今ではオリジナル・メンバーは2人。給食の配達と建設作業で食いつなぎながら、バンドを続けている。彼らの夢は、あのころと何も変わっていない、≪ロック・スターになること≫。曲を作り、練習し、少ない観客の前でライヴを行い、夢を語り合い、時には仲違いし、時にはともに涙し、励まし合い、笑い合う・・・50歳を超えても高校生バンドマンのような彼らの姿は、微笑ましくもあり、おかしくもあり、バカバカしくもあり、でもどこかまぶしい。ロック・ファン、ヘヴィメタ・ファンはもちろんだが、いつの間にか夢を捨て去り、すまし顔で生きているオトナたちにこそ観てほしい映画だ。(細川 真平)
*10月24日(土)より、TOHOシネマズ六本木ヒルズほかにて公開
写真:(C)Ross Halfin /ANVIL! THE STORY OF ANVIL
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「ジェーン・ハーヴェイを囲む会」
1940年代にベニー・グッドマン楽団の専属歌手としてデビュー、その後、ディジー・アーネッツに誘われてハリウッドへ行き、ステージ、レコード、TV, ラジオで活躍し、ミュージカルにも出演しているジェーン・ハーヴェイが、彼女のCDの日本発売にあわせて来日する。この機会にまだ現役で活躍する彼女を囲んで下記のようなパーティーが企画されていす。どなたでも参加できます!(KT)
*会場:神田岩本町/Tokyo TUC
*日時:11月11日 18:45開場 19:30開演
*Part 1:ジェーン・ハーヴェイの魅力(レコード・コンサート) 解説/高田 敬三
*Part 2:ジェーン・ハーヴェイ・ライヴ
ジェーン・ハーヴェイ(vo) 青木弘武(pf) ジャンボ小野(b)
*会費:¥5800(チャイニーズ・ビュッフェw/ワン・ドリンク)
お問い合わせ:(03)3866-8393
http://www.tokyouniform.com/tokyotuc/
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「アース・ウインド&ファイアー/JAPAN Tour 2009」
アース・ウインド&ファイアー3年振りの来日公演が決定した。「宇宙のファンタジー」「セプテンバー」「ブギー・ワンダーランド」「レッツ・グルーヴ」等自然に体が反応してしまう名曲の数々、コンサート会場は、当時のディスコに様変わりするだろう。時を越えて全員でファンキーなダンスタイムの始まりだ、熱狂のライヴが間近に迫る。(KU)
*12月7日 9日 大阪/なんばHatch
お問い合せ:大阪ウドー音楽事務所 (06)6342-4506
*12月11日 12日 東京/東京国際ファーラム ホールA
お問い合せ:ザックコーポレーション (03)5474-9999
http://www.zak.co.jp/
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「ケイコ・ボルジェソン KEIKO BORJESON TRIO/WOMAN JAZZ TRIO LIVE 2009」
スウェーデンを拠点に世界各地を精力的にライヴ活動するファンキーなピアノ&ヴォーカルのケイコ・ボルジェソン、我が国でも多くのファンに知られている。そんなケイコの女性アーティストによるスペシャル・ジャズ・トリオのライヴ。ベースはイタリア・ジャズ・シーンで注目を集めているシルビア・ボログネシ、ドラムスはフランス出身でニューヨークでも活動したジュリー・サウリー。ケイコが新たに掲げた≪女ジャズ≫シリーズの第一弾!楽しみだ!!(YI)
*12月10日 サントリーホール ブルーローズ
お問い合わせ:オフィス・ケイコ (03)3682-2925
http://www.officekeiko.com/
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「ディオンヌ・ワーウィック」
ディオンヌ・ワーウィックといえばアメリカを代表する大スター。1960年代からバート・バカラック作品「小さな願い」「恋よさようなら」「サンホセへの道」はじめ多くのヒットを放ち、80年代にはエイズ・エイド・ソング「愛のハーモニー」をグラディス・ナイト、エルトン・ジョン、スティーヴィー・ワンダーらとナンバー・ワン・ヒットさせるなど、キャリアが長い、久々の来日公演が決まった。しかも奇跡のクラブ・ショー。楽しみに待ちたい。(MS)
*12月14日〜16日 Blue Note TOKYO 2回公演
お問い合わせ:(03)5485-0088
http://www.bluenote.co.jp/
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「マイケル・シェンカー・グループ/ MSG 30th Anniversary Special Lineup JAPAN Tour 2010」
マイケル・シェンカー・グループ(MSG)による30周年記念ライヴが決定した。80年代≪神≫とまで呼ばれたミスター・フライングVことマイケル・シェンカー率いるMSGがスペシャル・ラインナップで来日公演を開催する。そのメンバーとは、数多くの名作に参加したドラマー/サイモン・フィリップス、ホワイトスネーク、ゲイリー・ムーア、バウワウ等日本で人気のベーシスト/ニール・マーレイ、MSG初代ヴォーカル/ゲイリー・バーデン、そしてキーボード/ウェイン・フィンドレーという布陣だ。この最強のメンバーで、スコーピンズ・UFO・MSGのHR/HMの名曲が熱く蘇る。2010年の幕開けは、最強ロックMSGで決まり、来年も熱い年になりそうだ。(KU)
*1月12日 13日 東京/中野サンプラザ
お問い合せ:ザックコーポレーション(03)5474-9999
http://www.zak.co.jp/
*1月14日 名古屋/ダイヤモンドホール
お問い合せ:SMCプラザ(052)265-2666
*1月15日 大阪/なんばHatch
お問い合せ:キョードーチケットセンター(06)7732-8888
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「ロベルト・フォンセカ」
キューバを代表するジャズ・ピアニスト、ロベルト・フォンセカの来日が決定した。≪ブエナ・ヴィスタ・ソシアル・クラブ≫のピアニストとしてワールド・ツアーに参加するなど母国での人気度・期待度が高いことは周知の通り、アルバム作品のリリースや東京JAZZへの出演などもあって日本での評判は今までになく高い。今回はジャイルス・ピーターソンと組んだ新作を携えての来日。どのようなアフロ・キューバン・ビートが聴けるのか楽しみなところだ。(HM)
*1月24日〜26日 Blue Note TOKYO 2回公演
お問い合わせ:(03)5485-0088
http://www.bluenote.co.jp/
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「ママズ・ガン」
アルバム『ルーツ・トゥ・リッチーズ』でシーンに登場したフロムUK、まさに新しい世代のソウル・バンド/ママズ・ガンズのジャパン・ライヴが早くも決定した。アンディ・プラッツが中心になってのママズ・ガンズ、もちろんグループ名の由来はエリカ・パドゥ・・。ファンキーで楽しい、どんなステージングをみせてくれるのか、期待したい。(MK)
*1月29日 30日 Billboard Live TOKYO 2回公演
お問い合わせ:03(3405)1133
http://www.billboard-live.com/
*2月1日 Billboard Live OSAKA 2回公演
お問い合わせ:06(6342)7722
http://www.billboard-live.com/
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「シェリル・クロウ/ジャクソン・ブラウン」
アメリカン・ロックの素晴らしさを伝えてくれるふたり、ベテランのジャクソン・ブラウンと中堅のシェリル・クロウのジョイント・コンサートが決定した。両者のそれぞれの日本公演はお馴染み、毎回話題を呼ぶ。今回はどんなステージングになるか期待に胸ふくらむ。ふたりとも一緒にジャパン・ツアー出来ることを楽しみにしているという。一部JB90分、二部SC90分での構成が予定されていると聞くが、ドゥービー・ブラザーズ&デレク・トラックスではないけど、シェルル&ジャクソンの≪共演≫も期待したい。(MK)
*3月2日 東京国際フォーラム ホールA
*3月3日 神戸国際会館 こくさいホール
*3月5日 名古屋/Zepp Nagoya
*3月8日 グランキューブ大阪
*3月9日 広島/ALSOKホール
*3月11日 東京国際フォーラム ホールA
*3月7日 金沢市文化ホール シェリル・クロウ単独公演
お問い合せ:ウドー音楽事務所 (03)3402-59999
http://udo.jp/
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Classic ALBUM Review |
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「ブラームス:交響曲第1番ハ短調、第2番ニ長調」ホルスト・シュタイン指揮、バンベルク交響楽団(エイベックス・エンタテインメント/AVCL-25480〜1)
「ブラームス:交響曲第3番ヘ長調、第4番ホ短調」同上 (エイベックス・エンタテインメント/AVCL-25482〜3)
ホルスト・シュタイン(1928〜2008)はバンベルク交響楽団の終身名誉指揮者であったが、69歳の時の本拠地でのライヴ録音が国内盤として初リリースされた。さすがに表現のツボを心得た大人の演奏で、才気走ったり奇をてらったりすることなく、大らかな息づかいのうちにこれぞブラームスといった風格のある演奏を聴かせる。このコンビによる来日公演も聴いたが、まったく無理強いすることなく自然に音楽があふれ出てくるのに感心させられた。両者の相性がよかったためだろう。このCDでもシュタインの高度な職人芸と作品を知り尽くしたオーケストラの滋味に満ちた響きが堪能できる。特に第4番ホ短調が見事な演奏だ。(青澤 唯夫)
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Classic ALBUM Review |
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「シベリウス:交響曲第1番〜第7番、交響詩「クレルヴォ」/サー・コリン・デイヴィス指揮、ピーター・マッテル(バリトン)、モニカ・グループ(メッツォ・ソプラノ)、ロンドン交響楽団合唱団、ロンドン交響楽団」(キングインターナショナル、LSO Live/LSO-0191〈4CD〉)
ロンドン交響楽団の自主レーベルによるこの全集には、1番から7番のシンフォニーのほかに「クレルヴォ交響曲」とも呼ばれる1時間を優に超えるバリトン、メッツォ・ソプラノのソロと合唱が加わった大作、交響詩「クレルヴォ」も収録されている。 イギリスで人気が高いシベリウスをコリン・デイヴィスと手兵ロンドン交響楽団というイギリス・コンビによる演奏である。モーツァルト、ベルリオーズ、マーラーとともにシベリウスを得意としているコリン・デイヴィスが作り上げるシベリウスは、スピッカートを多用した歯切れの良い端正な演奏の中にも情熱が漲っており、これには共感する人も多いのではなかろうか。演奏すべてが2002年から2008年かけての本拠地ロンドンのバービカンに於けるライヴ・レコーディングである。(廣兼 正明) |
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「ホルスト:組曲《惑星》、ブリテン:青少年のための管弦楽入門/パーヴォ・ヤルヴィ指揮、シンシナティ交響楽団」(ユニバーサル ミュージック、TELARC/UCCT-2079)
ホルストのみが新発売でブリテンは再発である。ヤルヴィとシンシナティのコンビはまさに《惑星》向きである。ヤルヴィの明晰な音作りが、アメリカのオーケストラ独特の迫力と相俟って、ここに魅力あふれる《惑星》が誕生した。各惑星をヤルヴィなりの印象で表現、これが今はやりの3D宇宙もの特撮映画のようなど迫力をもって身体全体に迫ってくる。この録音の良さは数々の名録音で知られるテラーク・レーベルの中でもトップクラスで、第1曲冒頭の弦のコル・レーニョの生々しい響きから始まり、そして全曲に於ける繊細なpppから大迫力を持つffffまでのレンジの広さにも驚かされる。またブリテンに於ける明快な演奏は、こちらもヤルヴィならではである。(廣兼 正明)
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Classic ALBUM Review |
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「ショパン:ピアノ協奏曲第1番、第2番/ラファウ・ブレハッチ(ピアノ)、イェジー・セムコフ指揮、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団」(ユニバーサル ミュージック、ドイチェ・グラモフォン/UCCD-1472)
2006年の第15回ショパン・コンクールに優勝、それも4部門の副賞すべてを独り占めしたショパンの生国ポーランド出身であるブレハッチが待望の協奏曲を初録音した。先ずは自然で素直な弾き方に好感が持てる。若さが漲っていながら押さえるべきは押さえ、彼はショパンの詩の世界を今の世に実に美しく再現してくれた。第1番の第2楽章をこれ程までに美しく聴かせてくれたピアニストはいなかった。この2曲すべてを通しての粒のそろったタッチ、そしてそれに優るとも劣らない美しいフレージングは彼の持つ一番の宝と言えるだろう。もう一つ、同じポーランド出身の大御所セムコフとコンセルトヘボウのサポートの見事さも特筆しておきたい。(廣兼 正明)
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「メンデルスゾーン:ピアノ協奏曲第1番、『無言歌集』から、ロンド・カプリチオーソ、前奏曲とフーガ、厳格な変奏曲」 小菅優(ピアノ)小澤征爾指揮、水戸芸術館管弦楽団(ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル、 ソニークラシカル/SICC-10084)
メンデルスゾーン生誕200年にフレッシュな魅力に満ちたゴージャスなアルバムが誕生した。小菅優のピアノは思いきりがよく、パワフルで、くったくがない。小澤征爾の指揮は巧みで颯爽としていて、オーケストラもそれによく応えている。ライヴ録音だがSACDマルチ・チャンネルが演奏会の雰囲気をよく伝えて秀逸。独奏曲も自在で、指さばきも鮮やか。無言歌は素直で明快な表現がメンデルスゾーンの特質をよく活かしている。ロンド・カプリチオーソは豪華な技巧が、前奏曲とフーガはシリアスさが、厳格な変奏曲はエネルギッシュに驀進する彼女の持ち味が出ている。(青澤 唯夫)
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「ザ・ベスト・オブ・ホロヴィッツ、伝説のRCAレコーディングズ1941〜1982」 チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番、トスカニーニ指揮NBC交響楽団、ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第3番、ライナー指揮RCAビクター交響楽団、ショパン:幻想ポロネーズ、シューマン:トロイメライ、スクリャービン:前奏曲作品48-3、11-13、15-2、モシュコフスキ:火花、ショパン:マズルカ作品30-4、ホロヴィッツ:カルメンの主題による変奏曲、プロコフィエフ:トッカータ作品11、ショパン:夜想曲作品9-2、クレメンティ:ピアノ・ソナタ作品47-2第3楽章、プーランク:プレスト、ラフマニノフ:前奏曲作品32-5、シューマン:クララ・ヴィークの主題による変奏曲、スカルラッティ:ソナタK184、K101、リスト:メフィスト・ワルツ第1番、スクリャービン:前奏曲作品8-12 ホロヴィッツ(ピアノ) (ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル、 RCA/BVCC-40019〜20)
名匠ホロヴィッツの没後20年を迎え、RCAに残した名演を選りすぐったもので、彼の40の軌跡が集約されている。トスカニーニと共演した凄絶な歴史的演奏から、ラフマニノフ、ショパン、シューマン、スカルラッティ、晩年に録音されたスクリャービンまで、ホロヴィッツならではの芸と独特の境地はやはり比類がない。年季の入った聴き手には懐かしいものばかりだし、新たな聴き手にはホロヴィッツの魅力にふれる格好のベスト・アルバムだろう。(青澤 唯夫)
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Classic ALBUM Review |
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「J.S.バッハ:平均律クラヴィーア曲集 第1巻/マウリツィオ・ポリーニ(ピアノ)」(ユニバーサル ミュージック、ドイチェ・グラモフォン/UCCG-1474〜5〈2CD〉)
現代最高のピアニストと言われるポリーニの満を持してのバッハ初録音盤である。今回の平均律に向かうポリーニは当然のことながら1曲目から厳然とした佇まいを見せる。そして他の何ものをも入り込む隙のないほど気持ちを集中させ、レコーディングに打ち込んだことを感じさせる。これこそまさに入神の演奏そのものである。この第1巻を聴いてポリーニの特徴である音の美しさがバッハに対していかに重要であったかを知ることが出来る。近い将来に出るであろう第2巻が待ち遠しい。(廣兼 正明)
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Classic ALBUM Review |
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「Yes We Can ! オバマ・クラシック/VA」(エイベックス・エンタテインメント/AVCL-25449)
快く酔うことの出来るアルバムだ。クラシックでもメロディーの美しいポピュラーな選曲だが、演奏だけではこれだけ酔えないだろう。オバマの演説は実に音楽的で説得力があり素晴らしい。その両方の相乗効果があってはじめて成し遂げられた名盤と言える。ジョン・ウィリアムスの「サモン・ザ・ヒーロー」、ドヴォルザークの「新世界」、ガーシュインの「ラプソディー・イン・ブルー」、エルガーの「威風堂々」はじめ、曲の大半が≪イエス・ウィ・キャン≫≪チェンジ≫≪ホープ≫に呼応する新しさや勝利と未来への希望を暗示するもので、新日フィルやベルリン・ドイツ交響楽団はじめ、翳りのない時に力強い流麗な演奏も気持ちよい。名演説のセレクト、挿入もうまく、演説、音楽ともに高揚感を煽る。(鈴木 道子)
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Classic ALBUM Review |
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「ザ・バロック・ビートルズ・ブック/ジョシュア・リフキン」(ワーナーミュージック・ジャパン/WPCS-12356)
ピアノ演奏家で指揮者/バッハ研究で知られる音楽学者、ジョシュア・リフキン指揮のマージーサイド室内楽協会バロック・アンサンブルのビートルズ作品集。リフキンがまだ21歳だった1965年の発表、今回初めてCD化された。「序曲(抱きしめたい)」から「歓喜(僕がなく)」「合唱:昨晩、僕は言ったのさ(プリーズ・プリーズ・ミー」「アリア:もっと若かった頃(ヘルプ!)」など全12曲。ビートルズが世に出てそんな時間が経ってない65年という時代に、こんなにも素晴らしいアルバムをレコーディングしたリフキンの音楽への熱情、そしてビートルズの凄さに改めて感動させられる。ビートルズ・ファンはもちろんだが、バロック音楽愛好者にもじっくりと味わってほしい。(上田 和秀)
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Classic DVD Review |
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「ロシアン・ナイト、チャイコフスキー:幻想曲《テンペスト》作品18、ラフマニノフ:ピアノ協奏曲 第2番 ハ短調 作品18、ストラヴィンスキー:《火の鳥》(演奏会用組曲 1919年版)/クラウディオ・アバド指揮、ルツェルン祝祭管弦楽団、エレーヌ・グリモー(ピアノ)」(ユニバーサル ミュージック、ドイチェ・グラモフォン/UCBG-1282)
2008年8月22日のルツェルン音楽祭ライヴ映像。アバドはトスカニーニがこの音楽祭のために作ったエリート・オーケストラ同様のオーケストラをマーラー室内管弦楽団を中心にヨーロッパの名門オーケストラから優秀なトップ奏者たちを集め、2003年にルツェルン祝祭管弦楽団を創設し、音楽祭の人気の源となっている。
2008年のルツェルン音楽祭はアバドとルツェルン祝祭管弦楽団はロシア音楽の特集を組み、指揮者とオーケストラのモットーである和気藹々のムードの中、素晴らしい演奏でロシア音楽の楽しさを聴衆を十分に堪能させた。ラフマニノフのソリストに迎えられた美人ピアニスト、グリモーはこの曲を得意としているだけあって見事な演奏で満員の聴衆を喜ばせた。このDVDの見どころは「火の鳥」での管楽器の見事さだが、特にトランペット首席の巨漢ラインホルト・フリードリヒの名演は必聴、必見である。特典映像として、グリモーのインタビューが見られる。(廣兼 正明) |
Classic CONCERT Review |
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「新国立劇場公演《オテロ》」9月23、26日 新国立劇場オペラ劇場
新国立劇場の新シーズン最初の演目は、ヴェルディの傑作「オテロ」。故若杉弘オペラ芸術監督が企画した最後のシーズンで、「イタリア・オペラの最高傑作」だと評価していた「オテロ」がオープニングに選ばれたが、故若杉監督の冥福を祈るように、音楽、演出面とも充実した公演となった。幕が開いた時から最後まで、音楽的な一体感が持続したのは特筆に価する。
音楽面での一番の立役者は、指揮のリッカルド・フリッツァだろう。ダイナミックレンジの幅が大きく、ぐいぐいと引っ張る吸引力やきっぱりとした思い切りがある一方、ドラマに密着するていねいさにも欠けることなく、また全曲を通じて絶えることのない旋律の美しさを浮き彫りにした。「オテロ」がこれほど旋律に富んだオペラだと感じられたのは貴重な経験で、イタリア・オペラの美学を感じることができた。
主役の3人も揃っていた。タイトルロールのステファン・グールドは、力のあるヘルデン・テノールで、高音の伸びもよく、この難役を危なげなく歌い切った。やや一本調子なきらいもあるが、今後改善されていくのではないか。相手役のデスデモナは代役のタマール・イヴェーリだったが、クリアでしっとりしたよく通る声、少女らしさの残る面影と演技で、役をしっかりものにしていた。イヤーゴ役のルチオ・ガッロは、美声に加え、声による演出も含めた抜群の演技力(細かいところまで神経が行き届いている)で、ヴェルディの考えた「善人面をしたイヤーゴ」に肉迫していた。
演出は、映画監督として活躍するマリオ・マルトーネ。舞台を「イヤーゴの町」(本人の言)ヴェネツィアに設定、水を張った運河をたくみに利用して、心理劇の迷路を演出した。イヤーゴの奸計にはまりつつあるオテロが、デスデモナの不義を妄想する場面も盛り込まれ、水に光が当たって幻想的な効果を出していたが、視覚的には面白いものの必然性には疑問も感じられた。
ともあれ総体的には、新シーズンの開幕にふさわしい、水準の高い公演だった。新国立劇場の今シーズンに期待したい。(加藤 浩子)
〈写真提供:新国立劇場オペラ「オテロ」(2009年9月)、撮影:三枝近志〉
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Classic CONCERT Review |
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「新国立劇場公演《オテロ》」10月6日 新国立劇場オペラ劇場
ベネチアを訪れ、水上バスに乗り、とある停車場で降りてこの街を散策したならば、誰しもが、迷路の中をさまように違いない。大運河が光であれば街の中は暗であり、水路が網の目のように走っている。ベネチア、それは水の都であり、明と暗が交錯する不思議な街。新国立劇場新シーズンのベルディの「オテロ」は舞台に水をはり、いかにもベネチアらしい雰囲気を作り上げ、成功裡に幕を開けた。「オテロ」の舞台は今回が三度目であったが、以前ヨーロッパで見た時は、舞台の上に確か3本の大理石の柱が立ち、衣装も古代ローマ式のもので、これはローレンス・オリビエが出演した映画の影響かもしれないと思った。オテロが嫉妬の邪心に苦悩し、それが広がり、妻、デスデモーナを殺害し、運河の中で彼が自ら死ぬのは水の中がふさわしい。まさに舞台の水が役に立ったのである。
演出はマリオ・マルトーネで、映画監督として活躍し、ベネチア国際映画祭、カンヌ映画祭にも登場しているとの事。照明も暗から明、そして灰色の色彩に変化し、まるで映画を見ているような感じである。衣装も15世期末のベネチア・スタイルであり、ともすれば、表現主義的な演出も可能であったが、原作に忠実で、ストレートなスタイルを前面に押し出し、舞台装置も立派。特にイアーゴが英雄の没落を練る場面では、霧がたちこめ作りもなかなかなものであってあった。
オテロ役はステファン・グールド、イアーゴ役をルチオ・ガッロ。ガッロが特に好演で、彼は三度目の新国立劇場の登場であり、イタリア歌手の特徴の一つであるその声は、強音から弱音まで美しい通りのよさをもち、独創的な悪の化身の役を遺憾なく発揮していた。
ステファン・グールドは体格も良く、いかにもオテロ役にふさわしい。第一幕の颯爽と民衆の前に立ち、勝利を宣言するオテロだが、ここでのグールドはやや声に張りがなく、疲れている印象を受けた。しかし場面が進むにつれて良くなり、死ぬ幕切れの場で入魂の歌唱を聴かせた。自在な表現力を持つグールドは、勇将な面影が少しずつ失われていくオテロの感情の明暗濃淡を、聴衆の胸の中に、深くかつ微妙に刻み込んだ。
指揮はリッカルド・フリッツア。新公立劇場には05年「マクベス」、08年は「アイーダ」を指揮しているが、リズムを強調し、存分に響かせながら、ひた押しに進行する精力的な表現が取られていた。東フィルから力強い響きをひきだし、それなりの説得力を持っていた点で、十分高く評価できる演奏である。
ベルディのオペラの中でも「オテロ」は誰でもがすぐ覚えられるアリアが少なく、なじみが薄いのだが、「オテロ」をこれだけ楽しめることはたいしたものである。(藤村 貴彦)
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Classic CONCERT Review |
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「新日本フィルハーモニー交響楽団 第453回定期演奏会」 10月22日 サントリーホール
先週に続くイオン・マリン指揮。同じ棒とは思えないほど楽団全体を捉えていた。新日本フィルは躍動感あるマリンの棒に、各プログラムで聴きどころを盛り上げ実に楽しい。エネスコで弦楽部が厚みある響きで民族色豊かに表現すれば、管は色彩感溢れる音楽で応じる。ガーシュウィン/ヘ調のピアノ協奏曲では、ソロ・江口玲の巧みなジャズ・タップに金管群が即応する。ストラヴィンスキー「火の鳥」は、表現が微細過ぎて冗長に感じるところなきにしもあらずだが、細やかな表現があたかも眼前にバレエの舞を見るようだった。(宮沢 昭男) |
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「古典音楽協会 第141回定期演奏会《ロンドンで活躍した作曲家》」 9月25日 東京文化会館小ホール
今回はパーセルやヘンデルなどイギリスで活躍した作曲家の古典の作品に焦点をあて、14名からなる華麗な室内楽の演奏が繰り広げられた。曲は「組曲妖精の女王第2番」(パーセル)、「リコーダー協奏曲」(ウッドコツク)などであった。Rec片岡正美はd管の高音ソプラノのリコーダー使用し、典雅な情景を描出した。「合奏協奏曲」(ジェミニアーニ)はVn中藤節子・伊賀純子、Va東義直、Vc重松正昭、の優雅な演奏を聴かせた。「チェンバロ協奏曲」(クリスティアン・バッハ)はこの日の秀作であった。Cem佐藤征子で、大バッハより新しい音楽を感じた。音が大きく聞こえるように位置を前面に出したり、蓋を工夫するなど暖かい響きがした。「オーボエ協奏曲」(ヘンデル)Ob石橋雅一、「合奏協奏曲」(ヘンデル)では、コンマスのVn角道徹は見事なアンサンブルを聴かせた。(斎藤 好司)
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「上原彩子ピアノリサイタル」 9月19日 びわ湖ホール
バロック期から現代まで様々のプログラムが並んだ。その中でリストの曲が躍動感に満ちて、存分に楽しませてくれた。「巡礼の年報イタリアより」では、<ペトラルカのソネット第47番>の静と<同第104番>の動の対比が鮮やかで、陽光の輝く南国風景を目の当たりにした作曲者の感動を巧みに再現した。「ハンガリー狂詩曲」など奔放と言っていいくらいで、自在なタッチが小気味いい。一転して、バッハ「平均律クラヴィア曲集」第1部や西村朗「神秘の鐘より」から選んだ作品は、静謐な空間を漂わせて、音の一つ一つが心底に染み込んだ。上原は確実に進化していると思う。(椨 泰幸)
(写真提供;<財>びわ湖ホール) |
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「ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団」 9月25日 ザ・シンフォニーホール
西本智実は指揮者の中で抜群の人気を誇っている。ホールはいつも満員で、女性を中心にファン層が広がり、CMにも登場している。彼女の人気に勝る日本人指揮者は少ないだろう。年齢は若く、容姿に恵まれ、颯爽としたスタイルで、大半が男性のオーケストラをぐいぐい引っ張っていく。超満員の観客に囲まれて、出演する機会もかなりのものである。人は舞台によって磨かれるのであろうか。彼女も次第に力をつけて、人気に追い付こうとしている。英国屈指の名門オケを相手にマーラー「交響曲第5番」を振った時に、その感を強くした。線のひ弱さが薄らいでいる。外見から想像できないかもしれないが、何ものにも屈しない彼女のチャレンジ精神は見上げたものである。クラシック音楽界にとって得難いキャラクターだ。これからは音にもっとメリハリをつけて、「智実節」ともいえる持ち味を発揮してもらいたい。(椨 泰幸) |
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「クレマン・ジャヌカン・アンサンブル」 9月27日 伊丹アイフォニックホール(兵庫)
古典派以前の音楽にとってカウンターテナーの存在は欠かすことができない。今は女性歌手の進出によって、その影はすっかり薄くなったものの、古楽器の演奏様式の復活に伴って、ひところ日本でもブームを呼んだ。その時期に来日して旋風を巻き起こしたドミニク・ヴィスの育てたアンサンブルを聴いた。
16世紀ルネサンスを代表するシャンソン(歌)の作曲家ジャヌカンとクロード・ル・ジュヌの声楽と古楽器リューの作品を紹介した。愛の喜びと悲しみをうたう世俗曲は時代を超えて生き生きと現代に伝わり、いささかも古さを感じさせない。ヴィスは円熟した声でチームをリードし、健在振りを発揮した。大編成により音響のとどろくロマン派音楽が闊歩する現代にあって、6人の小人数による伸びやかな合唱は、一服の清涼剤であり、爽やかな印象を残した。(椨 泰幸)
(写真提供:伊丹アイフォニックホール) |
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ニッセイオペラ『ヘンゼルとグレーテル』
年に一度、意欲的な自主制作オペラの上演で、気を吐いている日生劇場。今年はフンパーディンクによるメルヘン・オペラの傑作「ヘンゼルとグレーテル」を取り上げる。2008年にドイツのブレーメン歌劇場で初演されて大評判となった、クリスティアン・シューラーの演出によるプロダクションでの上演だ。単なるメルヘンの枠にとどまらない舞台づくりに期待が高まる。
歌手はオーディションで選抜されたが、蔵野蘭子、加茂下稔ら、日本を代表するメンバーが顔をそろえた。近頃大活躍の下野竜也が指揮する読売日本交響楽団がピットに入るのも、大いに楽しみである。(K)〈写真は指揮の下野竜也、撮影:T.Urano〉
公演:11月7、8日 日生劇場
問い合わせ
日生劇場 03-3503-3111
URL http://www.nissaythaetre.or.jp/
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ヘンデル・フェスティバル・ジャパン
「チェスキー・クルムロフ 真性バロック・オペラ招聘公演」
ヘンデル研究家の三澤寿喜氏の主宰により、ヘンデル作品の蘇演に意欲的に取り組んでいる「ヘンデル・フェスティバル・ジャパン」。没後250年に当たる今年は、4月に「メサイア」の初演稿を上演して好評を博した。11月には、チェコのチェスキー・クルムロフの劇場で上演されているプロダクションにより、ヘンデルの名アリアと名二重唱によるコンサートを行う。当時の衣装、機械装置、照明、背景、演技などをすべて忠実に再現した、他では類を見ないプロダクションだ。とりわけ、オペラで想定されていたバロック演技(ジェスチュア)に接することができるのは、貴重な機会だといえよう。
非現実的な物語設定のためか、とかく過激に演出されがちなヘンデル・オペラ。その風潮に一石を投じ、バロック・オペラの美学にめざめさせてくれる公演になるだろう。(K)
〈写真は現地での上演風景〉
公演:11月21日 トッパンホール
お問い合わせ
アレグロミュージック 03-5216-7131
ヘンデル・フェスティバル・ジャパン事務局0297-82-7392
URL http://handel-f-j.org/
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「マチュー・デュフォー・フルート・リサイタル」
1972年パリ生まれの新鋭。フランスのフルート界は人材に恵まれ、「フレンチスクール」と呼ばれるほど。デュフォーもランパル、神戸の両国際コンクールでいずれも2位を獲得するなど早くから頭角を表し、パリ・オペラ座管弦楽団を経て、99年にはシカゴ交響楽団音楽監督バレンボイムに招かれて、その首席奏者に就任した。曲目はメシアン「黒つぐみ」、マルティーヌー「フルート・ソナタ」、プーランク「同」など。(T)(写真提供;フェニックスホール)
12月3日 午後7時 ザ・フェニックスホール(大阪)
お問い合わせは同ホール(06−6363−7999)
http://phoenixhall.jp
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グランシップ開館10周年記念事業 オペラ「椿姫」
静岡県文化財団が運営するグランシップが、開館10周年を迎え、名作中の名作「椿姫」を自主制作する。静岡県舞台芸術センターとのコラボレーションで、同センターの芸術総監督をつとめていた世界的演出家、鈴木忠志が演出を担当するのが最大の話題だ。
先ごろ行われた記者会見で鈴木は、「椿姫」を現代に読み替え、アルフレードは作曲したヴェルディ自身を思わせる作曲家、ヴィオレッタはマフィアの経営するクラブのマダム、ジェルモンは2人を幻想から引き戻そうとする一般社会の常識人、という設定にすると発表した。鈴木によれば、悲惨な境遇にいる不幸な女性が美しい魂を持っているという空想、幻想は、男性の感性が生み出したものであり、ヨーロッパの芸術家たちにとって大きなテーマだったという。幻想と現実を行き来する演出に注目だ。
主役には、中丸三千繪、佐野成宏、堀内康雄と日本のトップスターが顔を揃えた。近年乗りに乗る飯森範親が、オペラでの評価も高い東京フィルハーモニー管弦楽団を指揮するのも聴き逃せない。(K) 〈写真は演出の鈴木忠志〉
公演:12月11、13日 グランシップ中ホール・大地
問い合わせ:グランシップチケットセンター054-289-9000
URL http://www.spac.or.jp/
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「ポール・ポッツ日本公演」
イギリスの人気タレント発掘番組「ブリテンズ・ゴット・タレント」の初代チャンピオンとなり、一夜にして世界的なオペラ歌手へと夢のような人生を送ることとなった、今や世界の人気歌手ポール・ポッツの日本公演が以下の通り行われる。
2007年にリリースされたアルバム「ワン・チャンス」は全英アルバム・チャート初登場でいきなりNo.1の座を勝ち取り、以後3週連続No.1を獲得して世界中で400万枚を超える売り上げを記録している。(H)
公演日程:東京=3/3(水)19時 東京国際フォーラムホールA、
大阪=3/8(月)19時 ザ・シンフォニーホール、
福岡=3/10(水)18時30分 福岡シンフォニーホール、
金沢=3/11(木) 18時30分 本多の森ホール、
名古屋=3/12(金) 19時 愛知県芸術劇場大ホール
問合わせ:東京=ウドー音楽事務所03-3402-5999、
大阪=大阪ウドー音楽事務所06-6341-4506、
福岡=TSUKUSU 092-771-9009、
金沢=ケィ・シィ・エス 076-224-4141
名古屋=CBCイベント事業部 052-241-8118
URL http://udo.jp/
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「世界的ベストセラーの新しい展開 モニターオーディオ・シルバーRXシリーズ」
英モニターオーディオの世界最多販機種のシルバー・シリーズがRXに発展した。ブックシェルフのRx1、Rx2、フロア型のRx6、Rx8、センタースピーカーのRx Centre、ダイポール型サラウンドスピーカーのRx-Fx、サブウーファーのRXW-12から構成される。従来のシルバー・シリーズからの改良点を挙げていくと、C-CAMトゥイーターが35kまでの再生に対応、従来は10kにピークがあったのだがこれをなくした。コーンのディンプル処理も導入。GS(オールドシグネチュア)で初採用したバックキャビティ技術をシルバーに導入、バスレフポートの加工で空気の流れを高速化した。ウーファーはネジ留めでなくテンションポールで背面から張力を掛けて固定するが、これはラディウスシリーズからの応用である。明快でいて細やかな表現力を持っていて演奏がよく見える。爽やかな風が吹いてくるようなスピーカー。ジャンルを選ばないことも特徴。(大橋 伸太郎)
MONITOR AUDIO Silver RXシリーズ
■Silver RX8(3ウェイ・フロア型)¥262,500(ペア・税込)
■Silver RX6(2.5ウェイ・フロア型)¥189,000(ペア・税込)
■Silver RX2(2ウェイ・ブックシェルフ)¥126,000(ペア・税込)
■Silver RX1(2ウェイ・ブックシェルフ)¥102,900(ペア・税込)
■Silver RX Centre(2.5ウェイ・センタースピーカー)¥81,900(1本・税込)
■Silver RX-FX(2ウェイ・ダイポール型サラウンドスピーカー)¥126,000(ペア・税込)
■RXW-12(アクティブサブウーファー)/¥189,000(税込)
お問い合わせ:ハイ・ファイ・ジャパン
http://www.hifijapan.co.jp/monitoraudio.html
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「音楽の力強い再現と自然な声を狙ったふたつのGX」
コンパクトブックシェルフGX100がベストセラーを続けるフォステクスから、上位機種GX102、103が登場した。102はウーファー2発とトゥイーターによる3スピーカー2ウェイのブックシェルフ、103は3ウェイ4スピーカーのフロア型である。102はセンタースピーカーとしての使用も考慮しているが、ステレオ再生が本命である。
両機に共通する狙いは、音楽の力強い再現と自然な声(ボーカル帯域)である。使用されているユニットは基本的に同じ。10cmアルミ合金製HRコーンウーファーは駆動系(ボイスコイル+磁気回路)がGX100比で40%強化されている。GX102は、これを2発パラレル駆動するが注目したいのは、2つのウーファーが独立したネットワークを持つことで、混濁感や歪みの原因となるネットワーク用素子を介しての電気的相互干渉をなくすことが目的。GX103の場合、さらにボトムウーファーが追加される。ボトムネットワークはもちろん別。トゥイーターは完全な新開発で、磁気回路にリング型のネオジウムマグネットをダブル使用している。20mmマグネシウム合金製リッジドームは、稜線を持つ成形形状でGX100と共通である。両機共にバスレフ構成だが、GX102は、ウーファー二基の背面に向けたツインダクトを内部に持つリアバスレフ。GX103は、エンクロージャーが上下に仕切られ、ボトムウーファー部が大きなバックキャビティを持つフロントバスレフ。両機とも民生のフラグシップG2000で開発した音響専用のCE(楠/ユーカリ)合板をバッフルと天地左右に使用している。
GX102は、GX100からの進境は大きく、寄り添うようなふくらみのある誇張感のない低音。しかも、解像感が高く、隠れてしまう音や落としてしまう音がなく、低音の響きの中に楽音を埋もれさせずきちんと存在させる。レスポンスが高く、響きが満ちて減衰していく描写に淀みがなく、音楽表現に切れ味と推進力と活気がある。基本的に日本のスピーカーらしく音が前に出る。センタースピーカーとしての使用も考え、「帯域を欲張らず声の太い通る表現を心がけ」たという。声が明朗に前に出るはっきりした狙いのある音作りである。
フロア型GX103は、フロア型らしい自然に伸びていく低音が心地よい。同時にやはりエンクロージャーの大型化と強化でバランスが改善されており、中高域のテンション感が消え、音色に硬さがなく全帯域で響きに自然な柔らかさが生まれている。
総じてGX103はバランスが整い本格的な端正な音場の製品。一方のGX102は、フォステクスの最新ユニットの解像力を生かした切れ込みとサイズを越えたふくらみのある低域の主張ある製品である。(大橋 伸太郎)
フォステクスGX102
2ウェイ3スピーカーシステム
■形式:2ウェイ・バスレフ
■出力音圧レベル:85dB/W(1m) 2.83V入力時 86.5dB(1m)
■再生周波数帯域:55Hz〜 45kHz (-10dB)
■使用ユニット:トゥイーター→20mm マグネシウム合金 リッジドーム / ネオジム外磁型磁気回路、ウーファー→10cmHR形状アルミニウム合金振動板ウーファー×2
■インピーダンス:6Ω
■外形寸法:160W×412H×270Dmm (グリル含む)
■質量:10.0kg
■価格:¥78,750(1台・税込)
フォステクスGX103
3ウェイ4スピーカーシステム
■形式:3ウェイ・バスレフ
■出力音圧レベル::86dB/W(1m) 2.83V入力時 87.5dB(1m)
■再生周波数帯域:40Hz〜 45kHz(-10dB)
■使用ユニット:トゥイーター→20mm マグネシウム合金 リッジドーム / ネオジム外磁型磁気回路、ウーファー→10cmHR形状アルミニウム合金振動板ウーファー×2、ボトム・ウーファー→10cmロングボイスコイルHR形状アルミニウム合金振動板ウーファー×1
■インピーダンス:6Ω
■外形寸法:228W×1030H×285Dmm (グリル台座含む)
■質量:22.5kg
■¥131,250(1台・税込)
お問合せ:フォスター電機(株)フォステクスカンパニー国内営業グループ(042)546-6355
http://www.fostex.jp/p/listener/
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「BOSE SoundDock10 digital music system iPodをリビングオーディオに変えるドックの最高峰」
サウンドドックシリーズの最新機種で、「iPod/iPhoneのためのベストパフォーミングシステム」をテーマに新規開発されたフラグシップである。iPod/iPhoneをシステムにセットしてこれまでなかったワイドレンジでダイナミックな再生が楽しめるシステム。
専用設計されたボーズ独自の低音再生技術、ウェーブガイドテクノロジーを搭載。全長132cmのウェーブガイド(一週の音響迷路)を幅431mm、奥行き244mmのボディに内蔵し、力強い重低音を再生する。新開発のウーファーを独自のメタルキャップでウェーブガイドと結合、ウーファーの音圧を効率的にウェーブガイドに誘導する。中高域には独自のユニット“ツィドラー”をシステム正面に最適な角度で配置し、広帯域・高忠実再生を狙っている。音量を上げていくと、「これがiPod?」と信じられない力強いサウンド(iPodの音声はアナログ)。一方で透明感が豊かなことが印象的。SoundDock10 digital music systemのデジタルシグナルプロセッシングは、不要な歪みを排除、小音量再生でも楽器の音色をクリアに再現する。大音量で再生しても、セットしたiPod/iPhoneに震動を与えず、システム本体を置いたテーブルやシェルフに振動を伝えない快適な再生のための工夫が凝らされている。
Dock部には独自のInterchangeable dock構造を採用し、来春発売予定のオプションBluetooth dockを装着すれば、Blutooth対応の音楽携帯電話を使ってワイヤレス再生を楽しめる。SoundDock10 digital music systemは11月21日より、ボーズ直営店、取扱ディーラー、ボーズオンラインストアで発売開始。(大橋 伸太郎)
SoundDock10 digital music system
■外装色:シルバー
■対応iPod/iPhone:Dockコネクターを装備した第4世代以降のiPod(iPod nano、iPod video、iPod classic、iPod touch)およびiPhone 3G、iPhone3GS
■音声入力:3.5mm径ステレオミニジャック×1
■映像出力:コンポジット×1
■外形寸法:431W×223.5H×244Dmm
■質量:8.4kg
■問合せ先:ボーズ・インフォメーションセンター電話0120-039-780
■販売予定価格:¥77,700
www.bose.co.jp/sd10
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