「レイ・シングス、ベイシー・スウィングス/レイ・チャールズ&ザ・カウント・ベイシー・オーケストラ」(ユニバーサルミュージック/UCCM2001) 故レイ・チャールズの1970年代のライヴ・テープが発見された。そこには”ray/basie”と記されていたが、実際の共演ではなく両者が出演したイベントのレイのステージの記録だった。そのレイのヴァーカルにカウント・ベイシー・オーケストラが新たにバッキングを録音しての≪競演≫という形で完成したのがこの作品集。ゲストにパティ・オースティンやトム・スコットも参加。「愛さずにいられない」「わが心のジョージア」はじめレイ・チャールズの素晴らしい70年代の歌声がベイシー・オーケストラの演奏で見事に甦った最新盤だ。(Mike M. Koshitani)
「ライヴ・イン・ザ・USA2005〜THE SPACE WITHIN US〜/ポール・マッカートニー」(ワーナーミュージック・ジャパン/WPBR-90600) 2005年9月から11月まで行なわれたアメリカ・ツアーからのライヴ映像。ビートルズ・ナンバー19曲を中心に、最新アルバム『ケイオス・アンド・クリエーション・イン・ザ・バックヤード』からの曲まで全28曲(メドレーも含む)を収録。ステージ上で宇宙飛行士とリアルタイムに交信して大きな話題を呼んだアナハイム公演での貴重な映像なども楽しめる。サウンド・チェック3曲分やキャメロン・クロウによるポールやメンバーへのインタビューなど、ボーナス映像にも見所が多い。(広田 寛治)
「THE ROLLING STONES in the beginning/ベンツ・レイ写真&文 ビル・ワイマン序文 中江昌彦 訳」(小学館) ロンドンのR&Bコピー・バンドから、シーンのトップに躍り出たローリング・ストーンズの1965〜66年にかけての姿を収めた写真集。デンマークの写真家/ベンツ・レイは当時、ツアーに同行したりメンバーの自宅を訪れたりしながら貴重なショットを撮影。その中から、未公開写真も多く含め300ショットが豪華に纏め上げられた。レイの文章も読み応えがある。60年代からのストーンズ・ファンにとっては涙ものであるとともに、若いファンにとってもロックが一番大きく変革していった時代をしっかり見つめることが出来る一冊として注目されるだろう。ビル・ワイマンが序文を担当しているのも嬉しい。(Mike M. Koshitani)
「サム・ムーア 〜プレミアム・ソウル・レジェンド・ナイツ〜」
11月14日 Blue Note Tokyo 伝説のソウル・デュオ、ダブル・ダイナマイトと称されたサム&デイヴのサム・ムーアの4度目(単独としては2度目)の来日。でも本当に久々だ、24年ぶり。多くのアーティストとの共演で話題となった最新作「オーバーナイト・センセーショナル」(ワーナーミュージック・ジャパン/WPCR-12433)はとても素晴らしかった、そして同様に感動させられたのが今回の≪サム・ムーア〜プレミアム・ソウル・レジェンド・ナイツ〜≫だ。往年の代表作を中心に最新作や60年代R&Bカヴァーを交えながらまさにファンキーなソウル・レビュー。69年、ソウル・メン・オーケストラを引き連れてのダブル・ダイナマイトのステージを彷彿とさせた・・・。ライド・オン!(Mike M. Koshitani)
PHOTO:山路ゆか
Popular CONCERT Review
「エリック・トラファ」9月30日 COTTON CLUB 国内盤が久しく出ていないのは本当に残念だが、エリック・トラファズはEUブルーノート・レーベル最大の人気アーティストのひとりである。フランスを拠点とする彼は、ノルウェーのニルス・ペッター・モルヴェルと並び、現代の“ジャズ来るべきもの”を真摯に探求しているトランペッターといえるだろう。来日は約5年ぶりだが、ベースをアコースティックからエレクトリックに替えたこと、トランペットに従来以上に多様なエフェクターを通したことで、サウンドはいっそう多彩かつ過激になった。エレクトリック・プログレッシヴ・アヴァンギャルド・ジャズとでもいおうか。アンコールで演奏されたセルジュ・ゲーンスブールの「ジュ・テーム・モア・ノン・プリュ」が、やけに甘美だった。(原田 和典)
写真提供:コットンクラブ
撮影:加藤 正憲
Popular CONCERT Review
「ザ・ジャズインヴェーダーズ」9月29日 渋谷JZ Brat
アムステルダム出身のクラブ〜ハード・バップ系グループが来日した。CDにはマリウス・ベーツのウッド・ベースなども加わっていたが、この日のステージはトランペット+2サックス+ピアノ+パーカッション+ヴォーカルという編成。ベースとドラムスはプログラミングされている。つまり、どの演奏も曲の長さがあらかじめ決まっているから、アドリブに熱が入りすぎたあまり1曲が数十分になるということはない。往年のホレス・シルヴァーやリー・モーガンを思わせるファンキーなテーマ・メロディを聴かせるのが主で、アドリブは“間奏”風の味付けにとどまる。だが、これがかっこいい。打ち込みドラムスと生パーカッションのコンビネーションも見事だった。(原田 和典)